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不倫と正義 [その他 本]


不倫と正義(新潮新書)

不倫と正義(新潮新書)

  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2022/04/18
  • メディア: Kindle版



電車広告で目にし、読んでみたいと図書館で予約し、数ヶ月経ってようやく届いて読めた本。
ここ数年、芸能人が不倫をして何故か謝罪会見を公に行い、芸能界から追放されるといった状況に違和感をずっと感じてきた。

確かに不倫というのは、好ましいことではないのだが、ある程度当事者同士の問題であり、周りが介入することではないと思うのだ。恋愛感情というものは、理性でコントロールしきれないものであり、アイドルの「恋愛禁止」といったものにも非常に違和感を感じる。

この本の二人は、不倫を擁護しているわけではなく、私と同じように何故私的な問題を公の問題とするのかというような話で議論を進めている(と思う)。

二人共女性で、女性の視点から不倫というものを論じていてとても興味深かった。

p.161 中野
「決め事をしていない夫婦のほうが長続きするという調査があるんですよね。これは、婚前契約書についての調査だっけな。あまり細かくいろいろ物事を決めると、それが相手を糾弾するきっかけになっちゃうんですよね。」

p.180 三浦
「私は、結婚生活においては利他的であることが秘訣だと思っているんですよね。先ほどの浮気を許容するかしないかみたいなことも、なぜ言葉に出さないほうがいいのかと言うと、それはやっぱり思いやりと尊重の問題だから。あるいは根本的な信頼があるかないかの問題。損得勘定をしだしたら夫婦関係は悪くなるばかり。」

他にも、夫婦別姓について論じており、夫婦別姓には賛成だが、そうなった場合、子供の苗字が夫側のものになることが圧倒的に多くなる可能性があり、そうするとせっかく崩壊しかけていた「家」制度みたいなものが、逆に復活してしまうのではという指摘には、なるほどなあ、と思った。

刺激的で面白い本だった。
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少女のための海外の話 [その他 本]


少女のための海外の話

少女のための海外の話

  • 作者: 三砂ちづる
  • 出版社/メーカー: ミツイパブリッシング
  • 発売日: 2020/08/27
  • メディア: 単行本



勤務先に、小さい出版社が共同で作った各教科向けの出版物案内が届いており、英語科のものだけでなく色々な科の案内物も見ているうちに見つけた本。三砂ちづるさんの本は色々読んで面白いと思っていたし、開発教育学の名著とされる『被抑圧者の教育学』の新訳も読んだりしていて、内容も興味深そうなので図書館で早速借りて読んでみた。

自分の人生をたどりながら、海外に行くこと自体、海外に行く時役立つもの、外国語の学び方、国際協力の仕事などを優しく説明している。確かに中高生にはとても良い内容だと思う。

しかも、大学で教えているとは言え、大学だけで生きてきたのではなく、海外青年協力隊、ロンドンへの留学、アフリカなどでのフィールドワークなど、様々な経験に根ざした話でとてもわかりやすく、しかも浮いた感じのない地に足のついた内容でとても良かった。

pp.10~11
「この国では、「大きくなったら何になる」というのは、大人が子どもに知り合ったときに、まず、する質問です。
 あなたの夢は何ですか、とか、大きくなったら何になりたいですか、とか、大人たちはみんああなたに質問する。それってあたりまえのことのように思っているけれど、わたしが幼い子ども二人を育てるときに住んでいたブラジルでは、子どもたちはそんな質問は、されていませんでした。
 子どもはこどもに今の時代を楽しむことこそ、そしていま、この時間を精一杯生きることこそ、大切だと思われていました。」

日本では、子どもを大切にしてそうで、彼らの本質的な部分を大切にしていないんだなあ、ということを感じさせられた一節だった。


p.18
「どんな外国でも、外からどんなふうに見えていてもそこには普通の暮らしがある。そういう想像力をいつも持つことはけっこう大切なことなのですね。」

我々が海外の国々に対してステレオタイプを持ってしまうことを戒める一節。本当に大切だと思う。


p.110
「最近は、小学校から英語の授業があるそうですね。あなたも中学校や高校で英語の基礎をしっかり学べば、機会があれば、いつでも話せるようになります。
日本の学校でいくら英語を勉強してもしゃべれるようにならない、とか言われたりしますが、幼いころではない、ある程度大きくなってからの語学の習得で、いちばん大切なのは、やっぱり基礎をきちんと学ぶことなのです。」

こうした実際に英語を使って働いている人々の意見を、文部科学省は積極的に聞き入れ、一般の人々にちゃんと紹介し、まともな世論形成をしてもらいたいものだ。


p.122
「「教室で文法から学ぶ」「現地の言葉しか話していない環境で慣れながら学ぶ」。この二つの外国語を学ぶ方法の、どちらで学んでも、たしかなことがあります。「自分の言葉で話せないことは外国語では話せない」ということです。まことにあたりまえのことなのですが、あなた自身が、自分の言葉、つまりは、日本語で言えないことは、外国語では言えません。」

本当に当たり前のことだ。

外国語学習なども紹介されており、勉強になる本だった。
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ことばの教育を問い直す 国語・英語の現在と未来 [その他 本]


ことばの教育を問いなおす (ちくま新書)

ことばの教育を問いなおす (ちくま新書)

  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2019/12/06
  • メディア: 新書



大村はまという教育者の、教育実践、思想を軸に、刈谷夏子が主に国語教育&実践、鳥飼玖美子が主に英語教育&理論、刈谷剛彦が主にそれらをまとめる、感じで本が構成されている。対話、対談という形ではなく、それぞれが一人で書いたものを、別の人が読み、それを踏まえたうえでまた書いていくという「大書」形式という書簡形式のような感じの構成になっている。

ここ十数年続いている、おかしな教育改革を真正面から批判しており、いつも書くが、こうしたまともな反論が多数なされているのに、一向に「教育改革」がまともな方向に改革・改善されないのはなぜなのだろうと思ってしまう。

p.26
「本気になって、主体的にことばを使っていない子どもに、何を教えても、私の過去のラジオ体操みたいなもので、狙っているだけの効果を生まないでしょう。ラジオ体操も、勉強も、ちゃんと意識してやらないと無駄が多いというわけです。
 子どもを主体的な姿にさせ、本気のことばを引き出すことが、国語力が育つための基本的な条件です。」

これは文部科学省の人だけではなく、同僚の教師でも分かっていない人が多い。ひたすらドリルワークをさせていれば語学は身につく、と考えている人が多数いるみたいだが、意識をしないで行う学習ほど時間と労力の無駄なものはない。それは自分が経験して一番よくわかっている。これがわからない人は、恐らく相当意識高く、小さい時から大人になるまで勉強し続けた人なのだろうなあと思う。


p.37 大村はまの言葉
「ことばを育てることは、こころを育てること、
 人を育てること、教育そのものである」

同感だ。


p.39
「大村はまの実践を支えた教育の「目的」や「理念」は、現在の英語教育に最も欠けているものだと思います。何のために英語を学ぶのかの「目的」が不明確なまま、何となく「英語を話せるようになりたい」という願望に引きずられ、「小さい頃から英語を教えれば話せるようになる」という科学的根拠のない思い込みが英語教育を歪めている、と考えるからです。」

pp.46~47
「日本人がなかなか英語に熟達しないことを揶揄して「アメリカに行けば赤ん坊でも英語を喋っている」と言う人がいますが、これは、母語である英語を獲得しているアメリカの赤ちゃんと、外国語である英語を意識して学習せざるをえない日本人とをごっちゃにしている乱暴な議論です。」

気分や思い込みで議論を進め、重要な教育政策を歪めるのはやめてほしいと常に思う。


p.63
「教える仕事をする時、その成否を分ける最も重要な働きかけというのは、常にたいへん具体的な、微妙な、一回性のもの、ライブのものであるということを、大村は早くから実感していたようです。
 ~中略~
 一般化、抽象化を試み、「こういう時はこうすればいい」というモデルや「こうすべき」という理論にした途端に、どうしても鮮度が落ちます」

p.75
「けれども、目の前の人が体温と共に差し出すものこそが、人を(人の脳を)本気にさせ、しっかりと伝わり、受け止められるのではないか。何万年も、大事な情報はそうして伝えられてきました。IT技術の進歩に同調して、人の頭の仕組みが変質するとは思えません。生身の人を育てるのは、生身の人、という素朴なことは簡単には変わらないでしょう。」

私も授業・教育というものは一回性のもの、ライブのものであるとおもうのだ。オンライン授業、映像授業がコロナ禍により一気に一般化してもてはやされており、もうたくさんの教師はいらない時代が来る、というが、そうした時代が来たときの教育はどんなものになってしまっているんだろうと恐ろしくなる。


p.170
「ここまで議論を重ねてきて、日本人が英語を学ぶ意味合いが広々と見えてくるのを感じます。「旅先で困らないように」「道を聞かれて答えられるように」といった、よく街頭インタビューで出てくるような動機は、実はポケトークのような翻訳機器やグーグル翻訳などの登場でかなり容易に解決できるようになってきています。小学校の頃から何年もかけて英語を勉強して、覚えの悪さを嘆かなくても、翻訳機一つで旅くらいはできます。 ~(中略)~ それでも私は日本人が英語を勉強する意味合いは大きいと思います。人の言語と言語生活そのものを刺激し、拡大させるからです。受験に必要だから、などという便宜的なことではありません。」

