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アンデルセン童話集 1 [文学 その他]


完訳アンデルセン童話集 1 (岩波文庫 赤 740-1)

完訳アンデルセン童話集 1 (岩波文庫 赤 740-1)

  • 作者: ハンス・クリスチャン・アンデルセン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1984/05/16
  • メディア: 文庫



アンデルセンの童話集をまた読み始めた。
この本は全部で7巻有り、当時一巻一巻読み終わったら次の巻を買おうと思って一巻だけを買ってあった。
しかし、何故だか知らないが読んでも上手く読み進められず、ここ15年間くらい、2~3回挑戦するのだが、なかなかちゃんと読み終われなかった。

今回、再挑戦してみたら、結構面白く、それなりに読み進められた。

日本の昔話やイソップ物語と違い、教訓めいた部分は少なく、出てくる魔女なども結構良い人で、基本的にはハッピーエンドで終わる。世界中で人気の童話集なのもわかる気がした。そして当然のことなのだろうが、キリスト教に多大な影響を受けており、随所に直接的な聖書への言及もあったりする。

この本で有名な話としては、
親指姫
人魚姫
皇帝の新しい着物
の3つだろうか。
「人魚姫」はほぼディズニー映画「リトル・マーメイド」と展開は同じだが、最後が全く違うことに驚かされた。確かにディズニー映画の方が子供たちには良いのであろうが、キリスト教的にはやはりアンデルセンの原作の方が良いのであろう。

ほかの作品も短いものから長いものまであり、『千夜一夜ものがたり』に明らかに影響を受けているであろう「空飛ぶトランク」なども興味深い作品だった。

この年になるまでなかなか読み進められなかった「アンデルセン童話集」。40歳になってからある程度楽しめるようになるとは、物語とは本当に不思議なものだと改めて思った。
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密林の語り部 [文学 その他]


密林の語り部 (岩波文庫)

密林の語り部 (岩波文庫)

  • 作者: バルガス=リョサ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/10/15
  • メディア: 文庫



『密林の語り部』を読み終わった。
岩波書店の文庫目録を読んでいたときに、興味を持った作家で、とりあえず短そうなこの作品を選んだ。

衝撃的な作品だった。
普通の小説であるが、普通の小説ではない。
『ユリシーズ』などの実験小説的な感じはまったくないが、今までの小説の概念を根本的に変えるような作品である。そういう意味で、読んでいて意味の全くわからない『ユリシーズ』よりはるかに優れた作品だと思うのだ。

主人公の私が語る章と、アマゾンの密林に入って行って「語り部」となったサウル・スラータス(マスカリータ)の語る章が交互に現れる。
こうした手法の小説は、よく見られるが、登場人物が順番に語ることだったり、書簡形式の往復書簡だったりすることが多いのだが、この小説は全く違う。ある意味、唐突に章の転換が行われる。章の割り振りは以下のようになっている。

1.私の語り(現在)
2.私の語り(過去:私とサウルの出会い)
3.語り部の語り
4.私の語り(過去:私のアマゾン体験1)
5.語り部の語り
6.私の語り(過去:私のアマゾン体験2)
7.語り部の語り
8.私の語り(現在)

つまり、現在の私が、アマゾンの写真を見たことによってよみがえってきた、サウルとの思い出を過去から現在に戻しながら語るという形式を取りつつ、その間に、そのサウルがアマゾンの語り部となって語っている章がはさまれる。

この「語り部」の章が、非常に読みづらい。時間軸順に書かれておらず、話もまとまりがなく、空間も超越している。なので、普通の語りになれた現代人にとってはよく分からない部分が多い。しかし、アマゾンに住む人々や近代化されていない地域での伝承とはこういうものなのだと思う。そもそも、物事というものは我々が思うほど秩序だったものではなく、混沌としたもののはずだ。それをそのまま語っていくのが口頭伝承なのだろう。それを小説という形の中に無理なく押し込んでいるのがこの小説のすごさだ。

そして、『聖書』や『古事記』はじめ、世界の始まりに関する神話のようなものはどこも変わらないのだなあ、と思う。人間と自然のかかわりも非常に自然で、人間の内面が、自然現象に大きく影響を与えるというのも面白い。

「語り部」になった、サウル・スラータスは、顔の半分に痣がある。さらにユダヤ人である。外面的にも、社会的にも差別されている人間が、西欧的近代社会に背を向け、未開の地アマゾンの中に自己を同一化していくこの小説、読み解くのは非常に難しいが、さまざまな視点を我々に与えてくれる。

最後に、印象的な部分をいくつか紹介したい。

p.201
「≪文化≫というものは、科学や、文学や、その他の専門化された知識と同義ではなくて、物事へのアプローチの仕方、人間に関わる事象に取り組む一つの可能な視点なのだ~」

p.285
顔の半分に痣があるサウルがアマゾンの長老に「私のようなものであってもいいのかね?」と自分をアマゾンに受け入れてくれるのかどうかと問うたことに対して、長老が言った言葉
「人が何をし、何をしないかが問題だよ」

つまり、外見ではなく、内面から発する行動が重要なのだということだ。

文明と未開、外面と内面、開発と自然、さまざまな差別構造、本当に様々なことをテーマに含んだ非常に面白い作品だった。
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ドン・キホーテ 後篇3 [文学 その他]


ドン・キホーテ〈後篇3〉 (岩波文庫)

ドン・キホーテ〈後篇3〉 (岩波文庫)

  • 作者: セルバンテス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/03/16
  • メディア: 文庫



『ドン・キホーテ』を遂に読み終わった。一週間くらい前には読み終わっていたのだが、なかなかブログに書く余裕がなかった。

前篇は確かに面白くなくはなかったが、世界の名作10傑に必ず上がるほどの名作なのか、と思っていたが、この後篇を読んで納得。

前篇は、騎士道物語を読みすぎて頭の狂ってしまったドン・キホーテとそれに付き合うサンチョ・パンさの面白くも、物理的な意味で痛々しいものがたり。さらに、彼ら二人と関係ない話がメインとなる部分がかなりある。
後篇は、前編を登場人物たちが読んでいるという前提に立っている場面が多く、それを踏まえた上で、様々なことが繰り広げられる、面白く、精神的な意味で痛々しいものがたり。皆が、ある意味メタレベルで物語を見ることができているので、すこし客観的な感じ。サンチョ・パンサも非常に精神的に、知的に成熟しており、彼とドン・キホーテの対話、彼と他の登場人物の会話が非常に深い。さらに基本的にはこの二人が主人公となり話が進んでいく。

この物語は形式的に新しく、メタ・フィクションがどうのこうの、と言われることが多いが、それも確かに無くはないが、何にしろ、哲学的に優れている。人間とはどのように生きるべきなのか、自由とは何か、平等とは何か、人の上に立つということはどのようなことなのか、ということを、ドン・キホーテとサンチョ・パンサの言動や行動を通して伝えている。

普通に物語としても面白いが、思想的に本当に優れた世界文学だと思う。
ベスト10に入るか、と聞かれたら、自分の中では入らないかもしれないが、超名作であることは間違いない。

