風浪 蛙昇天 [文学 日本 Classic]
木下順二戯曲選『風浪 蛙昇天』を読み終わった。
あらすじ等をほとんど読まずに読み始めたため、はじめは何を問題にしているのかさっぱりわからなかった。
「風浪」は方言が多く(というよりほぼ全て方言)なので、読みすすめるのにかなり時間がかかった。
出だし、女性数名が、家の前で平和な会話を交わしている。妾から、後妻、未亡人まで様々な人々が出てきて、正直どんな物語なのだろう、と思って読み進めたが、話は、段々と思想的な方向へ動いていく。幕末から明治に変わる激動の時代、人々がどのような思想の間で揺れ動き、行動していったのかが良くわかる。そして、男性と女性がどのような社会的役割を演じていたかの一端も見える。様々な視点で読める非常に内容の濃い作品だった。
「蛙昇天」も傑作であった。共産主義思想(赤・左)と国粋主義思想(青・右)を蛙(アカガエルとアオガエル)に置き換え戯曲化したもの。大多数の正しいと思われる意見が通らず、少数者の非人間的な意見が通っていく世界、まさに戦前・戦中の日本であり、現在の日本の姿だ。
まさに安部政権下の日本人が読み、現在の世界が正しいのかを深く考える一助となるだろう。
これで、木下順二戯曲選は全部読み終わった。全てが示唆に富み、深い思考を求める素晴らしい作品たちであった。
その多くが品切れ重版未定になってしまっているこの戯曲選。ぜひ岩波書店には復刊し、常に市場に出回るようにしてもらいたい。この国の未来のために。
2017-04-17 08:01
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