私が普段考え、生徒・同僚に伝えていることそのままの意見だ。本当にそう思う。


p.196
「「自律性」とは何でしょうか。一言でまとめるなら、「自らの学習に責任を持つことのできる能力」です。英語を学んでも、日本語とは言語文化的な距離が遠く、簡単に使えるようにはなりません。その時に、学校や教師や環境のせいにするのではなく、自分自身で自分に合った学習方法を見つける努力が肝要になります。」

p.198
「共同学習は自律性の涵養に有効とはいっても、学習者中心の能動的な学習を誤解して生徒や学生たちをグループに分けて話し合いをさせるだけでは学びになりません。共同学習の原点は、「周囲との相互行為を通して、一人では到達できない領域に達する」ところにあります。教師による適切な介入と丁寧な指導があってこそ共同学習は自立性の育成に大きな役割を果たします。」

これを分からずただひたすら子供たちだけに話し合いをさせている教師が結構いる。それはただの雑談だということに教師が気づいておらず、自分は「アクティブ・ラーニング」を実践していると考えている教師が本当に多い。


p.220
「受験対策とまったく異なる姿勢で教えつづけた大村は、受験戦争ということばが生まれた時期に保護者から苦情を受けたこともかなりありましたが、「力をつけること、それ自体を目指して勉強していけば、試験くらいちゃんと対応できます。大は小を兼ねます」

これも私が日頃主張していくことであり、保護者や同僚、上司からはほぼ理解が得られない考え方だ。


面白い本だった。是非、英語教育に興味がある保護者の方々、教育改革に興味がある方々には読んでいただきたい本だ。

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国語教育 混迷する改革 [その他 本]


国語教育 混迷する改革 (ちくま新書)

国語教育 混迷する改革 (ちくま新書)

  • 作者: 紅野謙介
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2020/01/07
  • メディア: 新書



新学習指導要領となり、というよりここ十数年、英語教育は「読む」よりも、「聞く」「書く」「話す」ということが重視されるようになっている。そして「文法をなるべく教えない」ということもひとつの流れとなっている。「文法を気にするから日本人はいつまでたっても話せない」「赤ちゃんは文法など気にすることなく、大人の会話を聞き流しているだけで、自然と話せるようになる」この全く事実と違う二つの言説に惑わされ、英語教育は歪められてしまっている。

この本を読んで、国語教育も同じような流れになっているということを知った。古文・漢文から文法をなるべく排除し、精読することなく何となく意味をとり、現代文(とはもう言わないのかもしれないが)の授業でも、対話を中心に行う。

授業を日々やっていて思うのだが、基本的には授業をすすめる上で題材となるTextがないと、授業をすすめていくのは非常に困難だ。しかもそのTextもある程度内容があるものでないと授業にならない。無味乾燥な法律の文や、契約書類、広告文では正直授業にならない。しかし文部科学省が推し進めようとしている英語・国語などの言語教育は、こうした無味乾燥なものから、無味乾燥な議論をさせ、浅い考えを持った、ただ表面上おしゃべりを楽しめるような人間を育てたいようだ。

p.60
「テストは所詮テストです。テストはその生徒たちの能力のせいぜい一部しかはかることはできない。記述式試験ではかることのできる能力は、マークシート式と同じではないですが、それもやはり一部に過ぎません。そしてテストは所詮テストにすぎないという、ある種の断念に立ち、同時にその範囲のなかで、徹底して正確さと公平さを期するのが、試験問題を作成するプロフェッショナルの矜持です。」

このあとも素晴らしい言葉は続くのだが、これが全てだと思う。今までの日本の入試は、いろいろな問題はあったのかもしれないが、公平で正確さを期したテストだったと思う。それをここ数年自らぶち壊してきたのが文部科学省であり、何も考えずに気分だけでものをいう人たちだ。


p.244
「「対話的」であることは「学習指導要領」でとりわけ強調されている要素のひとつですが、生徒に対してよりも、文科省をはじめとして、教育委員会や学校の先生たち自身こそが「対話的」にならなければならないのではないでしょうか。」

本当にその通りだと思う。


p.275
「言葉はその意味をうめていく文脈を共有することによって、話し手から聞き手に伝わっていきます。どんなに美辞麗句を並べても、生徒たちは先生がその言葉を発するときの身ぶりや仕草を見ながら、空虚な言葉か実質のある言葉かを判断します。」

これは実際教育活動に携わっていると実感する。だからこそ、薄っぺらな考えしか持たない権力者たちの言葉は子どもの心に響かないのだ。しかし、薄っぺらな人々は自分の言葉が子どもの心に響いていないことすら気が付かず、ひたすら自分に酔って長い話を続ける。だからさらに響かなくなるのだ。

本当にまとまな方向に、教育改革が向かってくれるとよいなあ、と思う。

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国語教育の危機 [その他 本]


国語教育の危機――大学入学共通テストと新学習指導要領 (ちくま新書)

国語教育の危機――大学入学共通テストと新学習指導要領 (ちくま新書)

  • 作者: 謙介, 紅野
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2018/09/06
  • メディア: 新書



古本屋めぐりをしていた時に、何となく目にし、図書館で借りて読んだ。

これは、「大学入試センター試験」に代わって導入された「大学入学共通テスト」の試行段階に書かれた本で、まだ数学や国語で記述式を取り入れようとしていた時期のもの。

ということで、現在の「大学入学共通テスト」批判とは若干ズレるのだが、根本的に文部科学省がやろうとしていることは変わらないので、今読んでも十分納得できる部分が多い。

とにかく、何十万というレベルの違う子供たちが受ける試験で、基準がぶれないよう記述式を採点しようとすること自体がかなり困難なことであるし、複数の資料を読ませてそこから情報を読み取らせようとすることにより、本質的に「考える」ということから外れてしまう可能性があることもその通りだし、とにかく共感できることしかなかった。

政策を打ち出す人々は、現場のことを何も考えずに色々と押し付けてくるのだが、その押しつけも教育的に本質的な部分をしっかり踏まえた上でならば良いのだが、結局は産業界の論理に流されて出してくるものしかないのでどうしようもなくなってしまうのだ。

数回行われた「大学入学共通テスト」の新聞や予備校の講評で、「思考力・判断力・表現力を重視した作問が多かった」などと英語の問題を評価しているものがたくさんあるのだが、「どこが?」と思ってしまうのだ。この本で筆者が繰り返し述べている通り、英語の問題においても、「情報」処理に終始しており、全く思考する必要がない問題ばかりが並んでいる。ましてや、表現力を問う問題というのはどういう問題なのかと毎回思ってしまうのだ。

とにかく、とにかく最近の教育政策はひどすぎると思うのだ。文部科学省や教育行政に携わる人々は、産業界の論理に流されず、「教育」という観点でしっかりと物事を考え、色々なものを作っていって欲しいと思う。
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F ショパンとリスト [その他 本]


F ショパンとリスト (集英社文庫)

F ショパンとリスト (集英社文庫)

  • 作者: 高野 麻衣
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2022/06/17
  • メディア: 文庫



本屋で見つけ、リストとショパンが好きな息子が読むかなあ、と思い購入した本。

後ろに書いてある記述によると
「2021年11月に上演された朗読劇『リーディングシング『F ショパンとリスト』」
の脚本を元に作られた作品らしい。

主要参考文献なども挙げられており、それなりに史実に基づいてはいるのであろうが、脚色された部分も多いのだろうなと思う。なので、小説というのか何というのかわからない本ではある。

ショパンとリストに交流があったというのは知っていたが、ここまで仲が良いとは知らなかったし、参考文献によるとリストがショパンの生涯を本にしていたということも初めて知った。

真っ直ぐで理想に進んで邁進しながらも、自分の置かれた状況になんとなく不安感を抱く優しいリスト。
繊細で優しい印象だが、心の中には燃えるような情熱があり、祖国を捨てて逃げてしまったという後悔が心にくすぶっているなんとなくニヒリスティックなショパン。
ふたりの特徴が対比的に良く描かれていた。

元が劇台本ということでしょうがないのかもしれないが、二人共言葉遣いが若干乱暴な感じなのが気になった。確かに友人通しの会話ということでこんな感じにしたのだろうが、女性が考える友人同士の言葉使いという感じで、社交界などにも出ていた二人は、友人同士のプライベートな会話でももっと丁寧な言葉を使っていただろうと思う。

ともあれ、
p.44
「音楽家にとって、演奏する場所を奪われるのがどんなにつらいか、身にしみたよ」
「音楽は贅沢品だそうだから」
「でも、そこには、生きていくための希望がある」