最後に素晴らしい箇所を何箇所か紹介したい。

p.39 ~ p.48
ドン・キホーテが、領主になって統治をうまくやっているサンチョに宛てた手紙とそれに返答したサンチョの手紙。
これは長文なので、ここには載せないが、すべての政治家が一度は読むべき箇所だと思う。
服装について、礼節、美徳、その他について述べているのだが、非常に道徳的で、崇高な内容となっている。多くの統治者がこうした心で政治を行ってくれたら、世の中もっと良くなるのに、と思う。

p.137
「サンチョよ、自由というのは天が人間に与えたもうた、最も貴重な贈物のひとつであってな、大地が蔵し、大洋がその内に秘めておるいかなる財宝といえども、これには遠く及ばぬ。それゆえ、自由のためなら、名誉のためと同様、生命をかけてもよいし、またかけるべきなのじゃ。~中略~ いたれりつくせりのもてなしを受け、氷のように冷たい飲み物や舌がとろけるような珍味佳肴にとりかこまれておったのだが、それでもわしは、まるで飢えの責め苦にあっておるような気がしたものじゃ。なぜかと申せば、自分のものを味わい、享受するときのような自由な気持になれなかった、言い換えれば受けた恩恵や好意には報いねばならぬという義務感が枷となって、心がのびのびと自由にならなかったからじゃ。おお、天からただ一切れのパンを授かり、天を除いては感謝すべき相手を持たぬ者こそ、幸いなるかな!」
人間が、人との関わりの中でどのように生きるべきか、精神的に自由であることの大切さを説いている非常に感動的な一節だ。フランス革命で訴えられているよりも根本的な人間の自由の賛歌と言える。

p.146
「〈愛〉というものは思いやりを欠いたものであり、その展開において理性の束縛を受けることがない。その点においては〈死〉と同じ性質を有しており、王侯貴族の豪壮な宮殿にも、羊飼いたちの見すぼらしい堀立て小屋にも、同じように襲いかかる。そして、ある人間の魂を完全に支配したとなると、まず最初にすることが、その人間から恐れと恥じらいの気持ちを奪い取ってしまうことなじのじゃ。」
愛の本質をついている箇所だ。愛というと普通は美しいものという印象があるが、美しいだけではない自分勝手なものでもあるということを非常に的確に言っている。

p.352
「人を愚弄する者たちも愚弄される者たちと同じく狂気にとらわれていると思う。」
これも人間の本質をついた言葉だ。

本当に素晴らしい作品だった。
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女の議会 [文学 その他]


女の議会 (岩波文庫 赤 108-8)

女の議会 (岩波文庫 赤 108-8)

  • 作者: アリストパネース
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1954/12/25
  • メディア: 文庫



今年の2月、この『女の議会』が岩波文庫から復刊された。ギリシャ悲劇はちくま学芸文庫からシリーズとして出ているのだが、何故かギリシア喜劇は絶版になっており、読みたいなあ、とは思いながらも手を出さずにきた。今回復刊されたのを機に、また手に入らなくなってしまうのを懸念しとりあえず購入した。

女性達が、男装して、男達の議会をのっとり、政治を女性達の手に委ねさせるというストーリー。議会での議論の場等があるのかとおもいきや、議会での議論の場は一切描かれず、いきなり、結論、つまり女性に政治を任せるということが読者(観客?)に提示される。

政策はいたって単純
1.私有財産を廃止し、すべてを共有財産とする(いわゆる共産主義社会)。
2.女性の共有(ことばは悪いが自由性交)。

1のほうはまだしも、2のほうは様々な問題が起こる。まず、綺麗な女性にみんなが集中してしまう。これはものすごい解決法が提示され、綺麗な女性と性交するためには醜女性と先に性交をしなければならないというもの。これにより、年取った女性達が若い男性を取り合うことになる。さらに、それによって子どもが出来た場合、近親相姦の恐れも出てきてしまう、などが次なる問題として挙げられる。

これは、おそらくプラトンの『国家』で彼が示した理想の社会を批判したものなのだろうと思う。
それが、演劇という形で示されることにより、より実感を持って考えることが出来る。100ページ程度の小品だが、内容は大変深い。それぞれのテーマをもう少し掘り下げ話を膨らませてくれればもっと面白い作品になったのになあ、と思う。

なんにしろ、当時としては非常に斬新な作品だったであろうし、2000年以上も経った現在でも十分に通用する非常に根深いテーマ(特に女性の政治参加という点)であることは間違いない。

もうすこし分かりやすい、現代人でも読みやすい訳が出てくれると嬉しい作品だ。
ついでに、同作者の『女の平和』も早く復刊して欲しい。
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ドン・キホーテ 後篇2 [文学 その他]


ドン・キホーテ〈後篇2〉 (岩波文庫)

ドン・キホーテ〈後篇2〉 (岩波文庫)

  • 作者: セルバンテス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/03/16
  • メディア: 文庫



『ドン・キホーテ 後篇2』を読み終わった。
非常に面白かった。今まで読んだ5冊(前篇全三冊&後篇二冊)の中で一番面白かった。

ドン・キホーテとサンチョ・パンサが旅の途中で出会った、公爵夫人と公爵の館に招待され、そこで行われる様々な出来事が語られる。
この公爵と公爵夫人は、『ドン・キホーテ前篇』を既に読んでいるという前提であり、この二人の狂気性を知っていて、悪ふざけをするという内容。
若干、悪ふざけが行き過ぎている感じがするが、前篇よりも、ドン・キホーテとサンチョ・パンサが周りの人間に愛されている感じがある。
ある意味、前篇は、「愚か者達」をみんながよってたかって苛めている感じがするが、後篇は、「愛すべきバカ達」を皆が良い意味で可愛がっている感じがする。

さらに、ドン・キホーテもサンチョ・パンサも正義感にあふれ、言っていることも非常に素晴らしいことばかりで、感動する。サンチョ・パンサが、公爵の悪ふざけで、ある町の領主になるのだが、領主になるにあたって、ドン・キホーテがサンチョ・パンサに与える言葉も感動的だし、サンチョ・パンサの統治ぶりも非常に感動的だ。まさに言葉も行動も伴っている感じがする。

最後にこの素晴らしい巻から特に素晴らしい箇所を2箇所紹介したい。

p.129 ドン・キホーテが騎士をバカにされ、発した言葉
「騎士道の隘路に一度も踏み入ったことのないような書生や学者連によって愚か者とみなされたところで、拙者は痛くもかゆくもござらぬ。~中略~ 人のたどる道はさまざまであって、思い上がった野心の広野を行くものもあれば、卑屈にしていやしい追従の野を行く者もある。しかし拙者は、おのれの運命に導かれて遍歴の騎士道の狭く険しい道を行く者であって、その本分をまっとうするため、財貨などはさげすみ、そのかわりに名誉を追い求めるのでござる。」

