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なぜ男女の賃金に格差があるのか [学術書]


なぜ男女の賃金に格差があるのか

なぜ男女の賃金に格差があるのか

  • 出版社/メーカー: 慶應義塾大学出版会
  • 発売日: 2023/05/01
  • メディア: Kindle版



慶應から定期的に送られてくる雑誌に紹介されていて興味を持った本。
図書館で借りようとしたらかなりの予約待ちで3~4ヶ月してようやく届いた本。
こんな難しそうな本を何故市立図書館でこんなにみんな読むのだろうと思っていたら、2023年の10月に彼女はノーベル経済学賞を受賞していたらしく、そのせいだったんだ、と納得。

届いてみたら300ページ以上ある本で、返却期限の2週間で読み終えられるか、と思ったのだが、とりあえず通勤の行きに、洋書の代わりに読んでいたら1週間で読み終えられた。

ここ120年くらいのアメリカの女性たちの、仕事と家庭について論じた本で、この120年間を5つのグループに分けている。ちなみに、ここで出てくる「家庭」の定義は、「配偶者がいる」ではなく(基本的には)「子供がいる」というもの(だが「配偶者がいる」の場合もある)、キャリアの定義は「長く働けて、人気の高い職種、自分のアイデンティティを形作ることが多い」というものだ。仕事は「収入を生み出すだけのためにやるもの」。基本的には大卒の高学歴の女性たちを研究対象としている。

①生まれ1878年~  大学卒業(およそ)1900年~
②生まれ1898年~  大学卒業(およそ)1919年~
③生まれ1923年~  大学卒業(およそ)1945年~
④生まれ1943年~  大学卒業(およそ)1965年~
⑤生まれ1957年~  大学卒業(およそ)1979年~

①は「家庭 or キャリア」
②は「家庭 after 仕事」
③は「仕事 after 家庭」
④は「家庭 after キャリア」
⑤は「家庭 and キャリア」

初期は、封建的考え方もあり、「家庭を選ぶ」か「自分の好きな道を選ぶ」かの二者択一。
次の時期は、仕事を行いお金を設けた上で家庭に入るというもの。仕事をしたあとに結婚なので子供がいない人も多かった。
次の時期は、前の時期の反省を生かし、先に子供を作ってそれから仕事というもの。しかし大学での自分の研究分野と全く違う「仕事」についたものが多い。
次の時期は、前の時期の反省を生かし、避妊法の進歩なども手伝って、キャリアを積んでから子供を、と願ったが、この頃はまだ科学が進歩しておらず、35歳以上になると子供が出来づらく、いろいろな問題も置きやすいということが分かっていなかった。
最後の時期は、科学も進歩して、「家庭もキャリアも」を目指す人が増えた、ということ。

こうした大きな流れを説明した上で、題名の「なぜ男女の賃金に格差があるのか」の答えとしては、女性は出産・育児の際にキャリアを一度断念せざるを得ず、しかも子供が大きくなるまでは、働ける時間に制約があり、それが賃金の差となる、ということだった。

そして今後は、コロナによって生まれたリモートなどの新しい働き方が、この差を埋める一因となりうるのか、という問題提起で終わる。

正直私はキャリア志向もなく、お金をたくさん儲けたいなどという考えもないので、なるべく時間的に短い時間で仕事をしてきたし、そもそも一緒に生活するうえでどちらが働いていようが、家のことはお互いやるべきだと思っているので、妻が非常勤の時も、専業主婦の時も、専任になってからも、おそらく家事の50%~80%は私がやってきたし、育児も40%~70%はやってきた(ている)と思う。だから、ここに出てくる人々は、周りの人の状況を聞いていると正直何故男は家でダラダラしているのか、全く理解できない。

とはいえ、二人の子供を育ててきたから言えるが、やはり生後1~2年は、女性の方が子供にできることは多く、この長男が生まれた後二年間に関しては、妻が完全に働いていなかったこともあり、育児の割合は妻の方が多かった。上記の40%というのはこの2年間。それでも、他の家事(おむつ洗いなども含め)は私がやることが多かったきがする。そう言う意味で、この2年間も、育児と他の家事のバランスを男女でうまく取れれば、かなりうまく回るのではないか。

結局、この本にも少し触れているのかもしれないが、世の中全体として、資本主義的な考え方、お金をたくさん稼ぐことが良いことなのだ、という価値観から解放されない限り、「男女の賃金の格差」というものは埋まらないのでは、とこの本を読んで&自分の経験から思った。
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