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ミーナの行進 長編⑪ [文学 日本 小川洋子 長編]


ミーナの行進 (中公文庫)

ミーナの行進 (中公文庫)

  • 作者: 小川 洋子
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2009/06/01
  • メディア: ペーパーバック



再読

谷崎潤一郎賞受賞作ということで昔読んだのだと思う。その当時はとても面白くどんどん読めてしまった。コビトカバが出てきたり、芦屋の裕福な洋館での少女二人の心の交流がとても面白く、図書館や本も物語の展開に重要な要素だったので、かなりあっという間に読んでしまった印象があった。

最近仕事が忙しく、肉体的にも精神的にもかなり疲れている、というのはあるのかもしれないが、読むのにかなりの時間がかかってしまった。基本的には平和な感じで物語は進み、小川洋子さん特有の毒々しい感じや静謐な感じもあまりなく、穏やかな展開なのも読みがゆっくりになってしまった原因かもしれない。谷崎潤一郎賞受賞作という先入観があるのかもしれないが、彼の代表作『細雪』を彷彿とさせる、平和ながらもそれぞれの登場人物の内的葛藤があり、その内的葛藤をしっかり描いているという点ではかなり良作だとおもう。

今回読んでみて、細かいところはなんにも覚えていないんだなあ、と思った。ミーナのお父さん、つまり主人公朋子の叔父さんは、家にあまりおらず、恐らく不倫をしていたり、朋子がミーナのために、叔父さんの経営する工場見学をし、その後ちょっとした冒険をしたり、星の観察に出かけたり、最後は火事騒動に巻き込まれてたり、後半こんなに色々な事件が起こったっけ???という感じだった。

とにかく前半のゆったりとした展開を、後半スピードを上げてまとめあげていく感じがとても良かった。谷崎潤一郎の『細雪』、綿矢りさの『手のひらの京』をもう一度読んでみたくなるとともに、この物語にも出てくる川端康成の『古都』も読んでみたいと思った。

p.332
「何の本を読んだかは、どう生きたかの証明でもあるんや。これは、君のもの」
これは、朋子がひそかに心寄せる、図書館員のお兄さんの言葉で、引越しするために図書館に来られなくなった朋子に図書館の貸出カードをくれる場面。
今は全て電子化されてしまってこの場面が映像としてイメージできない人が多いと思うのだが、とても良い場面であり良い言葉だと思う。本はその人の思想を明確に映し出すという理由もあるらしいのだが、図書館の貸出記録のようなものは、どんどんコンピューター上から消されていくらしい。アナログにはアナログの良さがあるよな、と改めて思った。
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