これは素晴らしい言葉である。他者の生き方も認めたうえで、自分の追い求める道を行く。人間として非常に美しい生き方だと思う。まさにプラトン思想の体現者とも言える気がする。

p.291 先に書いた、ドン・キホーテがサンチョ・パンサが領主になるに当たって送った言葉。
「よいかサンチョ、お前が徳をおのれの行動の指針となし、徳義にそむかぬ行為を誇りとするならば、王侯貴族の血をひく者たちを羨む必要がどこにあろうか。血は代々受け継がれるものだが、徳は個人がみずから獲得するものであってみれば、徳はそれ自体において、血統のもちえない価値を秘めているのじゃ。」

どこかの島国の与党の政治家達に聞かせてやりたい素晴らしい言葉だ。
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ドン・キホーテ 後篇1 [文学 その他]


ドン・キホーテ〈後篇1〉 (岩波文庫)

ドン・キホーテ〈後篇1〉 (岩波文庫)

  • 作者: セルバンテス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/02/16
  • メディア: 文庫



『ドン・キホーテ 後篇』を読み始めた。
前篇があまりにも評判になり、かなり売れてしまったので、その海賊版らしき後篇が世に出回ってしまったことを受け、書いたらしい。前篇の話をうまく織り交ぜながら、様々な新しいエピソードを加えていき、話を展開している。

前篇はドン・キホーテとサンチョ・パンサが結構ひどい目にあうことが多く、その他の場面は彼らと関係のない人物達がメインとなる話が多かったのに対し、この後篇(一)では、彼ら二人が中心となって話が展開していき、前篇ほどひどいことにはならない場面が多い。これは周りの人間がドン・キホーテの狂人性を理解しているという前提で話しが進むからなのだろうと思う。

サンチョ・パンサが精神的に成長しており、彼が発する言葉が非常に含蓄があり、面白く、物語に深みを与えている。前篇よりも哲学的な感じで、読んでいて面白い。『ドン・キホーテ』という作品を世界の名作に押し上げた要因はこの後篇にあるのではないかと、一巻を読んでみて思った。前篇をパロディ化し、さらに精神性を高めたこの作品。確かに面白い。

以下、印象的な言葉をいくつか紹介したい。

p.95 サンチョ・パンサの妻テレサの言葉。
「あたしゃね、お前さん、昔から平等というのが大好きで、理由もなくお高くとまってるのが鼻持ちならないんだよ。」

p.191 ドン・キホーテの言葉。
「舞台の上と同じことが、この世の実生活においても起こっているのじゃ。現実の世界でも、ある者は皇帝を演じ、またある者は教皇になっている。要するに、舞台に登場させることの出来るあらゆる役柄、あらゆる人物が、この世で演じられているのよ。そして終末が来ると、つまり人の命が終わると、それまで各人を区別していた衣装が死によって剥ぎ取られ、人はみな墓の中で平等になるのよ。」

この二つ目の言葉は、同時代の作家シェイクスピアの「この世は舞台、人はみな役者」という台詞を彷彿とさせる。この二つは作家セルバンテスの平等主義的な考え方が非常に良く現れていると思う。

p.297
「遍歴の騎士道というのは」と、ドン・キホーテが答えた、「その内に、この世の学問のすべて、とはいわぬまでも、大半を包含している学問ですよ。したがって、これに携わる者はまず法学者にして、(中略)、また彼は(中略)神学者であらねばならぬ。・・・(中略)・・・。思念はあくまで清らかに、言葉使いは上品に、立ち居振る舞いは鷹揚に、行動に際しては勇敢に、苦難に直面して忍耐強く、困窮せる者に対しては慈悲深くあらねばなりませんが、それよりも何よりも真理の擁護者、つまり、そのために一命を失おうとも真理を守るような人間であらねばなりません。」

この騎士道の説明は、人間のあるべき姿を現していると思う。教養人であるとともに、自分の思想をもとに積極的に正義感を持って行動できる人間、それこそが騎士道であるといっている。この部分は非常に長い部分なのだがすばらしい言葉だ。ぜひ多くの人に読んでもらいたい箇所である。彼は、文人も武人もともに重要だが、どちらかといえば武人の方がすばらしい、と前篇でも後篇でも語っている。それは、武人が行動を伴っているからなのだと思う。それが次の一説によって示されている。

p.423
「これまで文が武よりも大きな世襲財産を築いてきたことはたしかであろうが、それでも武にたずさわる者にはどこか文をつかさどる者より優ったところがあり、武人にそなわっているえもいわれぬ光輝のようなものが、彼を他のすべてのものの上に立たしめるのじゃ。」

ここにはプラトンの哲人思想にも通じるものがあると思う。
これからの展開が非常に楽しみだ。
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ドン・キホーテ 前篇3 [文学 その他]


ドン・キホーテ〈前篇3〉 (岩波文庫)

ドン・キホーテ〈前篇3〉 (岩波文庫)

  • 作者: セルバンテス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/02/16
  • メディア: 文庫



『ドン・キホーテ 前篇』を読み終わった。
読む前に思っていた、ドン・キホーテが驢馬のロシナンテにのり、従士のサンチョ・パンサとともに、様々な冒険を行う、といった内容だと思っていたが、それはほんの一部で、基本的には、「ドン・キホーテ」という登場人物を使って、作者の思想を発表した作品だといえる。

作者の従軍体験、捕虜体験はじめ、文士と武士のどちらが優れているか、当時のスペイン文学界、演劇界のポピュリズムに陥ってしまった堕落ぶりなどを、ドン・キホーテはじめ様々な登場人物の口を借りて、述べている。ある一つの旅籠に修練する様々な人間達の人生模様なども、一個一個が短編小説として面白く、最後のほうは飽きずに読むことが出来た。

世界の名作文学ベスト10に入るか、といわれれば個人的にはNOだが、面白くないかといわれればそれなりに面白いとこたえるであろう。夏目漱石の『我輩は猫である』を楽しめる人間であればこの作品も楽しめるのではないか。

最後に面白い数節を紹介したい。

p.38
「真の貴族性というのは美徳のなかに在るものですから、もしあなたが、わたくしに対して当然なさらなければならないことを拒むことによって美徳を欠くことになれば、それこそわたくしのほうがあなたより貴族性において優るということになってしまうでしょう。」
これは身分違いの恋で肉体的に結ばれた女性が、そのあと貴族の男に捨てられ、再開した時に発した言葉。この作品は、身分違いの恋が多く描かれており、そうしたものを肯定的に捉えているという点で、セルバンテスは、非常に自由主義的で、進歩的な思想の持ち主だったんだなあと思う。

p.77
「大砲という悪魔がかった火器の恐るべき凶暴性を知らなかった時代こそ幸いなるかな!拙者思うに、大砲を発明した男は今ごろ地獄で、その呪わしい発明に対する報いを受けているに違いありませんわい。なにしろ奴の考案品ときたら、卑劣な臆病者に勇敢な騎士の命を奪うような機械を与え、~中略~、長生きをしてしかるべき人物の思想と生命を一瞬にして断ち切ってしまうようなことを可能にしたのですからな」
このような平和思想も垣間見え、そういった意味でも、当時としてはかなり面白い考え方をしていた人なのだろうと思う。
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ドン・キホーテ 前編2 [文学 その他]


