SSブログ
文学 イギリス Harold Pinter ブログトップ
- | 次の30件

a Slight Ache [文学 イギリス Harold Pinter]


Complete Works: One : The Birthday Party/the Room/the Dumb Waiter/a Slight Ache/a Night Out/the Black and White/the Examination

Complete Works: One : The Birthday Party/the Room/the Dumb Waiter/a Slight Ache/a Night Out/the Black and White/the Examination

  • 作者: Harold Pinter
  • 出版社/メーカー: Grove Pr
  • 発売日: 1990/11
  • メディア: ペーパーバック



ピンターのa Slight Acheを読み終わった。
これも40ページ程度の作品ですんなり読めた。
ある夫婦が庭の植物の話をしている場面から物語は始まる。
その後wasp(蜂?)が現れそれを殺すか殺さないかの議論がなされる。その時妻のFloraはwaspはbiteするから危険だ、と主張するのだが、旦那のEdwardはbiteしない、と強弁する。何故?と思っていたところ、Edwardは「waspはbiteではなくstingするのだ」と主張する。だからどうした、という感じなのだが、彼の作品にはこうした言葉を細かく使う様子がよく挿入される。これも何かを主張したいのだろうが、全体の流れの中でどのような位置づけがあるのかはよくわからない。
突然、Edwardは目が痛いと言い出す。この挿話もあまり引っ張られないのだが、最終的な結論と密接に関わっているのだと思う。
数日前からマッチ売りの男性が家の裏側にずっと立っているとEdwardが言い出し、Floraに家に連れてこいという。押し問答があった後、結局彼を家に連れてくる。
ここからEdwardとマッチ売り、Floraとマッチ売りの対話がなされるのだが、マッチ売りは一切話をしない。
ここでもマッチ売りと両者は実は昔からの知り合いなのではと思わせるセリフが出てくるのではあるが真実はわからない。
さらにFloraとマッチ売りは性的にちょっと怪しい関係なのではと思わせる場面も出てくる。
最終的にはFloraとマッチ売りが二人で庭に消えていくのだが、それぞれが結局はどういう関係なのかはわからないまま幕となる。

本当にいろいろな読み方、見方ができる、謎の多い作品である。



The Dumb Waiter [文学 イギリス Harold Pinter]


Complete Works: One : The Birthday Party/the Room/the Dumb Waiter/a Slight Ache/a Night Out/the Black and White/the Examination

Complete Works: One : The Birthday Party/the Room/the Dumb Waiter/a Slight Ache/a Night Out/the Black and White/the Examination

  • 作者: Harold Pinter
  • 出版社/メーカー: Grove Pr
  • 発売日: 1990/11
  • メディア: ペーパーバック



全集の3作目、The Dumb Waiterを読み終わった。こちらも30ページ強の作品なので一日で読み終えられた。

今まで読んだPinter作品の中では最もわかりづらかった。
BenとGusという人物が地下室に住んでいる。登場人物はこの2名だけだ。
途中半分位まで噛み合っているのかいないのかわからないような話題がいくつも出てくるのだが、このふたりがどのような人物で、どのような職業なのかまったく見えてこない。
基本的にBenは自分から話そうとせず、GusがひたすらBenに質問したり話しかけるような形をとっている。
彼らが交わす話の内容も不穏なものが多く、8歳の女の子が猫を殺した話を始め血なまぐさいものが多く出てくる。
途中までGusという人物は知的障害を持った人物、もしくは頭がおかしい人物なのかと思っていた。しかし話が終盤に差し掛かるにつれ、実はGusこそが正常な精神をもった人物であり、Ben始め、Benを影で取り巻いている連中こそが頭のおかしい人物なのではないかと思い始めるのである。

物語の途中をすぎたあたりに、壁から突然メッセージを含んだ昇降機が降りてくる。これをきっかけに話は一気に進む。次第に、彼らの職業は殺し屋であり、彼らは雇われているに過ぎず、ひたすら次の指令をまっており、お茶も満足に飲めないほど苦しい生活を強いられていることがぼんやりとわかってくる。

こうした息の詰まるような状況に耐え切れなくなったGusと、そうした状況を冷静に淡々と受け入れようとするのだが、Gusの純真さに惑わされ、心乱されるBenの心の動きがぼんやりと読者の前に見えるような仕掛けになっている。
最後は何らかの指令をうけたBenがGusを殺そうとするのだが、すぐには殺せずお互い見合って幕となる。

