ナショナリズムの狭間から [学術書]
新版 ナショナリズムの狭間から: 「慰安婦」問題とフェミニズムの課題 (岩波現代文庫 学術 443)
- 作者: 山下 英愛
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2022/02/17
- メディア: ペーパーバック
昨年の2月に岩波現代文庫から出版され、ずっと気になっていたのだが、硬い本を読むことから遠ざかっていて、こうした問題と向き合うのが億劫だったために買わずにいた。
昨年、何故だか覚えていないが、上野千鶴子の本を読みあさることになり、その流れでこの本を購入。上野千鶴子の本が一通り読み終わったのでこの本に取り掛かった。
作者は在日2世、というのだろうか。お父さんは朝鮮人、お母さんは日本人。
小学校は朝鮮学校、中学校からは日本の公立で過ごしたらしい。
韓国に留学し、「慰安婦」「挺身隊」問題に取り組み、活動を続けてきたひとのようだ。
自分の生い立ちから始まり、韓国留学中のフェミニズムや「慰安婦」問題の活動、日本に対する責任追及だけでなく、韓国における家父長制的伝統による、女性差別や蔑視の問題も取り上げており、「慰安婦」や「挺身隊」含め過去から現在における様々な女性をめぐる問題を、様々な観点から考え解決策を探ろうとしている本。
日本が韓国人慰安婦に問題解決として提示した「国民基金」の問題は、上野千鶴子も取り上げて詳しく論じており、上野千鶴子の日本側から見た問題点、山下英愛の韓国側から見た問題点、と二つの視点がわかって結構面白かった。
日本だけでなく、韓国の正差別的な、パワハラ・セクハラ状況も細かくわかり、結構勉強になる本だった。
p.191
「韓国であれ日本であれ、このように人を不当に差別し排除するあらゆるものに抗する立場(視点)に身を置き実践することが大切だと考えるようになったのである。私はその手がかりをフェミニズムから与えられたと思っている。」
p.194
「「慰安婦」問題が私たちに重要なのは、女性を兵士の性的慰み者にすることの問題性から発して、性的自己決定権を含めて、人権を尊重する社会を地球上にいかにつくってゆくのか、ということであろう。」
世界はかなり性差別を解消する方向へ向かっている。しかし日本は相変わらず、LGBT、夫婦別姓、税金の問題含め、いろいろな差別を解消しようとしない国家のままである。なんとか日本もより良い社会になり、皆が行きやすい社会へと変わっていって欲しいと切に祈る。
2023-02-16 09:04
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