ドン・キホーテ〈前篇2〉 (岩波文庫)

ドン・キホーテ〈前篇2〉 (岩波文庫)

  • 作者: セルバンテス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/01/16
  • メディア: 文庫



ドン・キホーテ前篇2巻を読み終わった。
1巻は、騎士道精神に狂ってしまったドン・キホーテとサンチョ・パンサが無茶なことをやり、ボコボコにされる話しばかりだったので読んでいてかなり苦しかったが、この第2巻は、彼らが出会った人々の昔語りや、そうした人たちが持っている本を皆に語り聞かせる、という形の挿話が多く、結構面白かった。『千夜一夜物語』を彷彿とさせる構成だった。プロットなどはシェイクスピアを彷彿とさせる。

とはいえ、一つ一つが短編小説のようであり、物語にどっぷり浸かれる長編小説が好きな私としてはいまいち入り込みきれない小説ではある。

この小説は物語の面白さプラス、一つ一つの言葉が箴言のようになっている、とどこかで読んだが、印象に残った場所を二つ紹介したい。

p17
「拙者は、時として愚かな連中が考えるような、人間の心を思い通りに動かしたり強制したりする妖術などこの世に存在しないということはよく承知しておる。われわれの意思はもともと自由なものであって、これを左右しうるような薬草もなければ魔術もないからでござる。~(中略)~人間の意思を勝手に強制することなど不可能なのでござる。」
フランス革命を予見したようなこの台詞。16世紀に書かれていたこと自体が素晴らしいと思う。

p115
「ドゥルシネーア・デル・トボーソも、わしがあの方をお慕いする気持ちの強さゆえに、この地上で最も高貴な王女に比肩する方であられるのじゃ。」
すべての恋愛についていえることだと思うのだが、絶対的に美しい最高の女性・男性・恋人はいない。結局、その人を愛している人間がそのことをどうどらえるかということだ。つまり矛盾するようだが、相対的に美しいということではなく、相手をみる自分の絶対的な評価の中で最高の相手であると自分がみなすかどうかが、恋人を見る際のポイントなのだと思う。このことば非常に深く、美しい。
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ドン・キホーテ 前編1 [文学 その他]


ドン・キホーテ〈前篇1〉 (岩波文庫)

ドン・キホーテ〈前篇1〉 (岩波文庫)

  • 作者: セルバンテス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2001/01/16
  • メディア: 文庫



昔、妻に誕生日プレゼントで「何か長編の小説を」と頼まれ送った本。
世界の名作上位に必ず登場する本なので一度は読んでみたいと思っていた本。

「騎士道物語」を読みすぎて、自分も騎士になろうと考え、お供のサンチョ・パンサを連れて、冒険の旅に出るお話し。
小説の手法的には、「パロディ」「メタフィクション」などなど当時としては斬新なしなものが多かったのであろうが、内容的には、今のところすごくおもしろいものではない。
同じように長編の『千夜一夜物語』はドキドキワクワク、スリル間たっぷりだったが、『ドン・キホーテ』はある事象があり、それをドン・キホーテが騎士道物語の文脈の中で捉え、とんだ勘違いを起こし、その勘違いを分からせようとするサンチョ・パンサのいうことを聞かず、その事象の中に飛び込んでいき、ぼこぼこにされて終わる、というものばかり。

それなりに面白いエピソードはあるものの、二人が肉体的に傷つけられる描写が多く、正直読んでいて辛い。
この話、かなりの長編だし、遍歴のたびに出る、といった内容紹介が多いので、かなり長い時間を扱った物語なのだろうと思っていたが、前編1は一週間も旅をしていない。

金もほとんど持たず、食料もほとんどない二人がこれからどうなって行くのか。これから面白いエピソードが登場することを期待したい。
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ハリネズミの願い [文学 その他]


ハリネズミの願い

ハリネズミの願い

  • 作者: トーン テレヘン
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2016/06/30
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



オランダ出身の作家(医師兼)のトーン・テレヘンの『ハリネズミの願い』を読んだ。
ブックオフや普通の本屋にも結構置いてあり、あの小川洋子さんオススメということをみて一度読んでみても良いかなと思い、図書館でほかの本を借りるついでに借りてみた。

ストーリーはいろいろなところに書いてあるので良いと思うが、ハリネズミがほかの動物を家に招待してお茶を飲もうとするのだが、いざ誘おうとするといろいろ考えてしまうという話。

確かに、哲学的なところもあり、考えさせられるないようなのだが、正直退屈だった。最後の救いがやってくる場面までがとにかく長い。結構飛ばし読みしてしまった。

そこまで面白い本なのだろうか。。。
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令嬢ユリェ [文学 その他]


令嬢ユリエ (岩波文庫)

令嬢ユリエ (岩波文庫)

  • 作者: ストリントベルク
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1989
  • メディア: 文庫



ストリンドベリ(ストリントベルク)の『令嬢ユリェ』が岩波文庫から復刊されるということで数ヶ月前に購入した。
数年前、白水社から『ストリンドベリ名作集』なるものが「書物復刊」で復刊され、購入しようがどうか迷っていたのだが、ストリンドベリは女性差別主義者だった、というのをどこかでみて買うのをやめた。
が、今回、岩波から復刊されることを目にし、この『令嬢ユリェ』のあらすじを調べたところ、身分違いの恋を描いた戯曲ということでそれなりに面白そうだったので買った。

字が旧字体で非常に読みづらく、はじめは何なのだが良くわからないのだが、話が展開していくにつれそれなりに読みやすくなっていく。
登場人物はたったの三人。
ユリェ   貴族の娘
ジャン   召使の男
クリステル 料理人の女

はじめの場面で、ジャンとクリステルが婚約関係にあり、それなりに仲が良いことがわかる。さらに、令嬢ユリェは最近、許婚との婚約が破棄されたことが分かる。
夏至のお祭りの日で、令嬢の父は不在。召使が踊り騒いでいる。そんな中、ユリェは召使のジャンをダンスに誘い、さらに駆け落ちするよう誘う。ジャンは当然断るが、小さい頃、偶然見かけたユリェに恋心を抱いていたことを打ち明ける。
二人の、感情と理性が行ったり来たりしながら、最後は自殺を仄めかすような(実際自殺したのか?)描写で終わる。

たしかにユリェの考え方は新しく、現代的で、ジェンダーを無視した育て方をされ、自由な思想を持っているのは分かるのだが、短いせいもあるのかもしれないが、すべてが中途半端で生煮えのまま終わってしまっている感が否めない。

短いので再読の機会があれば、もう一度じっくり読んでみたいとは思うのだが、正直もう一歩の作品だった。
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王書 [文学 その他]


王書―古代ペルシャの神話・伝説 (岩波文庫)

王書―古代ペルシャの神話・伝説 (岩波文庫)

