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Three Tales of My Father's Dragon [文学 アメリカ]


Three Tales of My Father's Dragon

Three Tales of My Father's Dragon

  • 作者: Ruth Stiles Gannett
  • 出版社/メーカー: Listening Library (Audio)
  • 発売日: 2006/04/11
  • メディア: CD



日本では『エルマーのぼうけん』で知られる、このシリーズ。全三巻を聴き終わった。
子供向けの作品は、使われている英語の構文などは非常に単純なのだが、普段使わないような具体的な名詞が結構多発するので、実は分からない部分が多い。

道で拾った猫に、ある島で動物達に酷使されている竜の話を聞き、主人公エルマーがその竜を助けにいく第一巻。
助けた竜と一緒に自分の家まで帰るまでの様々な出来事を描いた第二巻。
竜が自分の家族の下へ帰るが、自分の家族が人間に囚われてしまっており、その家族を竜とエルマーで救い出す第三巻。

どれも、現実的なものを用いながらも、夢にあふれており、非常に面白かった。
そして改めて、人間というものは、いつから動物や架空の生物と会話が出来なくなってしまうのかなあ、と思った。
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The Good Earth [文学 アメリカ]


GOOD EARTH

GOOD EARTH

  • 作者: PEARL S.BUCK
  • 出版社/メーカー: WASHINGTON SQUARE PRESS
  • 発売日: 2012/12/25
  • メディア: ペーパーバック



パール・バック著The Good Earthを読み終わった。
パール・バックは『神の火を制御せよ』というアメリカの原爆開発を小説化した本を読んだ事が有り、とても面白く、その人が書いたこの『大地』という本を学生時代からずっと読みたいと思っていたのだが、なかなか機会に恵まれずここまで来た。

日本では『大地』はだいたい4巻本で売り出されており、このThe Good Earthはその第1巻にあたる部分しかカバーしていないらしい。
あらすじ等読むと、貧しい農夫が結婚し、真面目で堅実な妻と協力しお金持ちになり、子宝にも恵まれハッピーエンド、というような話なのかと思っていたが、確かに大枠はそうなのだが、結構内容は激しいものだった。まあ、小説なのだから、ある程度グロい部分がないと、盛り上がりに欠けるのだろうが・・・。

確かに真面目で堅実な農家の夫婦が成功する物語なのだ。がその過程がすごい。彼らは一財産作りそれを元手に、アヘンや女で困窮してしまった金持ちの大地主から土地を買い取るのだが、その元手は、盗みで得た財宝なのだ。飢饉で困窮した町が混沌状態になり、そのどさくさにまぎれてお金持ちの家に入るこみ、そこで高価な財宝を盗み出すのだ。何か成功するきっかけとなる元手が盗みで得たものというのは何となく残念な気がした。
そして金持ちになったあと、主人公のWang Lungは妾を買い取る。これにより、結婚以来ずっとひたむきに尽くしてくれた第一夫人O-Lanを苦悩に追いやり、最終的には死に至らしめる。O-Lanの最期のの瞬間、息子夫婦達に言葉を残すのだが、そこでも、「妾のことは一切気にかけなくて良い」というのだ。綺麗に死んで生かせるのであれば、最後は妾を許して終わっても良い気がするのだが、そうさせないところに、パール・バックの凄さを感じた。
さらに、Wang Lungにとっての悩みの種であった叔父夫婦を破滅させるために、彼らにアヘンを与える、というのも物凄いと思った。

これは、堅実な美しい心をもった農家の夫婦の成功物語ではない。どんなに美しく見える人間も必ず汚い一面を持っており、どんなに成功して幸せそうに見える人間も実は色々な苦悩を持って生きており、最後までその苦悩を持ったまま死んでいくんだ、ということを伝えてくれる本である。
スタインベックの『エデンの東』やシドニーシェルダン?の『ゲームの達人』に近い、イメージの本だった。続きは彼らの息子世代がどういう人生をたどるか、という内容らしいが、息子たちにはあまり興味を惹かれなかったので、もう読まなくても良いかなと思っている。
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the Catcher in the Rye [文学 アメリカ]


The Catcher in the Rye

The Catcher in the Rye

  • 作者: J.D. Salinger
  • 出版社/メーカー: Little, Brown and Company
  • 発売日: 1991/05/01
  • メディア: マスマーケット



the Catcher in the Ryeを読み終わった。
この本は、昨年の紀伊国屋洋書セールで買ったのだとは思うのだが、何故買ったのか今ではもう思い出せない。
その当時、アメリカ文学に少しはまっていたのかもしれない。

まあ、とにかく、順番が回ってきて、読んでみた。
村上春樹そのものという感じがした。はじめ数ページ読んでみて、村上春樹はこの作家をそのまま翻訳したのではないか、というくらい、同じような感じだった。とにかく、なにか事件や会話があり、逸れに対して、主人公(語り手)が意見を言ったり、思ったりするのだが、何となく物事を斜めに見ている感じだったり、きざな感じだったり、関係ありそうだけれども関係のないことであったり、とにかく話の筋には関係ないことが多数出てくるのだ。
ジェイムス・ジョイスの『ユリシーズ』ではないが、人は、見たもの聴いたもの読んだもの触ったもの食べたもの、様々な感覚器官で感知したものからさまざまな発想をするのは間違いない。そしてそれをすべて文字化しようとしたジョイスの手法は斬新だった思う。
が、サリンジャーのこの作品と、村上春樹のはすこしキザな面が前面に出すぎていて鼻につく。

とはいえ、英語だからかもしれないが、村上春樹作品よりは、言葉が素直に入ってきた。

内容は・・・。

世間で言われているほど、「大人社会の欺瞞に反発している若者」を描いた作品とは思えない。主人公Holdenは周りの人間とうまくやっていくことが出来ない性格である事はまちがいない。217~219ページのHoldenの一人語りが彼のこの性格をこれ以上ないほど表している。この部分に私はかなり共感する。

つまりこの小説は、「大人社会の欺瞞に反発している若者」を描いた作品なのではなく、「社会の中で自分の場所を見つけ出すことが出来ない若者」を描いた作品なのであり、何をやっても社会の中でうまくやっていけない、若者達の共感を得てきた作品なのではないだろうか。

前にもかいたかもしれないが、世間には一般に言われている作品解説と全くちがった作品が多い。カミュの『異邦人』、スティーヴンソンの『ジキル博士とハイド氏』などはその代表例であろう。

是非、先入観なく、この作品を読んでみてほしい。それでもHolden=「大人社会の欺瞞に反発している若者」と見えてならそうなのであろう。がはじめからそう思って読むのとは絶対違って見える部分があるはずだ。

ものすごく面白い作品ではないが、村上春樹作品よりはメッセージ性はあり、得るものはあった気がする。
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Death of a Salesman [文学 アメリカ]


Death of a Salesman (Penguin Plays)

Death of a Salesman (Penguin Plays)

  • 作者: Arthur Miller
  • 出版社/メーカー: Penguin Books
  • 発売日: 1998/10/06
  • メディア: ペーパーバック



仕事の関係でDeath of a Salesmanを読んだ。
かつて、世界各国の戯曲を読み漁っていたときがあり、フランスでは、モリエール、ドイツではブレヒト、シラー、ヴェーデキント、イギリスでは、ハロルド・ピンター、アメリカでは、テネシー・ウイリアムズと、とにかく色々読んでいた。世界の有名な戯曲家を探していたとき、当然、アーサー・ミラーの『あるセールスマンの死』も読書候補に挙がった。が、あらすじ等を見ていてどうしても心惹かれず読まずじまいだった。

