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ことり [文学 日本 小川洋子]


ことり (朝日文庫)

ことり (朝日文庫)

  • 作者: 小川洋子
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2016/01/07
  • メディア: 文庫



小川洋子『ことり』を読んだ。
単行本で発売されたとき、結構話題になったが、あらすじを読んであまり面白くなさそうだったので文庫本になってもあまり買う気はなかった。
が、ここ最近小川洋子作品を続けて読み、やっぱりこの人の作品は面白い!と思い、文庫本化されたということもあり買ってみた。

内容としては、鳥以外とのコミュニケーションがほとんど出来ず、社会で働かないまま死んで行ったお兄さんと、その兄と唯一コミュニケーションがとれる弟、主人公の「小鳥の小父さん」の一生を描いている。

大きな事件が起きることなく淡々と同じ日々を繰り返す、というのはこの作家のいつものパターンだ。その同じ日々の中に変化があり、新しい発見があり、美しいものの発見があり、その一つ一つに向ける視点、視線が本当に優しく美しい。

本来、人間の生活など同じことの繰り返しだ。子供時代は毎日学校に通い同じことを繰り返す。大人になれば毎日同じように会社に行き同じような仕事をする。そうした当たり前の日々の中に色々なものを見つけて人は幸せを覚える。

最近、「グローバル人材」などという華やかな言葉をよく目にする。国際的に活躍すること、人より秀でていいること、特別な何かをすることを、子供達は何故だか知らないが求められる。しかし本当に華やかな人生を送ることが幸せなのだろうか。もちろん華やかな人生を送ることで幸せになれる人はいる。しかし、この地上にいる99%の人は当たり前のことを繰り返し、日々のちょっとした変化に喜びを覚え、ささやかなことに幸せを感じ、人生を終えるのではないだろうか。

こんなことをこの本を読みながらしみじみと考えてしまった。

本当に心を穏やかに優しくしてくれる作家だ。
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