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パイドン [哲学 プラトン]


プラトン全集〈1〉エウテュプロン ソクラテスの弁明 クリトン パイドン

プラトン全集〈1〉エウテュプロン ソクラテスの弁明 クリトン パイドン

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2005/01/25
  • メディア: 単行本



ソクラテスが刑の執行をされ殺される直前の仲間たちの対話を、後にエケクラテスという人にパイドンが語ったという形を取った作品。

テーマは、魂と肉体の二元論、そこから転じて魂の不死、魂の想起説、エイドス(イデア)論、などプラトン思想の根幹となるようなテーマがコンパクトにまとめられている。

結構どんどん話が進み、何となくうまく言い含められているような部分もなくはないし、じっくり考えてもイマイチよくわからない部分も多いし、後半の神話的な部分は読むのが辛かったりするのだが、全体的には読みやすく面白く興味深い。

p.179
「知を求めるひとというのが、とくに他の人間たちとはきわだって、魂を、できるだけ肉体との交わりから解きはなそうとしていることが、あきらかとなるのではないか」

p.185
「まさしくこのからだのおかげで、世にいうように、まことわれわれには考える機会すら何ひとつ片時も生じないのだ。というのもじじつ、戦争にしても内覧にしてもいろいろの争闘にしても、それらは、ほかならぬ肉体と、それのもつ欲望が生じせしめているのだからねえ!なぜなら戦争はすべて財貨の獲得のためにおこるのだが、その財貨を手に入れよ、と強いるのは肉体であり、われわれはその肉体の気づかいにまったく奴隷のように終始している以上は、どのみちそうせざるを得ないからだ。」

p.188
「魂の、肉体からの開放と分離が、死と名付けられている、のではないのか」

p.190
「死にのぞんで嘆きかなしむ男を、もし君が目にしたならば、そのことは彼がじつは知を求める者ではなかったのであり、むしろ肉体をこそ愛する者であったことの十分な証拠となるのではないか。でまた、そのおなじ男は、まさに金銭を愛する者が名誉を愛する者のいずれか一方であるか、或いはその両方をかねそなえた者でおそらくはあることだろう」

この辺は魂(知)が肉体より優れたものであり、逆に肉体のせいで知を求めることを妨げていると言っている素晴らしい箇所だ。


p.206
「いまわれわれが想起する事柄は、いつかそれ以前の時に、われわれによってすでに学び知られたものであることに、必然的になるでしょう。ところでそのことは、われわれの魂が、この人間というもののうちに生じてくる以前に、すでにどこかに存在していたのでなければ、不可能なことです。したがって、この途をたどっても、魂は不死であることにどうやらなりそうですね」

これが有名な魂の不死説であり、想起説だ。


p.236
「この物体的なものは重たくて、土の性をもち、可視的なものとされねばならない。じっさい、いまのべたような魂は、たしかにこれを帯びるがゆえに、それ自身の軽ろやかさを失い、かの見えざるところ、ハデスをおそれて、ふたたびこの目に見えるところへと引き戻されてしまうのである。ーあの、牌や墓のまわりを転々とすると世間でもいわれており、じじつ、そのあたりでは魂のかげに似たまぼろしが見られるのだが、それはいまのべたような魂が、つまり清浄ならざるままに肉体から離別し、可視的なものをみずからにあずかりもつ魂が、つくりだす幻影なのである。だからこそ、また見られもするというわけだ。」

この説明はお化けを説明する説としてかなり面白いし、説得力がある説な気がする。

p.320
「魂がハデスに赴くときに、伴いうるものは、ただみずからの学びと養いのしるしだけであり、それこそが、かの世への旅の当初から、とりわけ死者たちを益し、あるいは害するものと、言い伝えられているのだ。

魂を出来るだけ良いものにするために、知を追い求めることの大切さを改めて考えさせられた。やはり面白い作品だった。
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