コロナ禍に制作された作品だからこそ挿入された会話なんだろうと思う。世間が考える音楽と、音楽の本質を表した良い会話だと思う。


p.57
「ショービジネスの世界はまるで鳥かごだ。社交界もまたしかり。人気も友情も愛も、すべてが丸見えで数値化される。いつだって、みなに求められる自分を演じ続けなければならない」

これも現代の音楽業界を皮肉った言葉だろう。魂のない音楽、芸術があまりに多すぎる気がする。


p.79
「音は空気の振動でしかないけれど、言葉を凌駕する存在であり、純粋で、美しい。
 人は、言葉を頭で理解しようと、千差万別なイメージを膨らませるけれど、音は皮膚や感情、さまざまなものに直接作用する。
 音は、絶対なのだ。」

本当にそう思う。音楽は言葉を凌駕する。だからこそ感動を与えるのだと思う。

結構良い本だった。
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来たれ、新たな社会主義 世界を読む2016-2021 [その他 本]


来たれ、新たな社会主義――世界を読む2016-2021

来たれ、新たな社会主義――世界を読む2016-2021

  • 出版社/メーカー: みすず書房
  • 発売日: 2022/04/20
  • メディア: Kindle版



『21世紀の資本』という超資本主義のもと、行き過ぎてしまった格差社会を、批判し解決策を提示した名著の著者トマ・ピケティによる、新聞に投稿した時評集。東京新聞で紹介されており興味を持って図書館で借りて読んでみた。一篇一篇が短く非常に読みやすく、しかも刺激に満ちており面白かった。

p.2
「あれから30年経った2020年、ハイパー資本主義はあまりにも行き過ぎてしまった。いまや私たちは、資本主義を超える新しい体制、すなわち、参加型かつ分散型、連邦主義的かつ民主主義的で、環境にやさしく、多民族共生かつ男女同権といった新しい形の社会主義について考える必要がある。私はそう確信している。」

私もそう確信している。かなり私が日々思っていることと一致している。


p.12
「第一に、いかなる環境政策も、格差の減少、権力と資産の恒久的な循環、経済指標の再定義に基づくグローバルな社会主義プロジェクトの一環としてでないかぎり、有効に進めることはできない。」

私もそう思う。いくら環境に優しい社会を!と訴えたところで、金持ち、権力者はそういった方向に自分の気持ちを本当に意味で向けようとしない。より公正な社会こそが環境に優しい社会を作るという考えに激しく同意する。


p.19
「私が呼びかけている参加型社会主義には何本かの柱がある。〈教育の平等と社会国家〉〈権力と富の恒久的な循環〉〈社会連邦主義〉そして〈持続可能で公正なグローバル化〉である。」
これがしっかりと議論され皆で意識して変革へと向かえば確かに世の中は良い方向へ向かうと思うのだが・・・。

p.23
「私が呼びかけている参加型社会主義はトップダウンでもたらされるものではないことを強調しておきたい。プロレタリアの新しい前衛部隊がやってきて解決策を示してくれるのを待っていても無駄なのだ。ここで提起していることは、あくまで議論のきっかけであって、決して議論を終わらせるためのものではない。市民が社会経済問題や指標を見直し、それを叩き台に集団的な討議を行うことによってはじめて、真の変化が訪れるだろう」

全くその通りだ。一人ひとりが不断の努力を重ね、討議し続けより良い社会を築こうとし続けることが必要だと思う。


p.59
「2007年には、公的資本がマイナス(公的債務が公的資産を上回る状態)だったのはイタリアだけだったが、2015年には、米国、英国、そして日本の公的資本がマイナスとなった。つまり民間所有者が国民資本全体を手にしているだけでなく、将来の税収の「引出権」を握っているのだ。この状況は、政府の規制能力を著しく損なうものである。」

みんな金利が良いからと、国債を購入したりしているが、「国債」とはなんなのか、真剣に考えるべきなのではないだろうか。


p.77
「1980年にも2016年にも、いったいどのようにして、このようなあからさまな金持ち優遇の反社会的政策が米国人の大多数に受け入れられたのだろう?この疑問への従来の答えは、グローバル化と地域間競争の激化によって「自分さえよければいい」という自己中心的な考え方が優勢になっているというものだろう。しかし、その説明だけでは不十分である。ナショナリスト的なレトリックを使い、ある種の反知性主義を育て、何よりも民族的・文化的・宗教的な対立を悪化させて労働者階級を分裂させるという共和党の巧妙さを、そこに付け加えるべきだろう。」

目先の利益に惑わされず、共同体全体、世界全体として何が正しいのか、何が良いのかということを真剣に考えれば自ずと答えは見えてくると思うのだが、、、と思っているのは自分の考えが正しいと考えているからなのか・・・。


p.169
「循環型経済というと、廃棄物や材料をリサイクルしたり、天然資源の使用を控えたりすることを思い浮かべる人が多いだろう。しかし、持続可能で公平な新しい体制を出現させるためには、経済モデル全体を見直す必要がある。現在のような貧富の差があっては、どんな野心的な環境目標も実現は不可能だ。」


何故各国政府が、ピケティの主張するような政策を行わないのか、疑問だ。さっきも書いたが、そう思うこと自体が自分の考え方が絶対正しいと思っているからなのか・・・。
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岩波少年文庫のあゆみ [その他 本]


岩波少年文庫のあゆみ 1950-2020 (岩波少年文庫, 別冊2)

岩波少年文庫のあゆみ 1950-2020 (岩波少年文庫, 別冊2)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2021/03/13
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



この本が昨年出版されたことは知っていたが、岩波少年文庫自体には興味があるが、こういった歴史の類の本にはあまり興味がなかったので、読まずにいた。しかし子どもと図書館に本を返しに行きせっかくだから何か借りようかなあ、と考えていたら、この本が目に入りほかに読みたい本もないし簡単に読めそうだからと借りてみた。

まさに『岩波少年文庫』のあゆみであり、創刊時の編集者たちの思い、その後の動き、何故発刊数が少ないのか、「岩波少年文庫」を「岩波少年少女文庫」に変えようとする動きもあったが、
p.84
「人の一生は、幼年、少年、青年、壮年、老年という時期の分け方があり、少年文庫はその少年に着当たる言葉であり、そこに少年少女が含まれているとする考え方であった。」
p.85
「たとえ中身は同じだったとしても、名称変われば新しいシリーズを起こすことになり、戦後の創刊以来続いてきた、岩波少年文庫の50年の歴史をないものにするのかという抵抗感も強く、その歴史を重んじることになったのだ。」

真面目に本を作ってきている岩波書店の姿勢が見える部分でとても興味深かった。
ほかにも、翻訳者について、挿絵について、それぞれの年代での発行本について、各著名人からの思い出の「岩波少年文庫」などがあり、とても興味深く読んだ。
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私の考え [その他 本]


私の考え (新潮新書)

私の考え (新潮新書)

  • 作者: 三浦 瑠麗
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2020/04/16
  • メディア: 新書



1ヶ月以上前から予約していたのに、前に借りていた人が期限が来ても全く返さず、ほかの市町村の図書館でやっと借りて読んだ。

彼女の真摯さが伝わるとても良い本だった。

p.33
「人間は好きだけれど、好きでいつづけるためにも孤独な時間は大事にした方がいい。どうも人に会いすぎたなと感じたとき、私は積極的に孤独を求めて山に籠る。」

p.53
「この国では、従順にしておいた方が生きやすいことは確かだ。でも、処理能力の高いいい子のホワイトカラーを大量に持っておくことが「富国」につながるという時代は終わった。みんなが有名大卒の夢を見、みんなが一つのお手本に向けて突っ走る道の先には、もう何もないのかもしれない。」

p129
「もう一つの理由は、やはりある種の規律。こういうと変に聞こえるかもしれないけれど、子どもたちは反抗しながらも従いたがっている。やはり人間は集団行動が好きなのだ。ただし、そこには尊敬できる確固とした人がいて、自分たちをきちんと見てくれている、話を聞くべき時には聞いくれる、という安心感がなければならない。」

ネットで炎上しようが、色々なところから批判されようが、自分の意見を変えず毅然と対応する彼女の姿勢に非常に好感が持てた。

ずっと手元に置いておきたい類の本ではないが、それなりに好感の持てる本だった。
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バカロレアの哲学 [その他 本]


バカロレアの哲学 「思考の型」で自ら考え、書く

バカロレアの哲学 「思考の型」で自ら考え、書く

  • 作者: 坂本 尚志
  • 出版社/メーカー: 日本実業出版社
  • 発売日: 2022/01/28
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



本屋で偶然目にして思わず買ってしまった本。大学時代、エリート教育を一時研究していたことが、その時から興味を持っていたフランスの高校卒業資格試験バカロレア。久しぶりに目にし興味を持った。購入した次の日仕事場に行ってみると、国語の先生の机上にこの本が置いてあり思わず色々と話をしてしまった。