  • 作者: フェルドウスィー
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1999/04/16
  • メディア: 文庫



フェルドゥスィーの『王書』を読み終わった。
これも仕事で、存在を知ることにならなければ、生涯読むことも知ることもなかった作品だろう。

ペルシャがイスラームに侵略されたとき、ペルシャの愛国心を高めるために作られた作品らしい。
が、そこまで自国万歳という感じではなかった。

神話⇒伝説⇒歴史という感じになっており、聖書などと同じように、神話世代の人々は何百年も生きる。が、そんなに荒唐無稽なことは書かれておらず、普通の小説と同じような感じで読める。歴史時代に入ってくると、かなり人間臭くなり、7つの冒険を強いられる王子や、義母から言い寄られる王子の話など、アラブの『千夜一夜物語』やドイツの『ニーベルンゲンの歌』にあるような話が入ってくる。

世界各国、物語の根幹となるようなストーリーは結構似ているんだなあ、と感じた。

そこまで退屈ではなかったが、すごく面白いかというとそんなこともなかった。

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エレンディラ [文学 その他]


エレンディラ (ちくま文庫)

エレンディラ (ちくま文庫)

  • 作者: ガブリエル ガルシア=マルケス
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1988/12/01
  • メディア: 文庫




ガルシア・マルケス著『エレンディラ』を読み終わった。
読むべき長編小説に必ず出てくる『百年の孤独』の著者が書いた短編集。

非常に読みにくかった。
海、風、死、バラなどがテーマで、なんとなく統一感を持った短編集なのはわかったが、浮遊感・ふわふわ感があり、掴みどころのない小説ばかりで、非常に疲れてしまった。名前もあまり親しみのない名前ばかりで、男か女かもわからずなかなか登場人物が覚えられず、結構大変だった。

もう一歩な作品集だった。
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阿Q正伝 [文学 その他]


阿Q正伝・狂人日記 他十二篇(吶喊) (岩波文庫)

阿Q正伝・狂人日記 他十二篇(吶喊) (岩波文庫)

  • 作者: 魯 迅
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1981/02
  • メディア: 文庫



名著といわれている『阿Q正伝』を読んだ。さっぱり意味がわからなかった。

ギリシア悲劇 2 [文学 その他]


ギリシア悲劇〈2〉ソポクレス (ちくま文庫)

ギリシア悲劇〈2〉ソポクレス (ちくま文庫)

  • 作者: ソポクレス
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1986/01
  • メディア: 文庫



『ギリシア悲劇』のⅡ巻を読み終えた。これで筑摩文庫から出ているギリシア悲劇シリーズ全4巻を読み終えた。
普通であればⅠ~Ⅳと読みすすめて行くのだが、
1、アイスキュロス
2、ソフォクレス
3、エウリピデス
4、エウリピデス
なかでも最も興味あるソフォクレスを最後の楽しみに取っておいた。アイスキュロスはそんなに面白くはなかったが、解説などを読むことでギリシャ悲劇のテーマの人物関係などを何となく把握することが出来た。エウリピデスもそれなりにはおもしろかった気がするが、そこまで熱中して読んだ感はなかった。

そして最後のソフォクレス。とにかく面白かった。他の2名の作品と同じく全体合唱(群読?)のコロスの部分は結構読み飛ばしてしまったが、一人ひとりの性格描写、話の展開などがとにかくうまく、どんどん引き込まれた。
中でもやはり面白かったのは「オイディプス」3部作。
『オイディプス王』『コロノスのオイディプス』『アンティゴネ』だ。実の父親を殺し、実の母親と結婚し、その国の王となり、子をもうけ、自分の国を退廃させてしまうオイディプス。
この作品は一度読んだことがあったのだが、ぜんぜん話の展開が覚えていたものとは違っていた。オイディプスは話の始まる時点で王様になっており、段々と自分のやったことが明らかになっていく、という展開だった。真実がわかる過程のオイディプスの真理・正義を求めていく姿がある種感動的であった。その後に続く『コロノス~』『アンティゴネ』に登場する娘アンティゴネの美しい心も非常に読んでいて気持ちよく、最終的に正義を求める人間たちが救われないのが、非常に残念な感じだった。

前も書いたと思うが、シェイクスピア悲劇が、ギリシア悲劇に非常に影響を受けているのが、良くわかる。西洋の古典と言われることがよくわかる作品群でとても面白かった。

ギリシア悲劇 4 [文学 その他]


ギリシア悲劇〈4〉/エウリピデス〈下〉 (ちくま文庫)

ギリシア悲劇〈4〉/エウリピデス〈下〉 (ちくま文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1986/05
  • メディア: 文庫



『ギリシア悲劇 4』を読み終わった。エウリピデスの後期の作品を収録した本。トロイア戦争を扱った作品が多かった。戦争を招いた、ヘレネを悪女と捉えず、神様に人生を翻弄された淑女のように描く作品があり、結構面白かった。
アガメムノンの子どもたちである、エレクトラ・オレステスの母親とその愛人たちへの復讐物語が特に面白かった。
どの観点で観るかによって、正義に対する見方も違うのだ、ということも考えさせられる作品も多く、衆愚の怖さなども描かれており、ただ面白いだけでなく、深く物事を考えさせる、という部分もかなりある。
本当に優れた、古典と呼ばれるにふさわしい作品群だと思う。

エウリピデスの話の展開に慣れたのか、訳している人たちがうまいのかわからないが、上巻よりも読みやすい作品が多かった。

ギリシア悲劇 3 [文学 その他]


ギリシア悲劇〈3〉エウリピデス〈上〉 (ちくま文庫)

ギリシア悲劇〈3〉エウリピデス〈上〉 (ちくま文庫)

  • 作者: エウリピデス
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1986/03
  • メディア: 文庫



『ギリシア悲劇 3』エウリピデスを読み終わった。アイスキュロスと違いかなり読みやすく、内容も入って来やすかった。扱っている題材も、トロイア戦争関係のものが多く、人物関係もある程度わかりやすかった。ヘラクレスに関する劇も多く、ヘラクレスのことも結構わかった。

劇の内容や展開など、シェイクスピアや後のヨーロッパの作家に与えたであろう影響が随所に見られ、ギリシア・ローマが古典と呼ばれる理由がわかった気がする。

結構貞淑な妻、信念に基づいた行動をする女性が多く出てきて面白かった。

2000年以上も前に作品なのに、現代の人間に通じる部分も多く、今読んでも面白い展開といい、本当にすばらしい作品だと思う。

ギリシア悲劇 1 [文学 その他]


ギリシア悲劇〈1〉アイスキュロス (ちくま文庫)

ギリシア悲劇〈1〉アイスキュロス (ちくま文庫)

  • 作者: アイスキュロス
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 1985/12
  • メディア: 文庫



