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海 短編⑩ [文学 日本 小川洋子 短編]


海 (新潮文庫)

海 (新潮文庫)

  • 作者: 洋子, 小川
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2009/03/02
  • メディア: 文庫



1. 海
2. 風薫るウィーンの旅六日間
3. バタフライ和文タイプ事務所
4. 銀色のかぎ針
5. 缶入りドロップ
6. ひよこトラック
7 .ガイド

1は以前読んだ対談集で話題に挙げられており結構楽しみにしていた作品。海が直接登場しないのに海が感じられる作品ということだったが、確かに全く海が登場せず、山へと入っていく話だった。教員カップルが、女性側の実家に結婚の報告へ行く話で、婚約者の女性泉さんは、家族とあまりうまくいっていないようで、その理由を話したがらない。家族は皆良い人なのだがなぜか夕食の席でもイマイチ打ち解けられない。寝る際には、主人公の男性と彼女の弟が一緒の部屋で寝ることになるのだが、そこでの会話で初めて海に関係するものが登場するというもの。この弟ミュージシャンということなのだが実は引きこもり?と思わせる。いろんなことが解決されないまま終わる短編。

2はウィーンへ一人旅に行った女性が、初老の女性と相部屋になり彼女の旅の目的に結局、その旅中全日付き合わされる話。しかも最後の大どんでん返しが面白い。しかしなぜか悲しみが兆しているのは何故だろうか・・・。小川洋子さんはドイツ方面への旅関係の話が結構多い気がする。

3はこれも彼女の作品にはよく登場するタイプライターの話。タイプライターを打つ女性がひそかに、活字管理人に恋をする物語。そんなに近づかない二人だが、なんとなく最後は淫靡な感じがする。

4は超短編。こちらも彼女の作品によく出てくる編み物をする老婆の話。偶然電車内で向かい合いに座った編み物をしている老婦人を見て自分の祖母を思い出す。心暖まる話。

5も超短編。バス運転手一筋に生きてきた男が、幼稚園のバス運転手となり、幼稚園児と心通わす話。結末が心暖まる。

6は、中年男性と話ができない少女との心のふれあいを描いた作品。最後で少女が声を発する場面が感動的でもある。

7は、母子家庭で育つ男の子が主人公。自分の時間を奪われながらも、公認観光ガイドとして一生懸命働く母親を暖かく見守った作品。

どれも今までの小川洋子っぽくない気がする。短編が有名な作家のうまいオチのある作品集のような感じで、彼女の作品としてはあまりオススメしないが、こういう「そう言うオチ?」みたいなのが好きな短編好きには良いのではないだろうか。





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