そして今回読んだわけだが・・・。
やはり、あらすじどおりだった。

英語も読みやすいとは決していえず、戯曲の割には読み進めるのに時間がかかった。
かつてやり手のセールスマンだったウィリー・ローマンは、歳をとり、販売実績も上がらず、長男のビフとの関係も悪い。久しぶりに帰ってきたそのビフと弟のハッピー、妻のリンダとのやり取りを通して、この家族の現状に至ってしまった過程が明らかになっていくのだが・・・。

う~ん。正直家族のそれぞれが、調子が良いときにこそしっかりとした努力をせず、権力や外面的なものをかさに、その時その時のありのままの自分を受け入れず、やりたい放題やった結果、その付けが回ってきた、というだけの物語の気がするのだ。確かに自分の心の弱さというものと正面から向き合うのは難しいのだとは思うのだが・・・。

ハロルド・ピンターのように、読んでいる最中・読後も??????は残らず、ほとんど思考することがなかった。

個人的には心に残るところがほとんどない作品だった。
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In His Steps [文学 アメリカ]


In His Steps

In His Steps

  • 作者: Charles M. Sheldon
  • 出版社/メーカー: Fleming H Revell Co
  • 発売日: 1993/12/01
  • メディア: マスマーケット



久しぶり(半年ぶりくらい)に洋書を一冊読み終わった。
高校三年生の定期テストの題材を探している時に出会った本。あらすじなどを読むと面白そうだったので全部読みたいと思い購入した。

ある牧師がある事件をきっかけに、自分の行いがイエスの教えにあっているか(What would Jesus do?)ということを常に考えて行動するようになり、自分の教会員たちにも、この指針にそって動くことを働きかける。
もちろん、反発する人もいるが、多くの人は賛同し、資本主義と悪徳に汚されていた社会が少しずつ変わっていき、それは他の都市へと広がっていく。

とにかく素晴らしい本だった。出てくる人々の心がとにかく美しく、心が美しいだけじゃなくて皆行動が伴っているところが本当に良かった。

美しい女性たちが、皆最後は素晴らしい男性と結婚するところも良かった。

とにかく、美しい物語で、自分の行動も見直して生きていかねばと思わせる作品だ。

全世界に翻訳され、今までに3000万部が売れているというのもわかる気がする本だった。
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ギリシア・ローマ神話 [文学 アメリカ]


ギリシア・ローマ神話―付インド・北欧神話 (岩波文庫)

ギリシア・ローマ神話―付インド・北欧神話 (岩波文庫)

  • 作者: ブルフィンチ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1978/08/16
  • メディア: 文庫



『ギリシア・ローマ神話』を読み終わった。
今まで色々なギリシア・ローマ神話を読んできたが、一番系統だっておりよみやすかった気がする。
だが、とにかく、長く飽きる。やはり自分には短編集のようなものは合わない。

目次にそれぞれの神々の名前が載っているので、どこかでギリシア・ローマの神々の名前に触れたら、この本にあたってみる、というような感じで、辞書的に使うと良いように思えた。

『イリアス』『オデュッセイア』で描かれるトロイア戦争は、この2作品では全体像がつかみづらいのだが、今回『ギリシア・ローマ神話』を読み、全体像がかなりつかめてとても良かった。

この本を読んでから、筑摩文庫から出ている『ギリシア悲劇』シリーズを読むと、ある程度、ギリシアの神々や伝説についての全体像が掴めるのではないだろうか。
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老人と海 [文学 アメリカ]


老人と海 (新潮文庫)

老人と海 (新潮文庫)

  • 作者: ヘミングウェイ
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2003/05
  • メディア: 文庫



『老人と海』を読み終わった。
大学時代、ヘミングウェー作品は、『武器よさらば』『日はまた昇る』を読んだことがあり、それなりに面白かった記憶がある。そして『誰がために鐘は鳴る』はいつかは読みたいなあとは思いながらいままで読まずにきた。そして『老人と海』解説を読むとまったく心惹かれない。が、何故かヘミングウェーというと皆この作品を薦める。

そして今回仕事上読まざるを得ない状況に追い込まれ読んでみた。
が、。。。

これは面白いのか???
基本的には漁師の老父と少年の心の交流とその漁師が大きな魚を捕らえ、その魚を陸に持ち返る過程で鮫に襲われ、その魚をほとんど食われてしまう話しだ。
最後のほうで若干魚を殺すことの意味のようなものをおじいさんが考えたり、肉体一つで自然に立ち向かうといった思想的な若干の面白さはあるものの、それほどの名作なのか、と思ってしまう。

最後の訳者、福田 恆存氏の解説の中で、「完全に男性的な作品で、(中略)女性的な文学を主流とするわが近代日本の風土にどの程度まで迎えいれられるかわかりません・・・」とある。男性的なことがあまり好きではない私には合わない作品だったのかもしれない。

ちょっと残念な作品だった。

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The Prince & The Pauper [文学 アメリカ]


The Prince and the Pauper (Annotated Book) (English Edition)

The Prince and the Pauper (Annotated Book) (English Edition)

  • 出版社/メーカー:
  • 発売日: 2017/06/13
  • メディア: Kindle版



Mark Twain作The Prince & The Pauperを読み終わった。
150ページ足らずの短い作品なのだが、結構時間がかかってしまった。
昨年末、子供と劇団四季の『王子とこじき」と鑑賞し、結構面白く、いつもの癖で原文を読んでみたくなったのがきっかけで、ここのところひたすらMark Twainを読んでいる。

物語は、全く同じ日に生まれた、見た目がそっくりの、王子Edwardと乞食のTomが、ひょんなことから二人の立場が変わってしまい、それぞれが苦労し、最終的にはHappy Endとなる話だ。

劇団四季は「人は見た目で判断してはならない」ということを前面に押し出した演出だったが、Mark Twainは「立場を変えることで、今までの自分には見えていなかったことが見えてくる」ということをテーマに物語を作っている気がする。
そして権力者による不条理な魔女裁判的なものも、かなり糾弾している。この人は、ジャンヌ・ダルクに関しても物語化しており(後日読もうと思う)、かなり魔女裁判的な社会のあり方に対して、人間の集団心理に対して、人間の精神の非合理性に対して、批判的なものの見方をしていたのだとおもう。
基本的にはMysterious StrangerWhat is man?と伝えたいことは一緒なのだと思う。人間とは何なのか。人間と呼ぶに値する精神のあり方とは何なのか、ということを物語を通して、読者に考えさせたかったのだと思う。
この作者は、『トム・ソーヤの冒険』があまりに有名で、児童文学作家のように思われることが多いが、かなり深い思想を持っており、人間の心理と世界の真理を追及していた人であり、もっと違う視点で読まれるべき人物なのではないかと思う。

The Mysterious Stranger and Other Stories [文学 アメリカ]


The Mysterious Stranger and Other Stories (Dover Thrift Editions)

The Mysterious Stranger and Other Stories (Dover Thrift Editions)

  • 作者: Mark Twain
  • 出版社/メーカー: Dover Publications
  • 発売日: 1992/02/21
  • メディア: ペーパーバック



Mark Twainの短編集The Mysterious Stranger and Other Storiesを読み終わった。
私は、ある作家にはまると、とりあえず有名作品を全部読みたくなる。ある音楽家にはまるととりあえずその音楽家の有名作品を全部聴きたくなる。そうすると家にいろんな本やCDがたまっていく。