ちくま文庫から出ている『ギリシア悲劇〈1〉』を読み終わった。
以前、ソフォクレスの『オイディプス王』を読んだ事があり、結構読みやすかったので、この本も結構すらすら読めるかと思っていたが、そんなことはなかった。
「コロス」(コーラスの意?)という集団で台詞を言ったり歌ったりする登場人物(達?)がすべての作品に出てくるのだが、彼らの部分が非常に読みづらい。私は現代日本の作品、英語の作品、古文作品、翻訳作品、どんな分野の作品においても、詩というものが非常に苦手だ。とにかく意味を解釈するのが時間がかかってしまう。私は本をじっくり読むというよりは、内容を理解しながらさっと読むという読み方をするので、詩のように抽象度が高く意味内容をあまり直接的に伝えず、省略の多いようなものが文中に出てくるとどうしてもしっかりと読むことが出来ない。
この「コロス」が物語の背景や情景描写をする場面が多いのだが、これが神々が出てきたり、良くわからない地名や人名が出てきたりでほとんどよくわからない。物語の最初に要約のような形で大まかなあらすじを示してくれているので、それなりに理解できたが、この要約と後ろの解説がなければ、ほぼ理解できなかったであろう。

有名な「プロメテウス」の話や「オイディプス王の息子たち」の争いの話などテーマとしては面白いのだが、やはり意味がわからない部分が多かったのでいまひとつ楽しめなかった。実際劇としてみたら面白いのかもしれないが・・・。

とはいえ、解説などを読むと、内容は非常に面白く、広がりのあるテーマなので、西洋の人々が古典としてあがめてきたのもわかるし、テーマを借用し色々な形で上演され続けているのも判る気がする。

千夜一夜物語拾遺 [文学 その他]


アラビアンナイト  バートン版 千夜一夜物語拾遺 (角川ソフィア文庫)

アラビアンナイト バートン版 千夜一夜物語拾遺 (角川ソフィア文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 角川学芸出版
  • 発売日: 2013/10/25
  • メディア: 文庫



『千夜一夜物語拾遺』を読み終わった。
そもそもあの長い『千夜一夜物語』を読み始めたのは、「シェラザードと王様」「船乗りシンドバッド」「アラジンと魔法のランプ」「アリババと40人の盗賊」の4つの話を読みたかったからで、全集を買ったのは、自分が読みたい物語が一つでも抜けていたら嫌だからという理由で、筑摩文庫の全11巻を買ったのだが、実は「アラジン」「アリババ」はこの11巻に入っていないと知り、後からこの本を買った。

「アラジン」はディズニー・アニメと違い、アラジンが自分で自分の道を切り開く、というよりは、周りの人間や魔人に助けられて王様になっていくという感じで、『千夜一夜物語』の本編の多くの作品と同じく、あまり主人公が魅力的ではない。「アリババ」の物語も「アリババ」本人というよりは、奴隷女性の活躍によって40人の盗賊を退治する感じで、こちらもあまり主人公は活躍しない。
『千夜一夜物語』は女性に対して差別的な描写が少なくないが、女性は性に対しても、自分の人生に対してもとても積極的で、自立的で、さらに皆とても知的で、魅力あふれる。そういった意味でとても現代的だ。

これで、拾遺集も含め、バートン版『千夜一夜物語』を読み終わった。非常に長い付き合いだった。

2月は自分の誕生日で、紀伊国屋カードがダブルポイントということでかなりいっぱい本を買い込んでしまった。硬い本も多いので、じっくり読みたい。

千夜一夜物語 11 [文学 その他]


バートン版 千夜一夜物語11(全11巻) (ちくま文庫)

バートン版 千夜一夜物語11(全11巻) (ちくま文庫)

  • 作者: 大場 正史訳
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2004/08/10
  • メディア: 文庫



ついに「千夜一夜物語」を完読した。途中かなり飽きていたが、最後は若干盛り返し、ある程度楽しんで終われた。

全体を通して思うのは、男の主人公が基本的にはどうしようもないということだ。親からもらった遺産を、遊びまくって使い尽くし、惨めな状態になったところを、いろいろな人や自然、魔人などに助けてもらい、美しい女性を手に入れて終わる、みたいな物語が非常に多い。

それに対して、女性は、性的に奔放すぎて読んでいて「ちょっとどうなの?」と思ってしまう人物もかなりいるが、それなりに、自分のはっきりした意志を持っており、それを実現させようと努力する。

この最終巻は、はじめは惨めな境遇にいた男が、信心によって、成功を遂げる、というパターンがおおかった。出てくる女性も結構一途な女性が多く、読んでいて気持ちのいい巻だった。

最後に、シェエラザードと王様が出てきて大円段。シェエラザードと王様はこの1001夜の間に3人の子どもをもうけたということなのだが、基本的に一日一話だとしたら、ちょっと無理なんじゃない、と思うのと、出産の日やその後はこんな話してられないでしょう、と思うのもある。ちょっと無理やりな感じがしてしまった。せめて1001夜目に子どもが産まれてめでたしめでたし、とかにすれば良いのになあと思ってしまった。

まあ、もう一度全部を読みたい本ではないことは確かだ。

千夜一夜物語 10 [文学 その他]


バートン版千夜一夜物語10 (ちくま文庫)

バートン版千夜一夜物語10 (ちくま文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2004/07/08
  • メディア: 文庫



千夜一夜物語10巻を読み終わった。

「マスルールとザイン・アル・マワシフ」はユダヤ人の妻と、アラブ人男の不倫の話。この話、結局、不倫している二人が結ばれ、もともとのユダヤ人夫が悪者みたいな感じで終わる。話としては良くまとまっているし、読んでいて面白かったのだが、なんとなく納得がいかなかった。結婚という形ではなくて、本当の愛こそがすばらしいんだ、ということかもしれないが・・・。夫の設定をユダヤ人としているあたりも、差別意識が垣間見えちょっと嫌なかんじの作品だった。

「アリ・ヌル・アル・ディンと帯作りのミリアム姫」
こちらは、キリスト教国のミリアム姫がふとしたことから、アラブ人に捕まり、奴隷として売られるのだが、男に汚されることなく(買った男が不能者だったため)、貧乏だが美しい男性と一緒になるはなし。その後様々な困難に出会うが最後に二人は結ばれるという話。ミリアム姫は大変な人生を送るのだが、結局結婚した美しい男としか肉体関係を結ばない、というところが、前作よりも物語として美しく、こちらはそれなりに面白かった。

美しい男女関係を描いた小品が数作品あり、最後は
「インドのジャリアッド王と宰相シマス」
王様を戒めたり、誘惑したりするために、「~ような話が伝わっております」という寓話を織り交ぜる、数巻前に使用されていたような手法を取り入れた作品。まあ、それぞれの話がそれなりに面白く、ある程度楽しめた。

この巻も一つ一つがある程度の量があったので、まあまあ楽しめて読めた。
いよいよ次が最終巻。かなり飽きてきていて、早く他の作品が読みたいのだが、あと一巻なのでがんばろうと思う。

千夜一夜物語 9 [文学 その他]


バートン版 千夜一夜物語9 (全11巻) (ちくま文庫)

バートン版 千夜一夜物語9 (全11巻) (ちくま文庫)

