人間タワー [文学 日本 Modern]
中学入試の国語の問題で、最近使われることが多い作品らしい、ということをネットで知り、小学校の組体操における「やぐら」「人間タワー」の是非にも興味を持っていたので読んでみた。
直接的な学校関係者だけではなく、保護者・近くの老人ホーム・卒業生などのエピソードも入った結構重層的な作品。一人一人の人生が結構重く、読んでいて重量感がある。恩田陸や森絵都などのような色彩感はなく、けっこうべちゃっとした印象の作風ではある。
それぞれの語り手がそれぞれの立場から小学校で行われる伝統の「人間タワー」への思いを語っており、結構面白かった。
私は小さい頃から背が低く、体も軽いが、それなりに運動神経が良く、運動会の騎馬戦などでは常に上だったし、ピラミッドややぐらも、一度ピラミッドの2段目をやったことを除いて常に上だった。だからかもしれないが、組体操というものに結構良い印象を持っており、数年前この組体操の是非が色々と話題になったとき、確かに危険ではあるが、そこまで反対しなくても・・・という気持ちが結構あった。
最後は、色々な人がうまく納得できる結末であり、弱者に寄り添ったものであり、同じような形の朝井リョウの『桐島、部活やめるってよ』のような、上から目線のあざとい小説でなく、読後感もかなりすっきりとした前向きなものだった。
「人間タワー」と題されてはいるが、人間タワーを題材にしてそれぞれの人生の深い部分を抉っていく作品。
積極的にほか作品も読んでみようと思わせるような作家ではないが、他にも少し読んでみようとは思う。
2023-08-01 17:08
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