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貴婦人Aの蘇生 長編⑧ [文学 日本 小川洋子 長編]


貴婦人Aの蘇生 (朝日文庫)

貴婦人Aの蘇生 (朝日文庫)

  • 作者: 小川 洋子
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2012/12/04
  • メディア: Kindle版



語り手である女子大生の私と、私の叔父さんが晩年になって結婚したロシア人女性との心の交流を描いた、若干ミステリー的な要素も交えた作品。

夫であった叔父さんを亡くしてしまったロシア人の叔母さんが、病院で入院している場面から始まる。彼女はひたすら「A」という刺繍を色々なものに施している。この「刺繍」というのも小川洋子作品にはよく出てくるものだ。彼女は退院し主人公の私との奇妙な同居生活が始まる。

叔父さんは仕事であててお金持ちに。そのお金を使って様々な剥製を世界中から集め、それを飾るべく田舎に大きな家を買う。叔父さんが死んだ後、叔母さんがこの家と剥製を守ることに。彼女は剥製に一つ一つ「A」の刺繍を日々施す。

そんなある日、剥製収集家のオハラなる人物が屋敷を訪れる。オハラは叔母さんと話すうちに、彼女がロシア革命により殺された、ロマノフ家の四女、アナスタシアではないかと考える。

物語は、私、叔母さん、私の恋人で強迫性障害があるニコ、そしてこのオハラの4人を中心に進んでいく。叔母さんは本当にロマノフ家の生き残りなのか、という謎解き要素もある。

物語として面白くかなり読みやすい作品。彼女の作品の中ではマイナーかもしれないが、結構優しさ溢れる良い作品だと思う。
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