というようなことはおいておいて、この作品集非常に面白かった。編集のコンセプトはおそらく「欲望(特に金)と人間」ということであろうとおもう。人間というものがいかに欲望(金)によって動かされ、不条理な行動・非合理な行動を取るのか、ということを様々な観点から描き出した作品が並ぶ。結論としては、欲望によって理性的な行動が取れない人間は、動物と同じ、もしくはそれ以下だ、ということなのだと思う。これは以前読んだWhat is Man?と同じことが言いたいんだろうと思う。

内容は
①The Notorious Jumping Frog of Calaveras Country
②The £1,000,000 Bank-Note
③The Man that Corrupted Hadleyburg
④The Mysterious Stranger

①はHumorous Storiesでも読んだので今回は飛ばした。
②は100万ポンド紙幣を渡された男がそれを元手に成功できるかどうかを試す話し。結局、渡された男はそれを見せるだけで、周りの人間が彼を信用し、彼はどんどん成功していく。最終的には美しい女性と結婚まで出来てしまうというもの。ハッピーエンドで終わっているが、かなり皮肉をこめた作品であり、人間は外見や見せ掛けに騙されるどうしようもない生き物だということを主張しているのだと思うのだ。
③は高潔であること、間違ったことに一切関わらないことを誇りに生活してきた町が、大金が手に入れられるかもしれない、という期待のせいで、崩壊していく過程を描いたもの。最後が傑作だ。
Former Motto : Lead us not into temptation
Revised Motto: Lead us into temptation
結局、ある程度の悪を経験しておかないと、色々な物事に対処できないということだ。
④はいわずと知れた名作。Austriaのある町の少年たち3人の前に現れた美しい生き物。彼は自分が天使だとなのる。が、名前はSatan.彼は、人の心を読めたり、簡単に人を殺せたり、人の将来を予言したりできる。魔女裁判なども扱っており、人間の短絡的行動、集団になったときの反理性的行動など、人間の不道徳性をとことん考えさせる作品となっている。結論がすごい。
Life itself is only a vision, a dream.
Nothing exists.
Nothing exists; all is a dream.
Nothing exists save empty space - and you!
There is no God, no universe, no human race, no earthly life, no heaven, no hell. It is all a dream.
簡単に言えば、すべては幻想であり、現実などない、ということだ。
以前、トウェインはニーチェ思想にかなり影響されていると書いたが、おそらく彼はニーチェ思想を超えてしまっている。

非常に素晴らしい作品だった。

What Is Man? and Other Essays [文学 アメリカ]


What Is Man?: And Other Essays

What Is Man?: And Other Essays

  • 作者: Mark Twain
  • 出版社/メーカー: Createspace Independent Publishing Platform
  • 発売日: 2015/05/06
  • メディア: ペーパーバック



Mark Twainの戯曲(?)What is man?を読み終わった。
Young ManとOld Manの会話がひたすら続く。
Old Manは「人間は機械であり、その行動・思考全てが外部的な力によってなされる」と説く。逸れに対してYoung Manは「人間は自由意志によって、崇高なる理想・理性を持って行動している」と説く。基本的にはYoung Manの疑問にOld Manが綿密に答えていく形になっており、ほぼOld Manの思想が語られる著作といってよい。そしてYoung ManはOld Manの論理を受け入れていく形になる。

これはルネサンスに始まる人間中心主義(=Young Man)に対する、アンチ近代主義・相対主義(=Old Man)という構造になっている。Old Manはかなりニーチェ思想に影響を受けていそうな言論が多い。
人間愛、自己を犠牲にした他者愛なども、実は自分の心を満足させることが、無意識的かもしれないが第一の目的となっている、という部分など、ニーチェ思想そのままだ。そして人間>動物、という考え方も否定しており人間≦動物、という考え方を様々な例を引き合いに出しながら論じる部分も非常に面白い。

このOld Manの考え方に同調するわけではないが、様々なことを批判的に見る考え方は非常に興味深い。他にも様々なEssayが収録されていたが、そこまで面白くはなく、結構最後のほうは流し読みになってしまった。

Humorous Stories and Sketches [文学 アメリカ]


Humorous Stories and Sketches (Dover Thrift Editions)

Humorous Stories and Sketches (Dover Thrift Editions)

  • 作者: Mark Twain
  • 出版社/メーカー: Dover Publications
  • 発売日: 1996/09/24
  • メディア: ペーパーバック



Mark Twainの短編を集めたHumorous Stories and Sketchesを読み終わった。
彼の名前を有名にした、
①The Notorious Jumping Frog of Calaveras County
物事は全て変化するのに、散髪屋や散髪屋に関することは変わらないことを論じた
②About Barbers
ふと耳にした単純な歌が耳に残ってノイローゼ状態になってしまい、それを友だちに話したらその友達にその状態が乗り移ってしまい、友達が大変なことになってしまう
③A Literary Nightmare
インドからイギリス女王へ、象を献呈することになり、それを船で輸送する途中、アメリカで象が消えてしまいそれを探す
④The Stolen White Elephant
南北戦争に従軍する一隊を描いた
⑤The Private History of a Campaign that Failed
賞賛されていた(?)作家Fenimore Cooperの小説が実は賞賛されるべきものではないことを述べた
⑥Fenimore Cooper's Literary Offences
Humorous StoryとComic Stroyの違いを論じた
⑦How to Tell a Story

全てがまさにHumorousでとても楽しめた。
特に、⑤は面白かった。主人公が、一人の敵の襲撃にあい、鉄砲を発射し、それにより敵は死んでしまうのだが、敵を殺してしまった後の心の葛藤があまりにも生々しかった。

p.55
*The thought shot through me that I was a murderer; that I had killed a man - a man who had never done me any harm.
*I would have given anything then - my own life freely - to make him again what he had been five minutes before.

p.56
*It soon came out that mine was not the only shot fired; there were five others, - a division of the guilt which was a grateful relief to me, since it in some degree lightened and diminished the burden I was carrying.

日本の反戦(平和)教育は、どうしても感情的な方向に流されがちだ。罪のない女・子供が多く殺される、悲惨だ、といった被害者の状況に焦点を当てて常に論じられる。それでは、男は、軍人は殺されても良いのか。軍人に罪はあるのか。そもそも人を殺すことが合法的になされて良いのか。p.55の記述は、まさに一人の人を戦争で殺すとどういう感情を持つのかということを冷静に論じている。
さらにp.56の記述は、日本の死刑制度を考える上で非常に大きな示唆を与えている。日本で死刑が行われる際、死刑執行人は数名いる。死刑執行人はボタンを押すのだが、自分が押したボタンが直接死刑囚を殺したということがわからないようにするためということらしい。これは確かに死刑執行人の心を少しは軽くするかもしれないが、やはり苦悩はすごいらしい。
下手な教育を行うよりは遥かにこの本を読んだほうが良いのではないだろうか。

とにかく全ての作品が面白かった。

The grapes of wrath [文学 アメリカ]


The Grapes of Wrath (Penguin Modern Classics)

The Grapes of Wrath (Penguin Modern Classics)

  • 作者: John Steinbeck
  • 出版社/メーカー: Penguin Classics
  • 発売日: 2014/04/03
  • メディア: ペーパーバック



John Steinbeck作The Grapes of Wrathを読み終わった。1ヶ月半くらいかかってしまった。洋書で600ページを超える分量、訛りのような言葉を使っているので、ところどころ非常に読みづらい、などなどあり、結構な時間がかかってしまった。
大学時代、新潮文庫から出ている『怒りの葡萄』を読んで、非常に感動した覚えがあるのだが、ほとんど細かい内容を覚えておらず、今回再読してみて、「こんな内容だったっけ」と驚きの連続だった。