  • 作者: 大場 正史
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2004/06/10
  • メディア: 文庫



『千夜一夜物語』の9巻をだいぶ前に読み終わっていたのだが、書くのを忘れていた。
だいぶ前と入っても、2週間は経っていないと思うのだが、内容をほぼ忘れてしまっている。
この『千夜一夜物語』それぞれの話を読んでいるときは結構面白いしある程度没頭できるのだが、すぐに忘れてしまう。同じような内容の話が多いからなのか、内容が薄いからなのか、私の読みが適当なのか、。。。

とはいえ、この巻も、一つ一つの話がそれなりに長く面白かった。
この巻は皆、自分とは異次元の世界の超美女をひたすらもとめて苦難が多い旅に出る男の話。正直、男にそんなに魅力がなく、運命や魔人、いろいろな人々の助けでいとしの女性にたどり着く。ヒロインもヒーローも感情移入できる性格ではないところが、内容をすぐに忘れてしまう理由なのかもしれない。ある意味、出来事がひたすら続くだけなので、心に残らないのだろう。

とにかく、今第10巻を半分以上読み終わっているし、ここまで来たら、11巻を今年度中に完読したい。

千夜一夜物語 8 [文学 その他]


バートン版 千夜一夜物語〈8〉 (ちくま文庫)

バートン版 千夜一夜物語〈8〉 (ちくま文庫)

  • 作者: リチャード・F. バートン
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2004/05
  • メディア: 文庫



『千夜一夜物語』8巻を読み終わった。久しぶりに満足感のある、面白い話が多くあった。
「やりて婆のダリラー~」と「カイロの盗神アリ~」の二つは、気のいい大泥棒の話のような感じであり、日本でもテレビ・アニメ化したら大ヒットしそうな、痛烈爆笑物語のような感じで非常に楽しめた。悪役も含め憎めない人物ばかりで、『千夜一夜物語』の懐の深さを改めて感じた2作だった。

「アルダシルとハヤット・アル・ヌフス姫」 は以前、同じような話が収録されているらしいのだが、読んだ本のあらすじ、内容をすぐ忘れてしまうわたしは、この純愛ものの作品を十分楽しめた。(一応忘れる可能性が低くなるのでこのブログを書いているのだが・・・)。
「海から生まれたジュルナールとその子のペルシャ王バドル・バシム」 
これも「人魚姫」のイスラムバージョンみたいな感じで、こちらも純愛もので、とっても楽しめた。

本当に面白い巻だった。この巻は前巻からの続きが入っているが、その点を除けば一冊かって読んでも十分楽しめる内容となっている。

お勧めの巻だ。

千夜一夜物語 7 [文学 その他]


バートン版 千夜一夜物語 7 (ちくま文庫)

バートン版 千夜一夜物語 7 (ちくま文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2004/04/08
  • メディア: 文庫



『千夜一夜物語』7巻を読み終わった。しばらく、説話集のような長短編が続いていたので、100ページ前後のそれなりの長さのある作品ばかりが入っていたので結構楽しめた。
有名な「船乗りシンドバッド」が入っている巻で、どんな話だろうと結構わくわくしていたのだが、金持ちが道楽で世界を見て回るたびに船で出て、船が難破し、紆余曲折を経て金持ちになって帰ってくる、という話が7個くらい並べられているだけで、はじめは結構引き込まれて読んでいたが、結構同じパターンで、最後はやっつけな感じもあった。
「真鍮の都」「ジュダルとその兄」は、イスラム教をしっかり信仰していれば良いことがある、というような話。トルストイの民話集に出てきそうな話で、それなりにどちらも面白かった。
「女の手管と恨み」は、女にだまされた王子を処刑から助けだそうと、大臣たちが「どれだけ女というものがひどい生き物なのか」ということを王様にする話が並んでいる話。王子をだました女も「どれだけ男がひどいか」ということを王様に訴える話をし、これが順番に並べられており、それなりに興味深い。
最後の「ガーリブとその兄アジブの身の上話」は次の巻に続いている。出てくる男たちがみな屈強で、倒す相手がどんどん味方になっていき、勢力を拡大していくあたりが、「アーサー王物語」や「三国志」を彷彿とさせる。

ちょっと『千夜一夜物語』に飽きていたところだったが、この巻でちょっと興味を取り戻せた感じだ。

千夜一夜物語 6 [文学 その他]


バートン版 千夜一夜物語 6 (全11巻) (ちくま文庫)

バートン版 千夜一夜物語 6 (全11巻) (ちくま文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2004/03/12
  • メディア: 文庫



『千夜一夜物語』6巻を読み終わった。この巻も短編が多く、長くても百数ページで、かなり飽きてきた。
宗教的な善行を促すような話も多く、わくわく感がかなり少ない。
最後の話「巨蛇の女王」はまあまあだが、はじめの方の面白さはない。
次の巻は有名な「船乗りシンドバッド」が出てくるっぽいので楽しみにしたい。

千夜一夜物語 5 [文学 その他]


バートン版 千夜一夜物語 5 (ちくま文庫)

バートン版 千夜一夜物語 5 (ちくま文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2004/02/11
  • メディア: 文庫



5巻を読み終わった。この巻は短編ばかりで、あまり没頭して読むことができなかった。性的な短編が多く、中には獣姦なども出てきたりはしたが、そこまでえぐくもなく、それなりに純愛ものが多かったので、読んでいて嫌な感じにはならなかった。が、やはり短編は苦手だ。

中では、
○アリ・シャルとズムルッド
○黒檀の馬
が純愛を描いており、相変わらず無理な設定もあるが、結構楽しめた。
最後の
○オマル・ビン・アル・ハッタブ教主と若いバタヴィ人
は太宰治の『走れメロス』と同じような筋で結構面白かった。

千夜一夜物語 4 [文学 その他]


バートン版 千夜一夜物語 4 (ちくま文庫)

バートン版 千夜一夜物語 4 (ちくま文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2004/01/11
  • メディア: 文庫



『千夜一夜物語』の第4巻を読み終わった。一冊約600ページ以上、ある本なのだが、一月3冊くらいのペースで読めるかなあ、と予想していたが、大体月2冊ペース。洋書と併読しているせいもあるのかもしれないが(通勤の行きは洋書、帰りは和書)・・・。

○カマル・アル・ザマンの物語
この話がこの本の6割を占めている。非常に美しい王子と王女がいて、離れた国にいて、どちらも「結婚など決してしない」と親に主張。魔神の力によって出会った二人は見た瞬間恋に落ちるが、結ばれることなく、魔神によって離れ離れにされてしまう。なんだかんだあって二人は出会い結婚するのだが、再び運命のいたずらによって引き離される。そしてこれもなんだかんだあって再び結婚し、子供をもうける。王子は別の女性とも結婚しこちらも子供をもうける。後半はこのふたりの王子が出会う苦難の物語。最後は登場人物が全員再登場し、大団円を迎える。
この話の中に挿入された「ニアマー・ビン・アル・ラビアとその奴隷娘ナオミの話」は「千夜一夜物語」にしては珍しく純愛もので、けっこう気持ちよく読めた。