副題として『「思考の型」で自ら考え、書く』とあるのである程度予想はしていたのだが、一見難しそうに見えるバカロレア試験もある程度の「型」に従って書けば書けるようになる、というもの。題名から想像される通りの本で、読み終わってみると若干物足りなさを感じた。

p.40
「哲学教育はどのような能力をそだてるためのものでしょうか。最終的な目的は「疑問を持ち、真理を探究することへの配慮、分析する能力、思考の自律性」を育てることにあります。」

これは私が教育活動を行う際に最も重視しているてんだ。

p41
「生徒たちが「考える自由」を獲得し、「市民」を育てることこそが哲学教育の目的なのです。」

p185
「「自分で考え、意見表明し、行動できる」人、そのような人を、民主主義社会を支える人、つまり「市民」と呼びましょう。
  哲学教育の目的は、まさに、「市民」を育てることです。ここまで見てきたように、哲学はさまざまな問題について、批判的に考える力を育てます。批判的というのは、与えられた情報を鵜呑みにしないで、それとは異なった対立したりする情報も等しく扱い、吟味する姿勢を持っているということです。
  民主主義社会では、人々はさまざまな意見を表明します。それらの意見のうち何が正しく、何が間違っているのか、そしてどうすれば合意や妥協に達することができるのかを考えるためには、批判的な態度が絶対に必要です。」

これは民主主義社会を形成する市民を育てる上で、日本の教育にまさに求められていることであろう。くだらない英会話や小手先の技術・プログラミング教育を行っている場合ではないのではないかと思うのだが・・・。

p.187
「教養とは知識のことを指すだけではなく、知識を獲得するための方法でもあるとすればどうでしょうか。そうすると、「教養がある」とは、知識の量の多寡を指すだけでなく、新たな知識を手に入れるための方法を持っているかどうか、そして知識を手に入れる方法を複数持っているか、ということも意味することになります。かつての大学の教養課程は、さまざまな知の分野に触れることで、世界についての知を獲得するための多様な方法に触れる機会でもあったのでしょう。」

p229
「しかし「問いの立て方」、そして「解き方」が身についているのであれば、答えの出せない問題にいつでも立ち返り、もう一度考えることができるでしょう。問題(を)発見する力、問題(を)解決する力を身につけるということは、逆説的ですが「答えがでないこと」に対する恐れを減らすものでもあるのです。
 さらに、問への答え方を知っていることは、「答えがでないこと」だけでなく、「意見が変わること」も恐れない、そうした態度を育てるように思います。新たな情報や論拠が手に入ることによって、自分がそれまで正しいと考えていたことが実は正しくなかった、ということが明らかになった時に、わたしたちはそれまでの自分の意見に固執したり、変化を受け入れることに消極的になったりしがちです。
 しかし、新たな条件のもとで再び問いに取り組むこと、それを容易にする「解き方」を知っていることによって、自分の意見を絶対視せずに、何度でも考え直すこと、疑い続けることができるのではないでしょうか。そうした態度によって私たちは、他者の声に耳を傾け、自分自身の絶対性を疑い、新たな視点や考え方を頭ごなしに拒絶することなく、その妥当性について粘り強く考え続けられるようになるでしょう。このような態度こそ、「教養」がもたらしてくれるものであり、「市民」として必要なものであるように思えます。」

本当にその通りだと思う。そして日本には著者のいう意味で「教養」を持っている人がすごく少ないんだなあと思う。特に権力者は。
 
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クラシックでわかる世界史 [その他 本]


新版 クラシックでわかる世界史 時代を生きた作曲家、歴史を変えた名曲

新版 クラシックでわかる世界史 時代を生きた作曲家、歴史を変えた名曲

  • 作者: 西原 稔
  • 出版社/メーカー: アルテスパブリッシング
  • 発売日: 2020/09/04
  • メディア: Kindle版



東京新聞で、アルテスパブリッシングという音楽之友社から独立した二人が作った出版社が紹介されており、出している本が結構評判が良いらしいということで、この本を借りて読んでみた。

『クラシックでわかる世界史』ということだが、クラシック曲や作曲家に関係する世界史のエピソードが書いてあったりするのだが、世界中心の描写の部分と、音楽中心の描写の部分とがあり、クラッシク紹介書としても、世界史の本としてもどちらの観点からも中途半端な気がした。

同じ作者の『クラシック 名曲を生んだ恋物語』は結構良かっただけに、クラシックの作曲家や曲に焦点を当て、それに関する世界史の出来事をエピソード的に紹介していったほうが良い本になって気がする。


クラシック 名曲を生んだ恋物語 (講談社+α新書)

クラシック 名曲を生んだ恋物語 (講談社+α新書)

  • 作者: 西原 稔
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2005/09/21
  • メディア: 新書



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孤独の意味も、女であることの味わいも [その他 本]


孤独の意味も、女であることの味わいも

孤独の意味も、女であることの味わいも

  • 作者: 三浦 瑠麗
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2019/05/17
  • メディア: 単行本



新聞広告で『不倫と正義』という本が載っていて興味を持ち、図書館で借りようとしたがかなりの予約数。検索した際、著者の自伝作品というこの本を見つけせっかくなので借りてみた。

基本は女性であるということを軸に自分の人生を振り返ったもの。
出産後の子育てから始まり、自分の子供時代と出産前後の、過去と現在を行き来するかたちで書かれた面白い作品となっている。結構こういう作品は読みづらかったりするのだが、そんなに読みづらさは感じなかった。

全近代的な家族観に縛られているために優しいながらも厳しい母親に育てられた子供時代、上と下に兄弟姉妹がいる環境で育ったこと、転校をきっかけに何となく周りと馴染めなくて本ばかり読んでいた子供時代、いじめのようなものにあった中学時代、強姦にあったこと、それが元凶なのわからないが交際しても長続きしなかった高校時代、女子が圧倒的に少なかった東京大学理科一類時代、現夫との出会い、長女の早産&死、次女の出産、子育てなどなど、淡々と語られている。

生きづらさの多くが、他社の視線を意識せざるを得ない女性性から来ており、それに対する小さい頃から持っていた違和感が彼女の生きづらさの原因だったのだと気づき、それに対して積極的に考え行動し人生を変えていこうとするあたりが頭の良い女性なのだろうなあと読んでいて感じた。

強姦の場面を描いたことで、女性たちからほとんど反応がなかったことが意外だった、というようなことを誰かとの対談で言っていた(言っていたのは対談相手で彼女が積極的に言っていたのではない)がわかる気がする。ここまで頭が良く、自分のことを冷静に分析でき行動できる人は、古い価値観を持つ男性含め、多くの女性も嫌なんだろうなあと思うのだ。これは著者自身も同じようなことをこの本で書いていた。

特に多くの人に勧めたいと思う類の本ではないかもしれないが、見られる主体としての女性、どうしても性的対象にならざるを得ない性別である女性というものに対して違和感があるひとの心の葛藤がよくわかる本で、彼女の真摯さが伝わる、私にはとってはとても良い本だった。
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ブルクミュラー 25の不思議 なぜこんなにも愛されるのか [その他 本]


ブルクミュラー 25の不思議: なぜこんなにも愛されるのか

ブルクミュラー 25の不思議: なぜこんなにも愛されるのか

  • 出版社/メーカー: 音楽之友社
  • 発売日: 2013/12/19
  • メディア: 単行本



図書館で偶然見つけた本。
ブルグミュラーは私も大好きな作曲家で、大学時代自分の書いたレポートなどにも使った人だ。私はこの本を読むまでずっとブルグミュラーだと思っていたのだが、正確には、ブルクミュラーと濁らないらしい。

この本にあるとおり、結構クラシックに詳しい、クラシック音楽愛好家の人でブルグミュラーを知らない人は多いのだが、小さい頃ピアノを習ってた人は多くの人が彼のことを知っている。

本の題名も、彼の代表曲『25の練習曲』に引っ掛けて「25の不思議」としているのも面白い。彼の情報が少ない状況で、簡単な伝記や、当時のヨーロッパ、日本での受容史なども紹介されており結構面白かった。
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一流の人をつくる整える習慣 自律神経を意識すると、仕事はうまくいき [その他 本]


一流の人をつくる 整える習慣

一流の人をつくる 整える習慣

  • 作者: 小林 弘幸
  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 2015/06/15
  • メディア: Kindle版



中央線に乗っていて宣伝が目に入り図書館で借りた本。

簡単に言えば
①身の回りを整え、置き場所を一定にし、必要な時に必要なものがすぐ使える状態にし、使わないものは捨てる。
②時間ごとの頭の回転度を考えてやるべきことをその時ごとに行う。

③ボーッとする時も計画的にボーッとする、つまりは、どんな物事も計画的に行う。

④無理した人間関係は断ち切る。

⑤翌日、次の週の予定を前の日に立て、会社や家についたとき、ゆっくりする前に、まずはやるべきことを行う。

この本に書かれていることはほぼ全て私が実践していることであったので、あまり学ぶべきことはなかった。が、おそらくあまりこうしたことを実践していないひとにとっては良いのではと思う。しかしこうした本を読んだからといって、こうしたことを実践することは、普通は難しい気もする。
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新型コロナワクチン 副作用が出る人 出ない人 [その他 本]