主人公のTom Joadは最後の方で人を殺す、という覚えがあったのだが、物語のはじめで彼は既に人を殺しており、刑務所から出所したあとから物語が始まる、という出だしに早くも驚いてしまった。最後にまた彼は人を殺すのだが、「人を殺す」という一般的に言えば許されないような行為をした人間(しかも2回)を、ここまで善人に描いた作品も珍しのではないか。本当にTom Joadという青年は魅力に溢れている。

そして、もうひとつの驚きは、こんなに人が死んだっけ、という驚き。東部から西部へ職を求めて、一家が車で移動するんのだが、おじいさん、おばあさん、が死に、途中で車を降りて、自然の中へ入っていく者もいるし、途中で合流した人々と別れる場面もあるし、とにかく凄まじかった。

作者Steinbeckの資本主義、金至上主義体制への批判、共産主義社会への共感がにじみ出ており、本当に素晴らしい作品だった。

とにかく最後の場面は圧巻だった。
出産したにもかかわらず、生まれてきた赤ちゃんは息をしておらず、失意の底にあるRose of Sharonが飢えと乾きに苦しむ男性に出会って、取った行動とは・・・。

現在にもつながる、アメリカ社会の矛盾を痛烈に批判したこの作品。ぜひぜひ多くの人に読んでもらいた。

East of Eden [文学 アメリカ]


East of Eden

East of Eden

  • 作者: John Steinbeck
  • 出版社/メーカー: Penguin
  • 発売日: 2012/01/26
  • メディア: ペーパーバック



John Steinbeck作 East of Edenを読み終わった。
全部で4章に分かれており、それぞれが細かく節に分かれているので、非常に読みやすかった。

内容は、メインがTrask一家の話。そこにアイルランド系移民のHamilton家の話が交じる。
初めはTrask家のCharlesとAdamの兄弟の葛藤。
その後悪女Cathyの話になる。
ボコボコにされたCathyを助けたAdamは彼女と結婚。
二人のあいだに双子が生まれるが、実はその子はCathyとCharlesの子。
その後はこの双子、CalとAronの話へと移っていく。

はじめのCharlesとAdamの話、そこに悪女Cathyが入り込んでくるあたり、2章くらいまでは結構夢中になって読んだ。特に悪女Cathyの話は面白く、この人が登場する場面は最後の最後まで楽しめた。が、3章の途中からほかの部分では若干飽きてきた。さらに、CalとAronがAdamの本当の子ではなく、Charlesの子供だ、というふうな形にする必然性を感じなかった。
とはいえ、最後の方で再び物語が劇的な感じになってきてそれなりに楽しめた。

最後の場面を読んで、East of Edenという題名の理由がなんとなくわかった。

また機会があれば再読したい本ではある。

OF MICE & MEN [文学 アメリカ]


Of Mice and Men

Of Mice and Men

  • 作者: John Steinbeck
  • 出版社/メーカー: Penguin
  • 発売日: 2012/01/26
  • メディア: ペーパーバック



John SteinbeckのOF MICE & MENを読み終わった。
正直、あらすじ等を読んでもあまり面白そうだとは思えなかったが、The Grapes of Wrathを購入する際色々な書評を読んでいたところ、「感動的」という意見が多かったので、一緒に購入した。

洋書で100ページ強の短編。
主人公は体は小さいが頭は切れるGeorgeと体は大きいが頭が少し(かなり)弱く、力はものすごく強いLennie。
物語は、川沿いでのこの二人の会話で始まる。物語の最初ということであまり良くわからないが、とにかくLennieは小動物が好きなことがわかる。もう少しいうと小動物の毛触りが好きらしいことがわかる。この毛触り、皮膚感覚がLennieを悲劇に導くことになる。この物語では二度。一度目は何とか切り抜けられたが、二度目はどうにもならない。

この他にも一緒に働く人々が何人か出てくる。その中の一人黒人のCrooksとLennieの会話が叙情的で非常に美しい。問題を引き起こしてしまうので人と会話をすることを禁じられてしまっているLennieと、黒人であるがために人と関わることが出来ないCrooksが短い時間でお互いの距離を縮めていくこの場面が非常に素晴らしい。

そしてラストは・・・。多くの人がこのラストを読んで貰いたいと書いていたが、その理由が非常にわかる結末だった。
確かに、なんともいえない余韻が残る素晴らしい作品だった。

灰色の地平線のかなたに [文学 アメリカ]


灰色の地平線のかなたに

灰色の地平線のかなたに

  • 作者: ルータ・セペティス
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2012/01/26
  • メディア: ペーパーバック



岩波書店から出ている『灰色の地平線のかなたに』という本を読んだ。作者はアメリカ生まれ、アメリカ育ちなのだが、父親がリトアニアからの亡命者らしい。この本は、第二次世界大戦前後、ソ連がリトアニアなどのバルト三国やフィンランドの知識人に対して行った暴挙を小説化したものだ。

訳者のあとがきにもあるが、ヒトラーのナチス・ドイツのユダヤ人虐殺などはよく色々な場面で描かれるが、スターリンによるさまざまな人々への抑圧などが描かれることは少ない。もしかしたら日本で目にすることが少ないだけなのかもしれないが・・・。ナチス・ドイツは、ニュルンベルク裁判などもあり、様々なことが明るみに出たが、ソ連は色々な情報統制も行い、様々なことがまだまだ明らかになっていないのかもしれない。

物語は、リトアニアに住む大学教授の一家がある日突然(実は突然でもないのだが)、ソ連のNKVDに家に乗り込まれ、強制収容所に連行され、シベリアまで連れて行かれる話。400ページひたすら移動と強制収容所での労働場面などが描かれており、解放の場面などもないので、結構読んでいてしんどい人はしんどいんだろうなあと思われる。一応岩波書店の分類としては児童文学らしい。流石に大学教授の一家だけあり、知性もあり、行動力もあり、周りの人々に対する優しさ・愛情に溢れているので、物語を読み進める際、そこまで嫌な気分になることもない。巧みに恋愛、ミステリー的要素も組み込まれており、それでいて排泄の場面、人が死んだり、殺されたりする場面などもしっかり描かれており、読んでいて全く飽きない。

フィクションなので同じ土俵で語ることは出来ないのかもしれないが、『夜と霧』『アウシュビッツは終わらない』と並ぶ歴史的名著だと思う。

ティーパーティーの謎 [文学 アメリカ]


ティーパーティーの謎 (岩波少年文庫 (051))

ティーパーティーの謎 (岩波少年文庫 (051))

  • 作者: E.L.カニグズバーグ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2005/08/26
  • メディア: 単行本



岩波少年文庫『ティーパーティーの謎』を読み終わった。カニグズバーグ作品を読むのは『クローディアの秘密』についで、これで2冊目だ。

4人の中学生(日本で言う小学6年生?)が州主催(?)の「博学競技大会」という昔よくやっていた「アメリカ横断ウルトラクイズ」のような大会に出て、上級生を次々打ち破り優勝を果たすという物語だ。
学校内予選から始まり、町(大会)のようなものに進み、最終的には州で優勝するというような話なのだが、クラス内で選ばれた4人がそれぞれ自分たちの祖父母などを中心につながっていて、彼らのチームワークと勤勉さで優勝への道を歩んだのだ、というようなことが語られる。
3人称的な語りの部分と、それぞれのメンバーの日記のような部分が、交差しており、しかもそれぞれの視点で同じ事実を語るので、初めのうちは非常に読みづらいのだが、だんだんと話がつながってくると、俄然面白くなってくる。
ニューベリー賞というアメリカの児童文学賞を受賞した作品だけに、プロット、内容ともに素晴らしい出来栄えだ。
気楽に読めるので、疲れている時の娯楽作品としては最高なのではないだろうか。

