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ラ・カテドラルでの対話 上 [文学 その他]


ラ・カテドラルでの対話(上) (岩波文庫)

ラ・カテドラルでの対話(上) (岩波文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2018/06/16
  • メディア: 文庫



この本に付された「緒言」によると、筆者バルガス=リョサ自身が自分の作品の中で「火事場から救い出す」としたら選ぶであろう作品らしい。

上巻だけでも600ページを超える大作。

初めに新聞社から出てくるサンティアーゴの描写から始まる。彼が家に戻り、妻のアニータから、犬が野犬収容所に連れて行かれてしまったことを教えられ、飼い犬を助け出すためにそこへ行き、無事救い出したところ、彼の実家の召使だったアンプローシオと偶然出会い、彼と「ラ・カテドラル」という飲み屋に行くことになり、そこでの対話を描いた作品。

資本家の下に生まれたサンティアーゴの、共産主義へと傾倒する自身のアイデンティティの葛藤、上流階級が進む大学ではなく、一般大衆が進む大学をあえて選び、そこで出会った共産主義者の女性アイーダと友人のハコーボとの三角関係、ハコーボの裏切り、ストライキによる蜂起の失敗、逮捕、裕福な生活を捨て、自立するために新聞社で働くことになるまでの物語が軸となって進む。

その裏で、彼の父親ドン・フェルミン、その友人ドン・エミリオ、権力者ドン・カヨ・ベルメデスの薄汚い政治的やり取り、警察の動きが挟まれる。

さらに、サンティアーゴと話をしているアンプローシオと彼の愛するアマーリアとの恋物語がところどころ入ってくる。

過去と現在を行ったり来たりするとともに、いろんな挿話が会話会話のあいだに入ってきて、リョサ特有の読みづらさがあるが、とにかく物語が面白い。重層的なのだが、それぞれの話がいろんなところでつながっており、絶妙なバランスで話が進んでいく。

アマーリアの純粋な心がとてもよく、彼女の挿話がとにかく楽しい。サンティアーゴの大学時代の恋と自分の内面の葛藤の部分もとても面白い。

読みづらいが本当に面白い作品だ。
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