新型コロナワクチン 副作用が出る人、出ない人

新型コロナワクチン 副作用が出る人、出ない人

  • 作者: 近藤 誠
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2021/07/12
  • メディア: 単行本



近藤誠さんという、慶應義塾大学医学部出身の方が書いたコロナ本。

題名だけ見ると、副作用が出やすい人、出にくい人の特徴が並べられており、こういう人は打たない方が良いですよ、という軽い感じの本なのかと思いきや、告発本に近い内容。

コロナウイルスの変異株、コロナワクチン、免疫についていなど、結構医学的に詳しく説明されており、一般人にはわかりづらい部分があるが、結構丁寧に説明されている。

後半はワクチンについて詳しく語っており、本当は10年近くかけて作られるワクチンが1年程度で作られてしまったこと、ワクチンの有効率などの数字のマジック、副作用を副反応と言い換えることによるぼかし、副作用でなくなった多くの方を事例として出しながら、それを副作用でなくなったとは認めようとしない政府や厚生労働省のこと、などなどとにかく素晴らしい内容。

私はずっと思っているが、ワクチンを打とうが、打たまいが、かかる率は変わらないし、重症化の程度も変わらないと思う。さらに副作用によって死ぬ可能性と、コロナにかかる可能性とどちらがより高いのかをもっとちゃんと公表すべきだとも思う。

皆、こうした誠実な人のちゃんとした本を読み、もっと冷静に、そして健康的に、健全に生活すべきなのではないだろうか。本当に良い本だった。
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デジタル・ファシズム [その他 本]


デジタル・ファシズム 日本の資産と主権が消える (NHK出版新書)

デジタル・ファシズム 日本の資産と主権が消える (NHK出版新書)

  • 作者: 堤 未果
  • 出版社/メーカー: NHK出版
  • 発売日: 2021/10/11
  • メディア: Kindle版



堤未果という人の書く新書の題名は結構前から気になっており、一度読んでみたいなあ、とは思っていたものの今までずっと読んでこなかった。しかしこのデジタル社会へと急速に移行し始めている日本社会にかなり違和感を持っていたこの頃、そしてそのことにかなりの脅迫的なものを感じていたこの頃、この題名が自分の中でかなりヒットし読んでみた。

結論を簡単に言ってしまえば、「今だけ金だけ自分だけ」という強欲な資本主義者、一部の金持ち達の利益を利権を守る、増やすために、すべての政策は行われていることが記されている。

政府のデジタル化、スーパーシティ計画、銀行なども含めた経済のデジタル化、そしてなにより教育のデジタル化、すべてが我々の日常を過ごしやすくするためというよりは、金持ちがさらに金持ちに、そして貧乏人をさらに貧乏人に、一般の人々を無知な状態に追いやるための制作に過ぎないのだ。

pp. 246~247
「文部科学省の公式ホームページに貼られた「学校における一人一台端末環境」公式プロモーション動画の中で、小学生の女児は手元のタブレットを見ながら、あどけない笑顔でこんなセリフを口にする。
 「タブレットがないと、全部自分の頭でで考えないといけない。でもこれ(タブレット)があれば、間違えた時すぐ説明されて、前に進んでいけるんです」」

これは、文部科学省自体が、タブレット学習が自分の頭で考えない、短絡的な子どもを生み出すのだ、ということを認めてしまっているということだ。そして恥ずかしげもなくこんなものを社会に出すこと自体、それが大変なことなのだ、ということを文部科学省自体が分かっていないということだ。

恐ろしい社会だと思う。本当にデジタル化がいいのか、キャッシュレス社会が良いのか、多くの人がこの本を読み、考えていくべきなのではないっだろうか。
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ビーガンという生き方 [その他 本]


ビーガンという生き方

ビーガンという生き方

  • 出版社/メーカー: 緑風出版
  • 発売日: 2019/01/31
  • メディア: 単行本



何がきっかけだったか忘れてしまったが、「ヴィーガン」という言葉に出会い興味を持った。私は若い頃動物の肉が大好きで、30代半ばまでは結構食べていた。しかし、30代半ばを過ぎてから、肉を食べると、特に牛肉を食べるとお腹を壊すことが何となく分かってきて、他にも動物の肉が口に運ばれるまでの実態を色々と知るようになり、なるべく動物の肉を取らないようになった。

実はその前から、菜食主義というものにもある程度興味があり、週に一度ヴェジタリアン・デーというものを作り、植物製のものだけで夕食を作るということもしていた。

さらにここ数年は私が平日の夕食をほぼ毎日作っているので、基本は白米、野菜を中心とした昆布だしの味噌汁、大豆料理を中心に出している。

という感じで、肉を食べない生活というのにはずっと興味があり、この「ヴィーガン」にも心惹かれたのだが、「ヴィーガン」というのは食生活だけでなく、生活全て、つまり人生哲学のようなものなのだ、ということが分かり、とりあえず一冊何か読んでみようと思い、図書館で見つけたこの本を読んでみた。

当然話は動物の権利から始まるのだが、搾取することに問題意識を持つことに話は進み、さらに人間の権利、環境、思いやりある世界、と話はどんどん広がっていく。私が小さい頃から抱いていいろいろなものに対する違和感や反感などがこの本にかなり込められている気がして結構夢中になって読んだ。

p78
「自分の特権を批判的に振り返るには、昔から当然と思ってきた考えに向き合い、自分の行動や消費習慣が、みずからの支持する価値観をどう損なっているかを問わなければならない。」

p133
「単一争点とは、一つの問題に注目して他を無視するーしばしば犠牲にするー態度を指す。これに囚われると、注目する当の問題が様々な課題や運動の交差する大きな背景の中でどのような位置を占めるかが認識できなくなる。」
p134
「本書の主題の一つは、抑圧を単独で考えてはならない、という点であり、それはもろもろの抑圧がみな、大抵は暴力や暴力の脅しを支えに、特権・統制・経済力によって結びついているからである。」

p148
「動物搾取からの脱却は素晴らしい一歩だが、それは始まりに過ぎない。人種差別、性差別、同性愛差別、トランスジェンダー差別、障害者差別はー種差別と同様ー社会規範を通して獲得される後天的な信念で、そうだとしたら社会はこのような負の思考回路を捨て去ることが出来る。」

私がすぐに、完全なるヴィーガンになることはできない。肉や魚も食べるであろうし、蜂蜜や卵も口にするであろう。動物性の服を一切着ないということも今すぐにはできないだろう。しかしこの本にもあるように、いきなりすべてを変えることはできないので、少しずつ搾取しない生き方をしていきたい。
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「空腹」が人を健康にする 「一日一食」で20歳若返る! [その他 本]


「空腹」が人を健康にする

「空腹」が人を健康にする

  • 作者: 南雲 吉則
  • 出版社/メーカー: サンマーク出版
  • 発売日: 2012/09/01
  • メディア: Kindle版



JRの電車の広告で見てずっと気になっていた本。

食べないこと、空腹状態が人の生存本能を呼び覚まし、それが結果として健康にいいことを述べた本。
読んでいて確かに納得する部分が多かった。

ごぼう茶が体にいいこと、魚や野菜を丸ごと食べることが「一物全体」をいただくことでそれが、結局はバランスの良い食事につながること、自然に合った生活をすること、ワンパターンな生活をすることが、精神的にも肉体的にも良いこと、とにかく勉強になった。

こういう本を読んで何とか実践しようとするが結局長続きしない。こうした本をきっかけに何とか結構的な生活を心がけたい。
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知らずに食べている体を壊す食品 [その他 本]


まだまだあった! 知らずに食べている体を壊す食品

まだまだあった! 知らずに食べている体を壊す食品

  • 作者: 手島奈緒
  • 出版社/メーカー: アスコム
  • 発売日: 2014/02/27
  • メディア: 新書



ヴィーガン関連の本を探していて偶然図書館で見つけた本。

日本の食物が農薬にまみれていること。
牛、鳥などが不自然な状態で飼われ、その肉を我々がいただいていること。
遺伝子組み換え食物のこと。
有機栽培が日本ではなかなかうまくいかないこと。
日本米のこと。
見た目重視の日本の食べもののこと。
日本の商品表示のずさんなこと。
化学物質のこと。
我々が今後すべき行動のこと。

とにかく全てが何となくわかっていながら改めて説明され、自分の食生活がどれだけいい加減なものだったが、無自覚なものだったか改めて感じた。

こうした本を読むとその時は頑張ろうと思うのだがそのうち結局元の不健康な生活に戻ってしまう。

今年こそ徐々に健康的な食事、生活を心がけていきたい。

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現代児童文学作家対談③ 角野栄子、立原えりか、中川李枝子 [その他 本]


角野栄子・立原えりか・中川李枝子 (現代児童文学作家対談)

角野栄子・立原えりか・中川李枝子 (現代児童文学作家対談)

  • 作者: 神宮 輝夫
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 1988/12/01
  • メディア: ハードカバー