Master of the Game [文学 アメリカ]


Master of the Game

Master of the Game

  • 作者: Sidney Sheldon
  • 出版社/メーカー: Grand Central Publishing
  • 発売日: 1988/07/02
  • メディア: マスマーケット



Sidney SheldonのMaster of the Gameを読み終わった。これで今年買ったSidney Sheldonの作品は全部読み終わった。500ページとかなりの長編であったが、たった2週間で読み終わってしまった。

彼の最高傑作と言われることも多いのでかなり期待して読んだが、深みのある作品ではなかった。
19世紀後半、Jamieというイギリス人が一攫千金を求めて南アフリカへ向かう。そこでダイアモンドを掘り当てるが、騙されてほとんど手元に金が残らない。しかも半殺しの目にあってしまう。しかしBandaという黒人に助けられる。彼と協力してダイアを奪い取り、大金持ちになる。
Jamieを騙した男に復讐するべく、娘のMargaretを誘惑し妊娠させる。JamieはMargaretを捨てるが、いろいろあって結局彼女と結婚する。彼らは2人子供を儲けるが、長男は誘拐され殺されてしまう。娘のKateはわがまま放題に育ち、Jamieが作った会社の重役Davidと結婚する。彼らはTonyという息子を儲ける。彼に会社を次ぐ意思はなく、芸術家を志す。しかし結局Kateの策略により会社を継ぐことになり結婚し双子の娘が生まれるが、その出産時に妻は死んでしまう。
その双子のEveとAlexandraは正反対の性格で、Eveは会社と資産を自分のものだけにしようとAlexandraを小さい頃から殺そうとし続ける。最終的には一応、Happy Endのような形で終わる。

いろいろな事件が次から次へと起こるので、読んでて飽きはしないが、なんの思想性もないので読み終わったあと何も残らない。アメリカと日本ではテレビドラマ化されたようであるが、テレビで見るには良いかもしれないが、文学作品としてはもう一歩。昼ドラの台本をひたすら読まされているだけという感じであった。

おそらく、今後Sidney Sheldon作品を読むことはないであろう。

The Firm [文学 アメリカ]


The Firm

The Firm

  • 作者: John Grisham
  • 出版社/メーカー: Dell
  • 発売日: 1992/02/01
  • メディア: ペーパーバック



John Grisham作The Firmを読んだ。
高校時代、この邦訳版が流行っていて、自分も買ってそれなりに面白かったのだが、本棚に残しておくほどの必要性は感じず、引越しの時に売ってしまっていた。
怪しい弁護士事務所に就職した主人公が活躍する話くらいは覚えていたのだが、話の筋などは全く覚えていなかったのである程度新鮮な気持ちで読むことができた。
英語もあまり難しくなく、ある程度のスピードでほぼ理解しながら読む進められた。

彼の就職した法律事務所はマフィアと関係があり、そのマフィアを捕まえたいFBIに、主人公Mitchが協力して内部資料をFBIに提供する。その過程でFBIの内部の人間が裏切ったり、Mitchの兄で刑務所に入れられているRayが関わったりとゴタゴタが続くが、最終的にはマフィアもつかまり、主人公たちも逃げ切り一件落着、といったところか。

しかし、やはり?の設定もある。MitchがFBIに協力していることがマフィアにバレた時点で、何故彼はすぐにFBIに逃げ込まなかったのか。そうすれば彼らはもっと安全に逃げられたし、マフィアもすぐに捕まったであろうに。まあ、小説として面白くするためということなんだろうが、やはり疑問が残った。

多読の教材として英語の勉強にはなるが、やはり文学作品としてはもう一歩な気がする。

Rage of Angels [文学 アメリカ]


Rage of Angels

Rage of Angels

  • 作者: Sidney Sheldon
  • 出版社/メーカー: Grand Central Publishing
  • 発売日: 1988/08/16
  • メディア: マスマーケット



またまたSidney Sheldonの著作を読んだ。私は、ある作家の作品を読むと、その作家のほかの作品も読みたくなる。なので、本がどんどん増えていく。今回は、AmazonでSidney Sheldon作品のなかで面白そうなものをまとめて買っておいた。なので、未読の作品がもう1作品ある。これは9月か10月にでも読もうと思っている。
で、今回読んだのが、Rage Of Angelsだ。
田舎の弁護士の娘として生まれたJennifer Parkerは将来を有望視された女性法律家。マンハッタンの検事見習いとして仕事を始めるが、初日から目覚まし時計がならず遅刻してしまう。
初裁判としてマフィアのMichael Morettiの裁判を傍聴。そこでマフィアにいいように使われてしまい犯罪者の汚名を着せられる。
法律家の資格を取り上げられそうになるが、弁護士のAdam Warnerに助けられる。
その後、弁護士としていろいろな事件で勝利をおさめ有名になっていく。そしてその過程で既に結婚しているAdamと不倫関係になり、子供を儲ける(Adamは知らない)。一度はAdamは奥さんとの離婚を決意するが、奥さんの妊娠(策略)&政界進出などにより結局は離婚しない。
Jenniferはひとりで子供を育てることを決意し、シングルマザーとしてたくましく成長していく。そんな中、子供が犯罪に巻き込まれ、その解決をマフィアのボスMichaelに頼む。そのままJenniferとMichaelは恋愛関係に。
その後だんだんとJenniferはマフィアの裁判を担当するようになる。
そして最後は・・・。

はじめから最後まで日本のドラマを見ているかのようなストーリー展開、文字がそのまま映像になるのではと思えるほどの情景描写。ベストセラーになるのも納得の作品だった。
しかし、Jenniferがマフィア裁判に関わるようになり、どんどんとマフィアの世界に浸っていく部分が、フランスの自然主義文学のだんだんと精神的に荒廃していく様子を彷彿とさせて、途中、読み進めるのが苦しくなってしまうほどだった。
最後も、結構悲劇的で、若干未来に向けて希望はあるが・・・というような終わり方であった。
500ページとかなり長編であったが、飽きずに読み切れた。


A Time To Kill [文学 アメリカ]


A Time to Kill

A Time to Kill

  • 作者: John Grisham
  • 出版社/メーカー: Dell
  • 発売日: 1992/06/01
  • メディア: マスマーケット



John Grisham著、A Time To Killを読んだ。一昨日読み終わった。洋書で500ページ以上ある本にしては速く読めたきがする。新潮文庫からも『評決のとき』というタイトルで出ている。映画化もされた作品だ。

Clantonという街で、酒に酔ったどうしようもない白人の男二人が、10歳の黒人の女の子をRapeする。犯人たちはすぐ捕まる。女の子の父親が裁判前に犯人を撃ち殺す。この父親の弁護士を引き受けたのが白人弁護士Jake。その最終判決までの様子を描いた作品。