巨大な組織の中で翻弄されながらも人間性を失わずに生きていこうとする人間と、そこから抜け出せず、ひたすら命令に忠実に生きようとするのだが、心のどこかでひっかかっている人間を描いているのだろうと思われる。

非常に興味深い作品ではないだろうか。

The Room [文学 イギリス Harold Pinter]


Complete Works: One : The Birthday Party/the Room/the Dumb Waiter/a Slight Ache/a Night Out/the Black and White/the Examination

Complete Works: One : The Birthday Party/the Room/the Dumb Waiter/a Slight Ache/a Night Out/the Black and White/the Examination

  • 作者: Harold Pinter
  • 出版社/メーカー: Grove Pr
  • 発売日: 1990/11
  • メディア: ペーパーバック



Harold Pinter Complete Works 1のthe Roomを読み終わった。30ページほどの作品なのですぐに読み終えられた。

前回のthe Birthday Party同様、場面は題名にもなっているとおり、一つの部屋だけだ。
初めにBertとRoseという夫婦が登場する。Bertはこれから仕事に出かける模様で、体を温めながら雑誌を読んでいる。はじめこの二人しか登場せず、この二人の会話がメインとなるのだが、Bertは一切言葉を挟まない。Roseがひたすら話すのだが、Pause(間)を置く事によって、それがモノローグ(独白)にならず、なぜだがダイアローグ(対話)になってしまう。これは簡単そうでかなり難しい手法だと思う。実際演技するとなるとBert役の人もRose役の人も、かなりの演技力が必要となってくるのではないだろうか。

そんな中、Mr.Kiddというこの家(この家がどのような大きさの家でどんな構造をしているのかも物語からはさっぱりわからないが、相当広い家なのだろうとは想像できる)の管理人っぽい人が登場する。RoseとこのMr.kiddが再び会話をするのだが、今度はこれがダイアローグになっているようで話がうまく噛み合っていない。一方的に話をした方が会話っぽくなり、お互い話をした方が会話っぽくならないというのは不思議な感じがするが、現実世界では実はこのようなことがよく起こっているのではないだろうか。

BertもMr.Kiddも出て行ったのち、不思議な若い夫婦Sand夫妻がドアの前に現れる。彼らはこの家の管理人を探していて、RoseがそれはMr.Kiddだと言うと、自分たちは違う人物が管理人だと言われたんだと述べる。The Birthday Partyでもそうだったが、誰が本当のことを言っているのかわからないのだ。

ちなみに、行きの電車でこの作品を読み終えてしまったので、帰りの電車でPinter自身が書いたWriting for the TheatreというIntroductionを読んだのだが、「真実と真実ではないことを区別することは難しい」と述べていた。まさに彼の作品ではそれが具現化されているのだ。確かにとっつきづらく読みづらい劇作家であることは間違いないが、作品を通していろいろな問題提起をしており、読みながら(観劇しながら)深く考える余地を我々に与えてくれている作家であることも間違いない。

話は戻るが、Sand夫妻はその管理人の名前を地下の「声」に教えてもらったというのだ。実体のない声だったが確かに聞こえたのだという。そして彼らは出て行く。するとすぐにMr.Kiddが戻ってきて地下の「声」の人物がRoseに会いたいといっていることを伝える。初めは激しく拒否するRoseだったが結局会うことにする。

現れたのは目も見えず耳も聞こえない黒人。二人がわけのわからない会話をしているところへ夫のBertが戻ってくる。そしてこの黒人をボコボコにして幕が降りる。

正直一つ一つの会話が成立していそうで成立していなかったり、ただ単に会話をしているだけでその会話が物語の大筋にかかわってくるわけではないので、一つ一つの会話を覚えておくことはできない。しかし物語の中(舞台上)では何かが起こっているのだ。それが何なのか常に常に考えながら読み(観)続けなければならない。本当に緊張を強いられる作家だ。

ちなみにThe Black and Whiteという2ページの小編小説も読んだが、飲み屋らしきところにあつまる人々を描いた作品(だと思われるの)だが、正直よくわからなかった。


The Birthday Party [文学 イギリス Harold Pinter]


Complete Works: One : The Birthday Party/the Room/the Dumb Waiter/a Slight Ache/a Night Out/the Black and White/the Examination

Complete Works: One : The Birthday Party/the Room/the Dumb Waiter/a Slight Ache/a Night Out/the Black and White/the Examination