○アラジン・アブ・アル・シャマトの物語
金持ちの商人の息子が、友達にたきつけられ旅に出て苦難に出会うが、そこで偶然形式上の結婚することになった女性と、本当に恋に落ち、二人で逃げ、その後様々な苦難に出会うが再び再開し幸せに暮らすという話。まあそれなりに面白い。

このあとは数ページから数十ページの短い話が続く。「円柱の多い都イラムとアビ・キラバーの子アブズラー」は聖書の「バベルの塔」の話を彷彿とさせる。があとはあまり面白くない。

若干、飽きてきた。何か新しい趣向の物語が登場しないかなあ。

千夜一夜物語 3 [文学 その他]


バートン版千夜一夜物語〈3〉 (ちくま文庫)

バートン版千夜一夜物語〈3〉 (ちくま文庫)

  • 作者: リチャード・F. バートン
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2003/12
  • メディア: 文庫



『千夜一夜物語』の第3巻を読み終わった。
第2巻から続いていた「オマル・ビン・アル・ヌウマン王とふたりの息子シャルルカンとザウ・アル・マカンの物語」が半分以上を占めていた。この話だけで600ページを超える長編でかなり読み応えがあった。
十字軍の頃のイスラム教とキリスト教の対立を描いた作品と思われ、結構戦闘場面も出てきて、戦闘場面が苦手な私には若干辛い部分もあったが、結構恋愛話を軸に話が進んでいくのでそれなりに楽しめた。「オリエンタリズム」ではないが、十字軍にせよなんにせよ、基本的に西洋(キリスト教)的視点でいろいろな物事を見ているので、イスラム教側からの視点でこの話を読めたのは結構貴重な経験だった。
とはいえ、キリスト教側の王の娘をレイプしたイスラム教の王様に対し、恨みを抱いたその娘の祖母がイスラム教側の王様を騙して毒殺するのだが、その祖母が悪役として終始描かれているのは若干違和感があった。2巻でもそうだったが、王様の息子も平気で零落していくし、王様の娘だろうが、平気で危ない目に遭うし、ムチで叩かれるし、結構凄まじい内容だった。知らずに近親相姦に陥ってしまう、という話も、西欧や北欧の神話などにはよく出てくるし、結構世界中で同じような話が民間伝承として伝えられていくのだなあと思った。
この話は、今までのような話の中に話が入り込むというようないりこ構造があまりなかったのだが、最後の方で頻発したが、それも登場人物・物語に関わった人物を全て最後に登場させよう、物語を解決さえようという意図があり、小説として非常に優れた作品だなあ、と思いはしたが、若干無理やりな感じもなくはなかった。

この長い話が終わると、動物たちが主人公の「イソップ寓話集」のような短い物語が続く。やはり短編は苦手。まったく入り込めなかった。

そして最後に「アリ・ビン・バッカルとシャムス・アル・ナハルの物語」という王様の妾とある国の王様な親戚の若い男の悲恋物語。主人公のふたりの性格描写があまりなく、ふたりの恋愛に感情移入できないので、終始客観的に読んでしまい、あまり面白くなかった。

第1巻ではけっこう魔人が登場し、第2巻では体のどこかが不具なものがけっこう登場し、第3巻では寓話集みたいなものと、何となく大きな流れがあるんだなあと掴み始めてきた。まだまだあと8巻もあるが飽きずに読み切りたいと思う。

千夜一夜物語 2 [文学 その他]


バートン版 千夜一夜物語 2

バートン版 千夜一夜物語 2

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2003/11/11
  • メディア: 文庫



『千夜一夜物語』第2巻を読み終わった。
結構短めの話を積み重ねていた第1巻とは違い、結構長編が多かった。
第1巻からの続きの「せむし男の話」は結局自分の行いの悪さによって体のどこかが不自由になってしまう話で、それぞれはそれなりにドラマチックではあるがそこまで面白くはなかった。
「ヌル・アル・ディン・アリと乙女アニス・アル・ジャリスの物語」も波乱万丈の人生で読んでいて飽きないのだが、何故大臣の息子やその妻がそこまで零落しなくてはならないのかというほど悲惨になっていく物語。まあ、零落していく理由が息子のどうしようもない行いのせいなので良いとは思うが。最終的にこんなにどうしようもない男でも、容姿が美しいおかげで王様に可愛がられるようになるというハッピーエンドもどうかと思うが・・・。
「恋に狂った奴ガーニム・ビン・アイユヴの物語」これはシェイクスピアの悲喜劇を彷彿とさせる非常に面白い物語だった。もちろんところどころ無理やりな感じの部分もあるが。この『千夜一夜物語』にはめずらしく、ものすごい綺麗な女性が隣で寝ているのに、それが「王様の妾」だということが分かっているので手をつけないという高潔(臆病?)な男性が主人公なので読んでいてそれなりに気持ちがいい。まあ例のごとくどんどん零落していき、何故かこの高潔な男が、自分の最愛の妻を、ただ苦しい時に魚をご馳走してくれたから、という理由だけで、その男に渡してしまおうとする行為が意味がわからないが・・・。まあ何にしろ最終的には、めでたしめでたしで良いのではないだろうか。
最後の「オマル王と二人の息子の物語」は非常に長く、第3巻に続いていく。近親相姦あり、強姦あり、毒殺アリ、かなり残忍な感じなのだが、主人公(?)の双子の兄妹の心が美しいので読んでいてそこまで嫌な気分にはならない。

何にしろ、女性がかなり酒を飲み酩酊してしまう場面が多く出てくるこの物語。西洋、日本の小説では、男が酒によってしまう物語は多くても、女性がそうなる物語はあまりない気がする。そのへんが結構興味深かった。

千夜一夜物語 1 [文学 その他]


バートン版 千夜一夜物語 第1巻 シャーラザットの初夜 (ちくま文庫)

バートン版 千夜一夜物語 第1巻 シャーラザットの初夜 (ちくま文庫)

  • 作者:
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2003/10/13
  • メディア: 文庫



 昨年、『千夜一夜物語』の第一巻だけを買って読んだ。去年の夏に国際ブックフェアで残りを買おうと思っていたが、昨年度は売っていなかった。
 が、今年は売っていた。Boxセットだった。お店の人と交渉し2巻から11巻までバラ売りしてくれないかと頼んだが、断られた。
 しょうがないので、箱もついているしいいやと思い、全巻買った。悔しいのでもう一度1巻から読み直した。約1年半前に読んだはずなのに覚えていない話とかも結構有り、新鮮な気持ちで読めた。
 人間の欲望の果てしなさ、そして欲望を追求することに伴う罰、のようなものがしつこいばかりに描かれている。これを読むと女性が結構淫乱な感じで描かれている。男性目線で書いたものだからなのか、これが出来た頃のアラブ世界の女性はこういう感じだったのか、ただ単に物語を面白くするためのものなのか、よくわからないが、結構興味深い。

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