弁護士への脅迫、黒人社会内における不正、KKKの登場、黒人と白人の対立、など様々な対立・葛藤が描かれる。
「目には目を、歯には歯を」が現代社会において許されるのか、ということだけではなく、色濃く残る人種対立・差別をもテーマにしたこの作品、非常に読み応えがあった。
作品内で数人の人間がこの対立の犠牲となって命を落とす。しかし、結論に至る上で、このなくなった人々を殺す必要性があったのかが疑問だ。しかも、あまり作品のメインチャラクターではない人々が命を落とす。そして命を落とした人間たちの親戚などの心の葛藤などは描かれない。Jakeを手伝った法学生Ellenが最後のあたりで、KKKに襲われるのだが、その後Ellenがどういう気持ちを抱いたのか、ということも描かれていない。
大きな物語の枠組みとしては楽しめたが、やはり細部が描ききれていない気がする。前にも書いたが、名作古典小説と圧倒的に違うのはこうした部分なのではないだろうか。

Nothing Lasts Forever [文学 アメリカ]


Nothing Lasts Forever

Nothing Lasts Forever

  • 作者: Sidney Sheldon
  • 出版社/メーカー: Grand Central Publishing
  • 発売日: 1995/09/01
  • メディア: マスマーケット



Sidney SheldonのNothing Lasts Foreverを読んだ。
最近育児で忙しく、疲れているので、洋書を行き帰りの電車両方で読むのは難しいので、行きは洋書、帰りは和書とわけて読んでいたら予想以上に時間がかかってしまった。

噂通り非常に読みやすい英語で、病院の専門用語以外はほぼ100%理解できた。

話はPaigeとKatとHoneyという3人の女医が公立病院で様々な出来事に出くわす話。

始めは、Paigeが患者を安楽死させたことが殺人とみなされ、訴えられ、その裁判から始まる。登場人物が様々に出てくるが始めは全く分からず、次から次へと出てくる人名を覚えきれず不安を覚えたが、本編が始まればどんどん話は進んでいき人名もすんなり頭に入ってくるようになった。

読んでいるときは展開が速いため飽きずに読めたのだが、最後の結論はあっけなく、あまり心に残るものはない。安楽死がテーマと書いてある書評などもあるが、そんなに安楽死について深く掘り下げて描いているわけではない。
さらに3人の女医に様々なことが起こるのだが、その一つ一つが解決されたり結び合わさったりすることなくばらばらに終わっていく。

ヴィクトル・ユーゴーやトルストイはそのへん、様々な人物を登場させ、様々なエピソードを重ね合わせるのだが、それが必ずどこかでつながり、クライマックスへと導いていく。やはり名作と呼ばれる古典作品は違うなあ、とこの本を読んで思ってしまった。

Walden [文学 アメリカ]


Walden; Or, Life in the Woods (Dover Thrift Editions)

Walden; Or, Life in the Woods (Dover Thrift Editions)

  • 作者: Henry David Thoreau
  • 出版社/メーカー: Dover Publications
  • 発売日: 1995/04/12
  • メディア: ペーパーバック



Henry David Thoreauの書いたWaldenを読んだ。というより、全文目を通した。
かつて観た「ラリー」と演劇の中でよく引用されていたこと、授業で扱ったテキストで取り上げられていたこともあり、そこまで興味もないのだが、買って読んでみた。そこまで興味がないものは内容理解も不十分でも良いかという思いもあるので、英語が原書のものはなるべく原書で読むようにしている。

これは筆者のソローがWaldenという湖の側に小屋を建て2年間ばかり生活した報告書のようなものである。初めのうちはなぜ自分がこのような生活をするのかというようなことを述べていて、それなりに面白く読めたのだが、だんだん、自然描写などが多くなっていく、最後の方はただただアルファベットを目で追っているだけだった。
森の中で本当に孤独に行き、ほとんど誰とも接することなく2年間を過ごしたのかと思っていたのだが、そうでもないらしく、結構人が訪ねてきたようだし、自分から近くの村にもよく出かけて言ったらしい様子が描かれている(と私は解釈した)。
日本語で訳されたものを読めばもう少し理解できる部分も多く面白かったのかもしれないが、正直5~7割よくわからなかった。イギリス系よりもアメリカ系の作家の文章の方が難しく感じる。何故なのか。

これから『エミール』の続きを読みたいと思う。


ワシントン・スクエア [文学 アメリカ]


ワシントン・スクエア (岩波文庫)

ワシントン・スクエア (岩波文庫)

  • 作者: ヘンリー・ジェイムズ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2011/08/19
  • メディア: 文庫



ヘンリー・ジェイムズ『ワシントン・スクエア』を読んだ。
今年の初めに『テヘランでロリータを読む』を読んだ。その中で取り上げられていたヘンリー・ジェイムズに興味を持ち、岩波文庫から出されている文庫の解説を読み、面白そうなものを順に読んできた。
まず『ねじの回転』『デイジー・ミラー』。続いて『大使たち』。そして上巻が絶版になっていたので様々なところを当たり探し出しついに買って読んだ『ある婦人の肖像』。そのどれもが興味深い作品だった。
今回読んだ『ワシントン・スクエア』も文庫化されていたが、文庫の解説の部分を読んでも対して面白くなさそうだったので買わずにいた。しかし、最近読んだ『ある婦人の肖像』がとても面白かったこと、『テヘラン~』を読み直しそこでこの作品も取り上げられており、かなり興味をそそられたこともあり、ついに買って読んでしまった。

内容は医者の娘で、器量も普通、性格は控えめ、教養もそこそこ、という本当に普通の箱入り娘が、モリスという財産目当ての男に求婚され、それを見抜いた父親に反対され、おせっかいな叔母さんに介入されながら、結局は振られ、そのまま独身を通すという話。
ジェーン・オースティンなどもそうなのだが、解説を読むと「何が面白いの?」と思うが、読み始めると止まらない。やはり、心理描写が優れているからなのだろうか。
本当にこの話も面白かった。この前も書いたかもしれないが、ジェイムズの描く女性は常に心が美しく、真っ直ぐだ。こういう女性に出会えるところに小説の面白さがあるのであろう。
最初から最後まで紆余曲折はあるにせよ、その女性の人生に対する、人間に対する誠実さは決して失われることはない。だからこそ安心して最後まで読み進められる。
主人公は失恋の痛手から立ち直り、ずっと主人公を愛し続けた誠実な男と最後は幸せな結婚を、という結末であればオースティン的なのだろうが、そうしないで、そっと静かに終わらせるあたりがジェイムズのうまさであろう。
とはいえ、どちらの作家も何度でも読みたくなる作家であることは間違いない。
寒いこの時期、とても暖かい作品を読むことができた。

ある婦人の肖像 下 [文学 アメリカ]


ある婦人の肖像 (下) (岩波文庫)

ある婦人の肖像 (下) (岩波文庫)

  • 作者: ヘンリー・ジェイムズ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1996/12/16
  • メディア: 文庫



昨日、遂に『ある婦人の肖像』を読み終わった。なんだかんだで2週間程かかってしまった。
そして、『大使たち』とは違い、色々なことがかなりはっきりとした形で種明かしされていった。この下巻の42章を書くためにヘンリー・ジェイムズはこの本を書いたといっても過言ではないのではないだろうか。
私は次の一節がとても気に入っている。

「イザベルの考える貴族的生活とは、要するに、広く深い知識と大きな自由との結合であった。知識が義務感を与え、自由が喜びの気持ちを与える生活のことだった。しかしオズモンドにとって、それは形式だけのことであり、意識的に計算された態度のことだった。彼は古いもの、神聖なもの、伝承されたものが好きであり、彼女も好きだったが、彼女は盲目的に受け入れるのではなく、自分の選択眼も自由に働かせるのであった。」