もう一冊、対談集を読み終わった。
角野栄子作品で、『魔女の宅急便』は結構好きなのだが、子どもが好きで読んでいる「おばけのアッチ」シリーズは苦手だ。だからかもしれないが角野栄子の対談はイマイチ心惹かれなかった。

立原えりかの対談は面白かった。彼女のものを書く際のテーマは「愛」であり、自分の身近にある好きなものから連想をふくらませて物語を書いている様子がとてもわかった。

中川李枝子作品も私はあまり読んだことがなく、家には数冊あり、妻や子供は結構好きで読んでいるのだが、私は苦手だ。彼女は保育士ということで、その視点で様々なものを書いていることがわかった。やっぱりそうした視点が自分にあまり合わないんだろうなあ、と思った。

何にしろ、やはり人間性みたいなものが物語に出るんだなあ、とこのシリーズを二冊読んで実感した。
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現代児童文学作家対談⑨インタビューア神宮輝夫 [その他 本]


あまんきみこ・安房直子・末吉暁子 現代児童文学作家対談 (9)

あまんきみこ・安房直子・末吉暁子 現代児童文学作家対談 (9)

  • 作者: 神宮 輝夫
  • 出版社/メーカー: 偕成社
  • 発売日: 2022/01/16
  • メディア: ハードカバー



安房直子に関する本を読んでいた時にふと目にした本で、偶然図書館で見つけたので読んでみた。
小さい頃の読書体験、何故児童文学作家になったのか、それぞれの作者の様々な作品や、書いた当時の状況、それぞれの作者の文体や特徴、人間性などが対談を通してわかりやすく伝えられており、この作家のファンにとっては結構良い本なのではないだろうか。

あまんきみこさんは、小さい頃満州で育ったらしく、戦後に帰国するのも結構苦労した話なども語られており、戦後振り返ったとき、日本人が行っていたひどい行為などに対しても反省的に捉えており、そういった考え方が彼女の一連の戦争に関する作品にも投影されているんだろうなあということがよくわかった。そしてやはり彼女にとっても周りの人間にとっても『車のいろは空のいろ』シリーズが代表作のような扱いなんだなあと思った。

安房直子さんの対談は、何かで読んだことがあった。彼女の作風が時代とともにどのように変遷していったのか、作品を参照しながら語られているのが興味深い対談。結婚したり、子どもができたりしたことで気づかないうちに作風が変わっていたというあたりは結構面白く読めた。

末吉暁子さんの作品は、あまり読んだ事がなく、それなりに有名なので、一冊読んでみようと思い、『黒ばらさんの七つの魔法』というのを借りて読んでみたがあまり面白くなく途中でやめてしまった。彼女はもともと編集者らしく、佐藤さとるさんに声をかけられて作家になったらしい。佐藤さとるさんの本も私は読みきれなかったので、おそらく私の肌に合わない作風なのだろうと思う。

対談で読みやすくそれなりに面白かった。
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医師が教える新型コロナワクチンの正体 [その他 本]





内海聡さんの本は前にも一度読んだことがあり、普段から言っていることがあまりにも正当すぎて、何故、書評や様々なメディアであんなに批判を受けるのかがよくわからなかった。そしてこの本も、科学的にちゃんと考えればあまりにも当たり前のことが書いてあり、ほとんど全てに納得したし、このコロナ騒動の裏側にある目的なども、私が予想していたものとほぼ同じだった。

私がこの本を読んで「確かに」と思ったのは、p.38「医学的に無症状感染などというインチキ診断はありえません。」という言葉だ。色々なことを総合して考えれば、確かにインチキだと思うのだ。今までこの無症状感染ということに対してあまり疑問を抱いていなかっただけにこれは結構新しい発見だった。

とにかく私がこの総動が始まって以来ずっと抱いてきた違和感を、科学的にバシバシ説明してくれておりとてもスッキリした。

是非多くの人が素直な気持ちで、しっかりと頭を働かせてこの本を読んでみてもらいたい。おそらく大部分に共感する、「はずだ」・・・。
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戦後民主主義に僕から一票 [その他 本]


戦後民主主義に僕から一票 (SB新書)

戦後民主主義に僕から一票 (SB新書)

  • 作者: 内田 樹
  • 出版社/メーカー: SBクリエイティブ
  • 発売日: 2021/11/06
  • メディア: 新書



実家に行った時に、机に置いてあり父親が読み終わったというので借りて読んだ本。

1.民主主義
2.政治
3.憲法
4.教育
という4章からなる。
民主主義の章は、(というかすべてにおいて)、かなり共感できる部分が多かった。

普段から常に思っているのだが、「民主主義=多数決」であり、多数決で決まったことは絶対だ、みたいに考えているが大半なのだが、そうではないのだ。民主主義というのは議論を尽くし、最終的に意思決定しなくてはいけないので、妥協の産物として多数決で決めるが、それでも少数派の意見というものを尊重しながら物事を進めていかなくてはならないのだ、と多くの人に言っているのだが理解してもらえない。

p.24
「できるだけ多くの人が失政に部分的なりといえども責任を感じて、自分が後退戦の主体でなければならないと感じるためには、それに先立った、できるだけ多くの人が自分は国策の形成に関与していると信じる必要がある」

その通りだと思う。現在の政治に不満ばかり言い募り、「なっとらん!」と怒ってばかりいて、自分がその一端をになっている(つまり選挙で直接的ではないにしろ選ぶことになってしまった)ということを自覚できていない人を私は軽蔑する。

政治の「アメリカの属国」という主張にも同調するし、憲法の部分も共感する。

教育の部分もとても共感できた。特に英語教師として普段から感じているが、翻訳ソフトがここまで成長した今、英会話などという低レベルなことを学校教育で教えてもしょうがない。英語という言語を通して思考するとは、論理的に考えるとは、ということを考え、教養を身につけていくことこそが大事なのだと思う。

そして一緒に働いている同僚の大部分に次の言葉を伝えたい。

p.245
「無意味なこと、不条理なことに対して耐性ができてしまって、反応しなくなったら、悪いけど学者として終わりである。目の前で明らかに不合理なことが行われているのに、「いや、世の中そんなもんだよ」とスルーできるような人間には科学や知性について語って欲しくない」

興味深い本だった。
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コロナ後の教育へ オックスフォードからの提唱 [その他 本]


コロナ後の教育へ-オックスフォードからの提唱 (中公新書ラクレ, 708)

コロナ後の教育へ-オックスフォードからの提唱 (中公新書ラクレ, 708)

  • 作者: 苅谷 剛彦
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2020/12/08
  • メディア: 新書



『大衆教育社会のゆくえ』を読んで以来の刈谷剛彦さんの本だった。オックスフォード大学で10年間教えて筆者の視点で、現在の、というか戦後の日本教育の問題点を指摘した本となっている。

オックスフォードの教育=帰納的:長年の経験に裏打ちされた理論をもとに改革等を行っている。
戦後続く日本の教育改革=演繹的:まずは到達すべき理想があり、その理想に向かって様々な改革を行っている。

アマゾンの書評に、「教育とは理想を求めるものであり、筆者の主張はおかしい」という内容のものがあったが、それはそうなのかもしれないが、その理想自体が実体のないもの(予測不可能な事態に対応する力など)であり、その理想を実現する手段・方法なども色々なことを考慮に入れていないので非現実的だという主張しているのだ。

教育業界にいると、筆者の主張に全面的に賛成する。筆者の主張に違和感を覚える人、反対の人は所詮、外から教育を見ているのであり、どうやったら文部科学省が主張する改革を達成できるのか、そして彼らが求める力を子どもたちに身につけさせることができるのか、ということを考えたり実践したりしたことのない人が多いのではないだろうか。

最近流行りの、グローバル教育、アクティブ・ラーニング、英語教育、プログラミング教育などを遡上にあげ議論を展開している。
私も常々思うのだが、インプットのない話し合いなど薄っぺらいものであり、長年築き上げてきた方法をもとにより良いものを作り上げていくという方法を取るべきだと思う。さらに言えば、改革することで失われるものをしっかり考えて改革をすることの重要性を多くの人は考えていないというのもその通りだと思う。

とにかく、教育業界に携わることなく教育業界に口出ししようする人、文部科学省の人、教育を改革したい経済界の日本の人々は、皆この本を読んでその主張を一度すべて受け入れた上で反論できるものならしてみて欲しい。
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新型コロナワクチン その実像と問題点 [その他 本]


新型コロナワクチン その実像と問題点

新型コロナワクチン その実像と問題点

  • 作者: 天笠 啓祐
  • 出版社/メーカー: 緑風出版
  • 発売日: 2021/06/08
  • メディア: 単行本



新型コロナワクチン接種をめぐって個人的に結構色々なところで嫌な思いをしているので今回この本を読んでみた。

新型コロナウイルスが蔓延したのは、私が予想したとおり、地球環境破壊と経済優先政策、加えて過度な清潔社会だ。地球環境を破壊することにより生物多様性が失われ、経済を優先することにより、公衆衛生的な部分が縮小され、過度な清潔社会により人々の自然免疫力が落ちていることがこの蔓延の原因と言える。

