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まぶた 短編⑧ [文学 日本 小川洋子 短編]


まぶた(新潮文庫)

まぶた(新潮文庫)

  • 作者: 小川 洋子
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/04/01
  • メディア: Kindle版



1. 飛行機で眠るのは難しい
2. 中国野菜の育て方
3. まぶた
4. お料理教室
5. 匂いの収集
6. バックストローク
7. 詩人の卵巣
8. リンデンバウム通りの双子

1は、語り手の作家(?)が、ウィーンへ向かう途中の飛行機で隣に座った男に話しかけられ、いつのまにかその人の話に惹きこまれてしまう話。その男もかつてウィーンに向かう飛行機の途中で偶然となりに座った老婆に話しかけられその話に惹きこまれてしまう話。結局その老婆は飛行機の中で・・・。

ハッピーエンドではないのだがなぜか温かい雰囲気がある話。


2は、ある夫婦の話。寝室にあるカレンダーにどちらか付けたか分からないが12日に、何故が綺麗に〇がついている。二人とも無視していたのだが12日、老婆の野菜売りがやってきて、野菜を買ってくれたおまけに、不思議な中国野菜を置いていく。それが段々と育っていき、いつのまにか光りだす。これから先どうやって育てて行ったら良いのか分からないのでその老婆に会いに行くが・・・。

これも不気味な話なのだがなぜか温かい。


3は、貧血で倒れてしまった中年男性と、それを助けた女子(中?)高生の話。男性は船に乗っていかなければならない家に住んでいる。二人は恋人関係のようになるが最後は・・・。『ホテル・アイリス』に近い雰囲気の作品。


4は、ある女性が訪れたお料理教室で初めの授業を受けている最中、排水溝の清掃業者が営業にやってきて、そのまま授業中にもかかわらず2時間近くかけて排水溝をきれいにする話。中にたまっていた部分が次から次へと吐き出され・・・。


5は、匂いを収集する彼女を持つ男が語るストーリー。収集癖、不気味なもの、などなどのテーマが盛り込まれ、最後は少し恐ろし気に終わる。


6は、弟が水泳選手でオリンピック強化選手にも選ばれるが最終的に片腕があがったままになってしまい、どんどん萎えていってしまうという話。同じ話をどこかで読んだ気がするのだが、色々探したが結局見つけられなかった。小川洋子は弟が水泳選手というモチーフを良く用いる気がする。


7は、卵巣から毛が生えてなくなってしまった女性の話。主人公の不眠症の女性と、老婆と家無しの少年が心通わす話で、何故か心があったまる。


8は、男性小説家の話。彼の小説を訳してくれるオーストリア男性の所に、ロンドン留学中にて問題を起こした自分の娘のことを色々対処するためにイギリスへ向かう途中、せっかくだからとオーストリアへ立ち寄りその翻訳家に会う話。その翻訳家は老人で、双子で、彼ら一家はかつてナチスの迫害を受けていたという話。結構シリアスな話だがこれも最後は心温まる。


全体的に怖い話が多いのだが、「まぶた」というテーマを絶妙に織り交ぜながら心温まる世界が作り出されている。やはり上手いなあと思う。

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