結局夫オズモンドは外面(形)だけを重んじ、内面などどうでもよかったのである。それに対し、イザベルは内面こそが重要であり、内面を充実させることが外面を充実させることにつながると考えていたのである。まさにここにこそイザベルがこのくだらない男と結婚した理由があり、結婚生活が破綻した理由があるのである。

イザベルは何故、このオズモンドと結婚したのか。それは、結婚とは心が全てであり、相手が財産を持っているか、帰属であるか、などは関係ないんだ、ということを示したかったからである。と私は思う。
解説には彼の身体的、性的魅力のせいだと書かれているが、決してそんなことはないであろう。彼女は自分の心を重視したかったのだ。外面にとらわれない内面を重視したかったのだ。

そしてそれはオズモンドと他の女との子ども、パンジーにも向けられる。イザベルにとってパンジーが憎むべき存在となってもしょうがないような外的要因を彼女は色々と知るようになる。しかしそれでもなお、彼女はパンジーを愛し続ける。それはパンジーを取り巻く外的なものがどのようなものであろうとも、パンジー自体の心が美しいからこそ彼女は愛し続けるのである。

イザベルとパンジー。美しい心を持つ二人の女性を中心に結末まで一気に持っていく。
暗い結末ではあるが、清々しい気持ちにさせられた。
それは、イザベルが最後まで正しいことを追い求め続け、行動する姿が清々しいからであろう。

やはりもう一度読みたくなる作品だ。ヘンリー・ジェイムズおそるべし。

ある婦人の肖像 中 [文学 アメリカ]


ある婦人の肖像 (中) (岩波文庫)

ある婦人の肖像 (中) (岩波文庫)

  • 作者: ヘンリー・ジェイムズ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1996/12/16
  • メディア: 文庫



『ある婦人の肖像』中巻を読み終わった。内容もわかってきていて、読み進めるのがかなり速くなってきた。
主人公イザベルは、マール夫人の思惑通り、財産の少ない、在欧アメリカ人と結婚することになる。
しかし、ヘンリー・ジェイムズのほかの作品と同じように、何故、イザベルが、イギリス人紳士、アメリカ人実業家の求婚を断り、何者でもない在欧アメリカ人と結婚することになったのか、はっきりとは描かれない。
そしてその夫の連れ子の修道院育ちの女の子が物語の中で重要な役割を演じるようになってくる。
あすから、下巻(最終巻)に入る。
結論を楽しみにしながら(はっきりとした結論は示されないのだろうが)、読みすすめたい。

ある婦人の肖像 上 [文学 アメリカ]


ある婦人の肖像 (上) (岩波文庫)

ある婦人の肖像 (上) (岩波文庫)

  • 作者: ヘンリー・ジェイムズ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1996/12/16
  • メディア: 文庫



ヘンリー・ジェイムズ作『ある婦人の肖像(上)』を読んだ。私はあまり、アメリカ文学、フランス文学に興味はなかった。しかし、今年の1月『テヘランでロリータを読む』という本を読み、そこで扱われていたヘンリー・ジェイムズや、フロベールの作に興味を持ち読み始めたのだ。『テヘランで~』を読まなかったら、決して手に取ることのなかった作家なのではないだろうか。
今までにジェイムズの作品は、『ねじの回転』『大使たち』『デイジー・ミラー』と読んだ。どの作品も第三者の視点から淡々と出来事を述べていくというスタイルで、慣れてこないと中々物語に入り込めない。しかし、一旦物語の中に組み込まれると、ページをめくらずにはいられなくなるという不思議な作家だ。
この作品も例外ではなく、始めはページをめくるのがしんどかった。しかし、話が展開していくにつれ、一気に読み上げてしまった。
物語は父、母を失ったイザベルという若く美しく知的なアメリカ女性が、叔母に引き取られ、イギリスへと連れてこられ、そこで出会った人々に知的刺激を受けるのだが、自分の独立心は決して失わないという物語だ。彼女は2人の金持ちの男性(アメリカ人ビジネスマン、イギリス人貴族)に結婚を申し込まれるのだが、この独立心の強さから断るという話だ。
この2人を断った後、彼女はイタリアへと向かう。そこからが中巻になる。
いまいち、結婚を断った理由が明確ではないのだが、その曖昧なままにストーリーを進めていくところがこのジェイムズの作家としてのうまさなのだろう。正直よくわからない、という感情をもったまま読者はひたすら物語に付き合わされる。そしてそのまま物語は結末を迎える。するとよくわからないからもう一回読みたくなる。というサイクルだ。まあ、ほかにも読む本があるので私はすぐには再読はしないが、絶対に再読したくなる作家であることは間違いない。
不思議な魅力を持った作家だ。

若草物語 [文学 アメリカ]


若草物語 (新潮文庫)

若草物語 (新潮文庫)

  • 作者: ルイザ・メイ・オルコット
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 1986/12
  • メディア: 文庫



オルコット作『若草物語』を読んだ。Macmillanから出ているGuided Readersシリーズでlittle womenという子供向けに簡単にしたバージョンは読んでいたのだが、とくに全部を読む気もなかった。
妻が日本語版を読みたいということで買ってあげたが、彼女はあまり面白くなかったと言っていた。せっかく家にあるのだからということで今回読んでみた。
始めからあまり期待をしていなかっただけに、それなりに楽しかった。
まあ、内容としては『高慢と偏見』と『赤毛のアン』『細雪』を足して4で割った感じだ。
メグ、ジョー、ベス、エイミー、の4姉妹が、いろいろな失敗や経験を経て、成長していく1年間を描いた作品だ。
『高慢と偏見』と同じく主人公は次女のジョー。これはオースティンもオールコットも次女だったからなのか、それとも次女を主人公としたほうが話に広がりが出るのか、どちらなのだろう。
まあそれはそれとして、4姉妹がそれぞれ違う性格で描かれており、それなりに面白い。
貧しいなかにも家族の愛を大切にしながら、お金や名誉に惑わされないような心を獲得していく様子が生き生きと描かれている。

ひとりひとりの人物描写、恋人同士が愛し合うようになる様子の描写などは『高慢と偏見』の足元にも及ばない。
失敗の程度、反省するまでの心の葛藤などは『赤毛のアン』の髪の毛くらい。
姉妹の性格の違いの描き方は『細雪』の肩くらいまで達することができるか、という感じ。

少女小説ということで、自分に娘がいたら間違いなく読ませたい作品ではある。美しい心を持つことの大切さを教えてはくれている。しかし、中学生・高校生になって再読する気になるかというと微妙なところだ。

まあ、なんにしろ読み終わるのに5日もかかってしまった。仕事が忙しくて読む時間と気力が少なかったのはあるが。。。

次の本に期待!!!