さらにこうした感染症により人権侵害がいろんなところで起き、ワクチンに問題解決を図る上で巨大グローバル企業に金が回るシステムが作られている。さらに今使われているワクチンは、人間の体の中でワクチン(一部のウイルスのタンパク質)を作らせるものらしい。

現在行われている政策が、事態を悪い方向へ導くもののような気がする。今回のコロナ禍をきっかけに、我々の生き方を根本的に見直すべきなのではないだろうか。とにかくここ数十年世界規模で今進められている様々なことが行き詰まりを見せていることを示している気がするのだ。しかし時間が経つとすぐに忘れ元の欲望社会へ後戻りしてしまう。しかしそれにより利益を得るのは、世界でもほんの数数数%の資本家だけなのだ。

9.11 / 3.11 / コロナ禍、こうしたものを経験した世界が考えるべきことはなんなのか。もう一度皆でゆっくり考えるべきだと思うのだ。
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学校の「当たり前」をやめた。 [その他 本]


学校の「当たり前」をやめた。 ― 生徒も教師も変わる!  公立名門中学校長の改革 ―

学校の「当たり前」をやめた。 ― 生徒も教師も変わる! 公立名門中学校長の改革 ―

  • 作者: 工藤 勇一
  • 出版社/メーカー: 時事通信社
  • 発売日: 2018/12/01
  • メディア: 単行本



宿題や定期考査などを廃止した校長として名前は知っていたが、初めて著作は読んだ。
一般企業で働く兄が、研修で使用したテキストで、もう読まないからということでもらって読んでみた。

学校では現状行われていることに何の疑問も抱かずただ行われていることが多い、というようなことが書かれているがその通りだと思う。私も今働いている場所で大量のくだらない伝統を長い時間かけて廃止させてきた。

結構共感するところが多かった。
宿題の見直し、定期考査のあり方、運動会などのあり方、書く指導で他者意識が欠如していることなど私が普段から考え学校側に提案していることばかりがあっさりと改革されていることに羨ましさすら感じられた。

しかし共感できないことも多々あった。
学校のICT化、企業との連携など、世間では賞賛されているが、私はこれらは学校教育においてはあまり推進されるべきものだとは思えない。実社会と切り離されているからこそ学校教育の貴さがあるのであって、実社会の論理をどんどん学校の中に入れることによって本来的な学校の本質を見失っていくと思うのだ。そしてICTはこの作者がしつこく書いている手段であって、目的ではない。それをさも目的であるかのように書くこと自体見識の狭さを露呈している。

212ページに、「麹町中の「当たり前」が、日本全国の「当たり前」になってほしいと、心から願っています」とあるが、本当に麹町中の「当たり前」が素晴らしいのかということは次回の意味も含め常に検討していく必要はあると思うのだ。「当たり前」を当たり前に思わず常に検討するという思想には共感するが、結局この著者はそれを成し遂げ「成功した」という自分に酔ってしまい、歩みを止め、自分が改革した昔の「当たり前」の中に自分がはいるこんでしまっていることに気がついていない気がするのだ。

絶対的な権力は必ず腐敗するのと同じように、「当たり前」を常に疑い、恒常的な「当たり前」をどこにも作り出さないことが重要なのではないだろうか。

改革者とは言え、やはり教員独特の自分に酔っている感じが文章のあちこちからにじみ出ており若干嫌な気分で読んだ。
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交響曲入門 [その他 本]


交響曲入門 (講談社選書メチエ)

交響曲入門 (講談社選書メチエ)

  • 作者: 田村和紀夫
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2015/07/24
  • メディア: Kindle版



同僚の先生と、色々な人の交響曲の話をしているとき、交響曲ってそもそもどうしてできてきたんだろうね、という話になり、図書館に行ったら偶然グッドタイミングでこの本を見つけて借りて読んでみた。

音楽とはそもそも
1.踊り
2.祈り
が起源としてあり、
1.踊り⇒組曲⇒交響曲
2.祈り⇒聖歌⇒協奏曲
というのは興味深かった。

さらに、2の祈りは基本、言葉を伴ったものであり、ひたすらメロディが展開して言っても問題ないものだったが、1の純粋に楽器だけの曲だと、曲が心に残らず退屈なものになってしまうので、ある程度の繰り返しと構造が必要になり、ソナタ形式のようなものが発展した、という説も興味深かった、

そして
第一楽章:「形  式」=「頭」
第二楽章:「旋律・歌」=「心」
第三楽章:「舞  曲」=「体」
という人間を形作る3つの要素からなり、それはカントの三批判書
頭=『純粋理性批判』
心=『判断力 批判』
体=『実践理性批判』
に対応しているという説も面白いと思った。

さらに、モーツァルトは基本第一楽章をメインに創作していたが、ベートーヴェンはフィナーレの第四楽章に向かって、全ての楽章を構築していったというのも面白かった。

他にも、シューベルト、ベルリオーズ、ブラームス、メンデルスゾーン、マーラー、ブルックナー、シベリウス、ドヴォルザーク、チャイコフスキー、ショスタコーヴィチ、ハイドンなど主要な交響曲作家の作品も紹介されており、興味深かった。
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日本のいちばん長い日 [その他 本]


日本のいちばん長い日(決定版) 運命の八月十五日

日本のいちばん長い日(決定版) 運命の八月十五日

  • 作者: 半藤 一利
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/09/20
  • メディア: Kindle版



Tokyo FM、日曜朝10:00~放送される、小川洋子さんをパーソナリティに迎えた「メロディアス・ライブラリー」で8月の半ばに紹介されていた本。それを聴いて興味を惹かれ、図書館で予約して借りた本。結構届くまでに時間がかかってしまった。

ポツダム宣言を受けて、最終的に8月15日の正午に、玉音放送が流されるまでの出来事、特に最後の24時間を一時間ごとに章立てをし綴られた作品。

半藤一利という人の本は初めて読むし、彼の人となりをそこまで知っているわけではないのだが、文芸春秋社から出ていることからも分かるが、かなり昭和天皇びいきというか、昭和天皇を、良い人・国民のことを常に案じていた人のように、初めから最後まで描いており、かなりの違和感があった。

速く終戦に導きたい文官達に対し、国体護持のためにひたすら終戦を拒もうとする軍部。普段であれば軍部の行動や思想に対して嫌悪感をいだいてしまう自分だが、彼らの純粋さ、論理の正しさに彼らに非常に同情的に読んでしまった自分がいることに一種の怖さを感じた。

読んでいて非常に不愉快だったのは、若い将校たちに長い時間監禁されて飲み物の食べ物も与えられず、喉の渇きで死んでしまうのではないかと考えたお偉方が、内面の怒りを覚える場面があるのだが、その当時の一般の日本人は皆、長い間飢えと渇きに苦しんでいたのではないだろうか。彼らの飢えと渇きなど所詮24時間に満たない数時間の話であり、それに耐えきれず死んでしまうのではと考えるあたりどれだけ普段恵まれた環境で生活していたかが如実に表れている。しかも作者はそれを客観的に伝えているようなのだが、この細かい心情にこそ、戦争が長引いてしまった要因があることをつかないこと自体に、作者は天皇や政府上層部に対し問題意識を持っていないことが現れてしまっている気がするのだ。

さらにエピローグに、徳川侍従という天皇のおつきの人が、この事件の際に殴られ、数十年後に殴った将校が謝罪にくる場面が描かれているのだが、徳川侍従はかえって恐縮してしまった、二人の間に会話はなかった、もらったものは特に何の思いもなくその辺に置いておいた、というような感じで描かれているのだが、わざわざ出向いた人間に対し、しっかりと対することもなく、いただいたものに関しても適当に扱い、それが本に載るということはそのことを誰かにどこかで語っているのだろうが、そういうことを平気で語れてしまうあたりが、やはり一般人と恵まれた皇室の傍で生きてきた人間の感覚のズレが大きく、先にも書いたがこのように恵まれた状況にいる人間たちの感覚の麻痺した状態が、戦争を終わらせることを長引かせてしまったのであろう。

客観的に描写しているようで、無意識的に、かなり皇室や上層部に同情的なこの本、読んでいて結構怒りがこみあげてくる本だった。
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いわさきちひろ 子どもへの愛に生きて [その他 本]


いわさきちひろ 子どもへの愛に生きて

いわさきちひろ 子どもへの愛に生きて

  • 作者: 松本 猛
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/11/01
  • メディア: 単行本



「いわさきちひろ」は私が尊敬する人物のひとりで、彼女に関する本は何冊か読んでおり、このブログにも載せていた気がするのだが、探したがなかった・・・。

彼女の情報は確かに色々な本で知ってはいたのだが、やはりこのような形で生まれてから亡くなるまでの伝記というスタイルだと全体像がみえて、彼女の人となりがとてもよく分かり良かった。

ある程度裕福な家に生まれ、かなり自由主義的な教育を受け、過酷な戦争を生き抜き、一回目の結婚に失敗し、共産党員になり、職業画家として独り立ちし、再婚し、子どもを育て・・・と本当によくわかった。様々な人との出会いによって、人格というものは形成されていくんだなあ、ということをこの本を読んであらためて感じた。

