マルクス 生を呑み込む資本主義 [その他 本]
今を生きる思想 マルクス 生を呑み込む資本主義 (講談社現代新書)
- 作者: 白井 聡
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2023/02/16
- メディア: 新書
昨年から刊行された、講談社現代新書の「今を生きる思想」シリーズは、ページ数も100ページ強で、短く分かりやすくそれでいてそれなりにしっかりとしており、さすがは講談社現代新書といった感じで結構気に入っている。
この本は、マルクスの簡単な一生について述べた後、主著である『資本論』を順を追ってポイントを絞って解説している。等価交換だったものに、お金が介在し、どのように剰余価値が生まれるのかといった説明も分かりやすいし、疎外や搾取、包括といったポイントとなる言葉の説明もわかりやすく、人間が「資本主義」に体も心も組み込まれ、その論理を内面化し行動してしまう過程を描き出している。
私の知るある校長はよく、「感動体験をぜひ味わってほしい」と生徒に言っているのだが、はっきり言って違和感があり押しつけがましい。その私の感覚を表現していくれているのがこの本の最後の方に付された次の部分だ。
p.119
「本来、「感動」「笑顔」「仲間」「感謝」「協働」「共感」連帯」「団結」といったものすべては、われわれが自主的に作りだすべきものだ。仕事の「やりがい」も自ら発見すべきものである。だが、消費社会的受動性が極限化するとき、一方では包括の高度化が人間を純然たる労働力商品の所有者へと還元する中で、それによって失われるわれわれの人生にとって不可欠な情動までもが、資本によって与えられる商品となる。」
ある学校の校長は、資本主義の論理を内面化し、「主体的に行動せよ」などと偉そうなことを言っているが、「受動的であれ」ということをメッセージとして子供たちに伝えていることすらわかっていないのであろう。
2023-07-15 07:10
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