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アルキビアデスⅠ [哲学 プラトン]


プラトン全集〈6〉 アルキビアデスI アルキビアデスII ヒッパルコス 恋がたき

プラトン全集〈6〉 アルキビアデスI アルキビアデスII ヒッパルコス 恋がたき

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2005/06/24
  • メディア: 大型本



この作品は、プラトンが書いた作品ではない、つまり偽作だとする説もあるらしい。
しかし、ソクラテスとアルキビアデスという二人の対話で非常に分かりやすく、主張もほか作品と基本的には同じ題材を扱っているのでとても読みやすい。専門的にはよくわからないが、私はプラトンが書いた作品なのではないかと思う。

ストーリーは、家柄もよく、見目形もよく、多くの人から求婚されたり愛され、政界にも打って出ようとしているアルキビアデスに対して、昔から目をつけていたが、デルフォイの神託によって、ある時期が来るまでアルキビアデスとは接触するなと言われていたソクラテスが、遂に話しかけるというもの。

自分に自信があり傲慢なアルキビアデスが、ソクラテスとの対話により、自己の内面・心に目を向け、大切なのは金や肉体美ではなく、魂の美しさなのだとだんだん気がついていく様はとても美しい。

解説を読むとプラトン作品の入門書として昔は位置づけられていたらしいが、わたしもそれにぴったりの書だと思う。短いし、難解な部分は少ないし、是非岩波書店にはこの作品を文庫化してもらいたい。

アルキビアデスの傲慢さをソクラテスが指摘する場面
p.4
「きみの立場は、何事も世の人の助けは少しもいらないという立場なのだ。きみに具わっているものは、身体のことからはじめて最後は精神まで、何一つ不足がないほどの大をなしているからだ。きみの信ずるところでは、まず第一に美しいことも大きいことも、このうえなしのきみなのだからねえ。」

p.34
「なぜならきみは、気違いじみた企てをしようとしていたのだからね、このうえなくすぐれた人よ。自分の知らないことを教えようとするのだからね、学ぶことは怠ってさ。」

まさに、文部科学省・ベネッセ・多くの教育産業・多くの教員に当てはまる言葉だ。

p.89
「してみると、「自身を知れ」という課題を出している人は、われわれに「心を知れ」と命じているわけなのだ。」
p.90
「してみると、自分自身を知るということが、克己節制するということ(思慮の健全さを保つこと)だとすれば、これらの人たちは、その技術だけにたよっているかぎり、誰も思慮の健全な者はいないということになる。」

p.93
「その原因は、きみという人を愛したのはぼく一人だけで、ほかの人たちはきみの付属物を愛したに過ぎなかったからだということにある。そしてきみの付属物は最盛期を過ぎようとしているけれども、きみ自身の開花期はいま始まりかけているからだ。そして今となっては、きみがアテナイの民衆によって腐敗させられ、いまよりも醜くなるようなことがないかぎり、ぼくは決してきみを見捨てるようなことはしないだろう。」

この辺は『ソクラテスの弁明』を彷彿とさせる。

p.94
「心に気をつけ、たましいの面倒をみなければならぬ、そしてこれに目を向けるようにしなければならぬ~(中略)~身体や金銭に気をくばること(面倒をみること)は、ほかの者にまかせるほうがよいのである。」

p.101
「したがって、ひとは富んだからといって、不幸をまぬかれるものではないのだ、思慮の健全さを保つのでなければ。」

なかなか手に入りにくい作品だと思うが、プラトン入門書としてかなりオススメできる作品だ。

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