  • 作者: Harold Pinter
  • 出版社/メーカー: Grove Pr
  • 発売日: 1990/11
  • メディア: ペーパーバック



Harold PinterのComplete Works 1を読み始めた。全部で7作品収録されているが全部読み終わってからだと内容、感想を忘れてしまう可能性が高いので、なるべく作品ごとに書きたいと思っている。

The Birthday Partyはある民宿のようなところに長期滞在しているStanleyという人物の誕生日を、その民宿の女主人と、突然やってきた二人の男、近所の女の子(?)が祝ってあげるという物語なのだが、とにかく謎だらけだ。
この長期滞在しているStanleyはピアニストらしく、かつてはConcertも催したことがあるらしいが、彼の父親のせいでその後うまくいかなくなったらしい。が、後でやってきた二人の男との会話を読むと、彼は本当にピアニストなのかわからず、彼がどこまで本当のことを言っているのか全くわからない。
民宿らしき場所の女主人のMegはこのStanleyに惹かれているっぽいのだが、この二人の距離感も非常に微妙だ。そしてStanleyを追って来たかのような印象を与える謎の男たちGoldbergとMcCannも結局最後まで正体がわからない。
最終的にはこのふたりが、パーティーで心身ともにやられてしまったStanleyを医者のところに連れて行くと称して連れ去ってしまう。しかもパーティーの夜、謎の男の一人Goldbergと近所の女の子(?)Luluは肉体関係を結んだらしく、すぐに出て行ってしまうGoldbergにLuluは憤慨するが、Goldbergはお構いなしに民宿らしき場所をあとにする。

正直謎だらけでよくわからなかった。Harold Pinterは不条理演劇と言われることもあるのだが、この作品が不条理だとは思わない。常に頭を使いいろいろなことを想像し考えながら読まないと物語はさっと流れていってしまう。

物語にも登場人物たちにも簡単に自分の心を同化させることができない。そう言った意味で、ブレヒトとは質が違うが、彼の作品も異化効果を狙った作品と言えるのではないだろうか。

もう少し色々な作品を読むことで彼の特徴を掴んでみたい。

The Hothouse [文学 イギリス Harold Pinter]


The Hothouse: A Play (Pinter, Harold)

The Hothouse: A Play (Pinter, Harold)

  • 作者: Harold Pinter
  • 出版社/メーカー: Grove Pr
  • 発売日: 1999/03/01
  • メディア: ペーパーバック



最近演劇のチラシを見ているとHarold Pinterという名前をよく目にしていた。調べてみるとノーベル賞も受賞している作家らしい。ということで、いつもの癖でさっそくHarold Pinter Complete Works全4巻を買ってしまった。4巻は絶版(?)らしくとにかく日本で現在手に入らないので中古でイギリスから取り寄せることにした。まだ届いていない。
そしてCompleteとあるのにこの作品集に収録されていない作品が多々あるらしい。そのなかの一作がこのThe Hothouseだ。日本語では『温室』と訳されているらしい。面白そうだったので単独で買った。

初めにRooteとGibbsという2人の人物が登場する。この2人は仕事場の上司と部下だというのが会話から分かる。そして6457という人物が話題になる。Gibbsは「彼はつい最近死んだ」というが、Rooteは信じない。その食い違いを丹念に解いていく模様が非常に面白い。
そして他にもいろいろと登場人物が出てくる。それぞれが短い言葉で会話を進めていくが、なかなか全体像がつかめない。
読み進めるうちにここはおそらく病院のようのところで彼らはそこのstaffだということはわかるが、いろいろなものがぼんやりしたまま話は進んでいく。
そして6459という女性がクリスマスイブの今夜出産したことが判明する。しかし父親はわからない。この施設が始まって以来、患者(?)の女性が出産するなんてなかった、ということで父親探しが始まる。
その過程でわけのわからない取り調べ室のような電気の通った部屋のようなものが登場する。しかしこの部屋の位置づけもよくわからない。
そして最後はGibbsを除いた全てのものが、Theyという正体不明のものたち(これも私の読みが甘いのかもしれないが)により・・・。
そして6457の死も6459の妊娠も・・・。
という内容。全てがぼんやりした状態で進むのだがそのぼんやりした中で交わされる緊張感のある会話が非常におもしろい。不条理作家と言われるらしいが全く不条理とは感じなかった。これを舞台で見たら確かに面白いだろうなあと思った。
他の作品も楽しみだ。

- | 次の30件 文学 イギリス Harold Pinter ブログトップ