The Adventures of Huckleberry Finn [文学 アメリカ]


Tom Sawyer & Huckleberry Finn (Wordsworth Collection)

Tom Sawyer & Huckleberry Finn (Wordsworth Collection)

  • 作者: Mark Twain
  • 出版社/メーカー: Wordsworth Editions Ltd
  • 発売日: 1998/01/01
  • メディア: ペーパーバック



Mark Twain作The Adventures of Huckleberry Finnを読み終わった。いや正確に言うと目を通し終わった。

この作品はアメリカ文学の最高傑作と言われており、Tom Sawyerよりも文学的価値が高いとされている。
Huckが自ら書いたという形式をとっているので、文法的におかしな文も多々あり、最初の方は特に読みづらい。このHuckがJimという黒人と河を船にのって旅をする(というか逃亡するというか)ので当然この2人の会話が多く出てくるのだが、黒人英語はやはりわからない。
しかし、それでも、Huckが実の父親にDVを受けたり、故郷を逃げたし、Jimとあって、一緒に河を上ったりという場面はわからないなりにもわかった。しかし、いろいろな町で出会う人々との会話や情景が全く分からず、後半はほぼ理解できなかった。
途中、Tom Sawyerと再開して二人でJimを助け出すのだが、何故Tomと再開できたのか、どうやってJimを救い出したのかもイマイチわからなかった。
なので、最後の50ページくらいは英語を目で追うだけに終わってしまった。

私にとっては断然Tom Sawyerの方が面白く、分かりやすかった。

数年後、もう一度読んでみたいとは思う。その頃にはもう少しわかるようになっているといいなあ。

The Adventures of Tom Sawyer [文学 アメリカ]


Tom Sawyer & Huckleberry Finn (Wordsworth Collection)

Tom Sawyer & Huckleberry Finn (Wordsworth Collection)

  • 作者: Mark Twain
  • 出版社/メーカー: Wordsworth Editions Ltd
  • 発売日: 1998/01/01
  • メディア: ペーパーバック



Mark Twain作The Adventures of Tom Sawyerを読んだ。
大学時代、授業でMark Twainの短編集を読んだことがあり、その当時、かなり難しい英語で文章を書く人だなあ、と考えていた。そのため、今回も買って読むには若干勇気が必要だったが、家にあった『トム・ソーヤの冒険』と『ハックルベリーフィンの冒険』がかなり汚く、買い換えようと思っていた時だったので、ちょうど良いと思い原書に挑戦してみた。
あの頃から10年以上経っていて自分の英語力が上昇しているためかもしれないが、思ったよりかは普通に読めた。とはいえ、ハックの英語はむちゃくちゃだし、やはりよくわからないところも多々あった。
この本は少年文学と言われているが、イギリスやアメリカの子供たちは、The Adventures of Tom Sawyer, Gulliver's Travels, Lord of the Ringといった作品を本当に読んで(読めて)いるのだろうか、と疑問に思ってしまう。英語の単語のレベル、文章の構造などかなり難しい気がするのだが・・・。こんな本を小学校時代から平気で読んでいる人たちと、英語で対等に渡り合うこと自体がやはり無理な気がするのだが。

まあ、それはそれとして、読んだ感想としては思ったよりはドキドキ、ワクワク感はなかった。
はじめの方は家や学校でのいたずらの話なのでスケール自体はあまり大きくない。
しかし、友人に壁塗りをやらせるその方法や、ベッキー(女の子)に自分の方に気を向かせる方法など、子供のやる気を引き出す方法として、全国の教員は学ぶべきなのではと思った。何かに向かわせるためには、本人が「やりたい」という気持ちを持つことが最も重要だ。どうしたら子供たちのやる気を引き出せるのか、そのヒントがこの本には散りばめられている。

トムとハックは最終的に洞窟の中で宝を見つけ出し、大金持ちになる。そして未亡人が殺されるところを救ってあげたハックは、その未亡人に引き取られちゃんとした教育を受け始める。しかしハックはそのきちんとした毎日に耐えられず、もとの森での生活に帰ってしまう。そのハックを迎えに来たトムにハックがいう一連の言葉はとても印象的だった。
簡単に言えば、「自分はお金なんかいらない。自由気ままに自然の中で生きていたいんだ」ということだ。さすがにこの文明化した日本で、ハックのようには生きられない。しかし、ハックのような心を持って現実に対処しながら生きていきたいとは思う。

そういえば、トムとベッキーはあんなにラブラブな関係だったのか、と思った。かつて読んだ時の印象が曖昧だったのだが、トムが一方的にベッキーに言い寄っているという気がしていたのだが・・・。

しかし、流石に洋書は疲れる。最近、様々な仕事が同時に舞い込んできており、頭も体も疲れきっている。このままHuckleberry Finnを読み進めるのは難しい気がするので、明日から日本語の本でも読もうかな。

The Color Purple [文学 アメリカ]


The Color Purple

The Color Purple

  • 作者: Alice Walker
  • 出版社/メーカー: Mariner Books
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: マスマーケット



Alice Walker著The Color Purpleを読んだ。
約300ページの小説なので読み終わるのに結構かかるかと思ったが、隙間も多く、たった5日間で読み終わってしまった。
黒人が書いたという設定の小説を原文で読むのはこれで3度目だ。
1. Uncle Tom's Cabin
2. The Help
3. The Color Purple
1は世界史などでも有名な『アンクル・トムの小屋』だが、これは非常に難しかった。はじめの方は何が書いてあるのかほとんどわからなかった。読み進めるうちに少しずつは慣れてくるのだが、やはりわからない部分が結構あった。これは時代もあるとは思うが。19世紀中盤に書かれた本。つまり今から約150年も前の作品だ。読みづらくてもある程度しょうがないか・・・。
2は今年の夏、カナダへの約2週間の出張中に、三浦綾子『氷点』と並行して読んだ。こちらは結構読みやすく。ほとんどわからないところはなかった。この小説を知ったのは春に新聞でこの映画の宣伝を見てからなのだが、当然映画は見ていない。これは女性 vs. 女性、権力 vs. 被抑圧者の物語だ。被抑圧者が連帯し、小さなところから運動を広げていき、問題提起を社会に対して行い、その結果は読者が考えるという構造だ。
人間の心を信じられる女性でなければ決して書けない作品だ。
そして今回のテーマ3, the color purpleだ。
主人公のCelieが様々な出来事を神様に向けて手紙を書くという設定だ。始めは起こった事実が淡々と綴られるのだが、これが文法、スペリングなどがむちゃくちゃで正直6~8割くらいしか理解できなかった。しかも感情表現がほとんどないので読み進めるのが苦しくてしょうがなかった。
しかし、途中旦那の愛人Shugが登場してから一気に読みやすくなっていく。この愛人ShugがCelieの社会的・経済的・性的自立すべてを援助していくことになる。
そして物語のもうひとつの軸はCelieの妹Nettieだ。彼女は返事のこないCelieにひたすら自分の現状を伝える手紙を書き続ける。彼女は教育ある黒人女性という設定なので彼女の手紙はとても読みやすい。途中から読みやすくなる理由の一つに彼女の手紙が加わってくるということも大きいだろう。
彼女はアフリカへ宣教師として出向く。そこで子供たちに教育を施すのだが、アフリカの共同体の古い伝統に縛られた考えのせいで女の子達に教育を与えることができない。唯一自分の家で個人的に教育を与えることができたTashiという少女も結局はアフリカの共同体の古い伝統の犠牲になる。しかし、彼女も最後は自分の道を進んでいく。

この物語は女性の自立の物語だ。本当に感動的な話だ。黒人、女性という2重の差別を受ける彼女たちが自立へと向かっていく様子が、様々な葛藤とともに美しく描かれる。そしてその自立を生み出すのは彼女たちの連帯だ。自分の信念もないままに慣習に従って暴力的に振舞う男たち、権力者たち。しかし結局そういったものたちも信念ある人間たちには、最終的には太刀打ちできない。それを我々に示してくれている。我々は信念も持ち、行動し続けなければならないのだ。

この小説がいまだに現代社会を写した物語として読まれざるを得ないことを、世界中の男性、権力を持ち、その地位に安住している馬鹿者たちはよく考えてみるべきだ。

いつまでもこの小説が読まれ続けることを願うとともに、現代社会を映す鏡として読まれる必要のない日が来ることを切に祈る。

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