彼女の人としての素晴らしさが彼女の絵には本当によくにじみ出ていると思う。
もう一度「ちひろ美術館」に行ってみたいなあと思った。
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学びの本質を解きほぐす [その他 本]


学びの本質を解きほぐす

学びの本質を解きほぐす

  • 作者: 池田 賢市
  • 出版社/メーカー: 新泉社
  • 発売日: 2021/04/09
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



図書館で、ある本を探していたらカウンターのそばに置かれているこの本を見つけ、題名と目次を見て興味を持ち借りて読んでみた。結構わかりやすい言葉で書かれているし、一つ一つは理解できるのだが、じゃあ最終的にこの本の内容を誰かに伝えてみてください、と言われれると結構難しい。じっくりメモを取りながら読めば行けるのだろうが、正直この年になるとそれも面倒だ。とはいえ、とっても示唆に富んだ、そして学びの本質を解きほぐそうとした、題名に偽りのない素晴らしい本だと思う。

簡単に筆者の主張だと私が思ったものを言うと、現在のというよりここ数十年の日本の教育は、

「あるべき子供(人間)の姿」がまずあり、それにうまくハマるような人間をつくる教育を行っている。
「変化の激しい社会に適応していなかければならない」
        という考えがまずあり、それに適応できるような準備をする教育を行っている。

これは、そもそも方向性が逆なのではないのか、というのが筆者の考え方なんだと思う。私も同感だ。教員になってからずっとそれは思ってきたし、今でも思っているし、その構造を変えるために、学校組織に働きかけをしてきたし、生徒にも働きかけをしてきたつもりだ。それによって変わったものもあるが、変わらなかったものもある。何にしろ、社会全体が共有していている刹那的な考えは、変えることはかなり難しい。

以下、気になった箇所を少し挙げておきたい。

p.56
「「不登校問題」とは、子どもたちが学校に行かなくなること自体の問題なのではない。なぜ子どもたちは学校に行かなくなるのか、その理由や原因を子どもの側に求めていることがもつ問題である。そして、教員をはじめ支援者と称する人たちが、この問題に気がついていないという問題である。この問題構造が問われない限り、「不登校」に対してどんな対策を取ろうとも、想定される効果が得られることはない。」

私は日々働いていて常に思うのだが、何か問題が起きたとき、そのこと自体を解決しようと皆躍起になる。しかし、一時的にそれが解決できたとしても、結局何も解決したことにはならないのだ。問題にすべきはそれが生まれた構造であり、その構造をなくすことで後で起こる可能性のある問題も怒らなくなる可能性が低くなるのだ。しかし、誰もこの考え方に同調しようとはしない。そんな悠長なことは言っていられないと。。。

p.69
「OECDが求めていることを一言で言えば、ますます高度化する技術革新によって予測困難になっていく未来社会に適応していくために教育を改革する必要がある、ということになる。~(中略)~ICTに関する企業側からの課題(いかに利益を確保するか)が先にあって、それに当てはまるように教育的効果を後付け的に宣伝しているように映る。~(中略)~しかし、このような「予測不可能な」社会に対応してくために必要なものを現時点でなぜ特定し、準備できるのだろうか。」

本当にそう思う。文部科学省が様々な「力」を提示し、それに基づいて様々な教育内容を押し付けてくるのだが、そのほとんどすべてが理解できない。

p.78
「社会の急激な変化やそれによるさまざまな困難が起こることは否定できないが、それは、「適応」すべき課題ではなく、「解消」すべき課題ではないのか。その状況に合わせて学校を改革するのではなく、人々が困難に陥るような社会にならないように改革していく方策を考えるべきではないのか。」

全くその通りだと思う。人間誰しも安定した生活を求める。だからこそ保守的であり伝統を守ろうとするのだ。しかし、いい伝統は保ち守るべきだとしても、人間を貶めるようなものは破棄されるべきだろう。

p.106 フレイレの『被抑圧者の教育学』からの引用。
「本来の解放とは、人間化のプロセスのことであり、何かを人間という容れ物に容れる、といったものではない。~(中略)~解放とは実践であり、世界を変革しようとする人間の行動と省察のことだる。」

名言である。「知的」であるとは、現状をよりよきものに変革しようと考え行動できることなのだ。

p.112
「このように考えると、学びは対話の中でしか成り立たない。所有することはできず、したがって、何かの準備としてため込むような性質のものでもないということになる。学力や能力、そして学習をこのようにイメージできれば、これまで述べてきた日本の学校教育がかかえる諸問題が何に基づくものだったのかもすっきりと見えてくるのではないか。」

私が常日頃考えていることと完全に一致する。

p.129
「いろいろなことを知り、いろいろなことができることを「自立」とすれば、「自立」しているかどうかは、その人がいかに多くの「依存(依頼)」先をもっているかにかかっている。つまり、より多くの関係性の中で生きていくことが「自立」した生き方であるということになる。「自立」とは、依存(依頼)先をたくさんもつことなのである。」

これは、「障害」の章で語られていることなのだが、「障害者」と言われている人は肉体的であったり知的であったり、ある程度わかりやすい部分で人に依存する面があるのだが、我々全ての人間は様々なことを人に依存し、依存されるという関係性の中で生きている。これは非常に示唆に富んだ素晴らしい視点だと思うのだ。

LGBTもそうだし、障害者の問題もそうだし、先の不登校の問題もそうなのだが、我々はそういったことを「問題」にしてしまう前提的価値を問い直す必要があるのであり、そうした構造こそが解決すべき問題なのだ。(p134~135)

p.141
「原則的に言えば、学ぶことは権利なのだから、学んだことへの評価・評定は控えなければならない。」

これには激しく同意する。「教育=評価」だということを声高に叫ぶ教員は多い。評価のない教育活動はありえない、と。そうすると「教育」とはなんなのだろう、と私は思ってしまうのだ。人はそもそも自ら学ぶ意欲があるはずなのだ。評価などしなくとも、個々人の学びが成り立つことを支援してあげられれば教育として良いのではないだろうか。

私は、昔から「車椅子体験」「アイマスク体験」「障害者の話を聞く」といった活動に非常に違和感を覚えてきた。これが本質的な問題の解決につながるのだろうかと常に思ってきたのだ。このこともとりあげて次のように言っている。

p.150
「「相手の立場に立って」考えるという方法が人権教育の中で実践されることは多いが、そこでは、「自分たち」と「彼ら」とは異なる「立場」であることが前提とされている。」

われわれが一時間程度その立場に立ったとしても常にその立場にある人のことは本質的にはわからない。様々な障害物を生み出してしまっている社会構造に目を向け、それを変えていく努力ができるような方向を我々は目指すべきなのだ。同じようなことが違う言い方で述べられているのが次の箇所だ。

p.152
「「女性とは何か」、「黒人とは何か」という問を立ててしまうと、定義を確定しようとする方向に思考が流れていく。~(中略)~そうではなく、「女性であるとは何か」、「黒人であるとは何か」、そして「障害者であるとは何か」という問いを立てたなら、「女声」「黒人」「障害者」がどのような関係の中で被差別な存在として成立してくのかを知ることになる。「障害者」等の存在が社会的にどのようにつくられてくるのか、そのことを知ることになる。」

p.191
「人権教育にとっては、まずは、いま自らが生きている一定の歴史的条件の中にある社会についての分析が不可欠となる。そして、そこでの人びとの暮らしをどう理解してくか、それを踏まえて社会をどのように変革していくかを問うことになる。」

お涙頂戴の人権教育はもうたくさんなのだ。「戦争は悲惨だからやめるべき」という浅い考えでは現状を社会を変革していくことはできないのだ。もっと根本的な部分から考えていかなくてはならないのだ。

「やるべきことがたくさんあり、それを強要されている教師ができることは限られているのでは」という問いに対して筆者は素晴らしい答えを最後に用意してくれている。

p.245
「教育公務員として求められることを実行しながら、果たしてそれが可能かどうかと疑われるかもしれない。
 しかし、それは簡単なことだと感じている。つまり、子どもとともにある教員が、どのような価値を大切にしているかは、直接的な言葉になっていなくとも、確実に子供たちに伝わるからである。本当に、それぞれの子どもたちの生活の様子、生き方に向き合おうとすれば、不登校をその子の心の問題としてとらえたり、成績向上に躍起になったり、障害があるから別教室に行かせたり、道徳教育でいじめをなくそうとしたり、校則で厳しく指導したり、といったことにはならないはずである。~中略~仮に表面的には規定通りのことをしていたとしても、その教員が本当は何を大切に考えているのか、そのことは、ほんの小さな表情の変化やつぶやき、あいづちなどを通して、確実に子どもたちに伝わる。原則論さえ自分の中に定着していれば、おのずと実践のあり方は変化してくる、と楽観している。」

このことば、私の20年間の教員生活からも、「事実である」と自信を持って伝えたい。
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