自省録 [哲学書]
マルクス・アウレーリウスの『自省録』を読み終わった。これも仕事上読むことになった本なのだが、恥ずかしい話だが、こんな本があることを今まで知らなかった。題名もあまり面白くなさそうだし、解説を読んでもいまいちそうだし、ぺらぺらめくっても、ニーチェの箴言集のような感じだし・・・。
ということで全く期待せずに読んだのだが・・・。
名作である。これは誰もが読むべき本であろう。
プラトン思想を引き継ぎ、キリスト思想と同様なことを述べ(キリスト教を公には認めていなかったが)、カント思想の萌芽が見出せる。最後の解説に、この本を賞したO.Kieferなる人の言葉が紹介されているが全くその通りだ。
「マルクス・アウレーリウスの宗教は・・・絶対的宗教である。・・・これはある(特定の)人種や国に属するものではない。いかなる革命も進歩も発見もこれを変えることはできない」
この書はひたすら内面を重視することを説いている。自然や死といったものをあるがままに受け入れることを説いている。ローマ帝国という大きな組織の長であったにも関わらず全く政治色がない。素晴らしい著書だ。
いかに、印象的な言葉を紹介したい。
5章8節 途中(p.77)
「いかなる自然も自分の配下にある者にたいして適当でないようなことをもたらしはしないのである。」
これはまさにキリスト思想であろう。
5章25節
「ある人が私にたいして罪を犯したって?それは彼がしょりするだろう。彼は自分の気質、自分の活動を持っているのだ。私としては現在宇宙の自然が私に今持てと命ずるものを持ち、私の(内なる)自然が私に今なせと命ずることをおこなっているわけだ。」
これはカント思想である。
5章32節
「どういうわけで技術も知識もない者の魂が技術と知識のある者の魂をみだすのだろう。そもそも技術と知識のある魂とはどんなものか。それは始めと終わりとを知る魂、すべての存在に浸透し一定の周期の下に「全体」を永遠に支配する理性を知る魂である。」
安部首相に聞かせてあげたい。
5章34節
「正しい道を歩み、正しい道に従って考えたり行動したりすることができるならば、君に一生もつねに正しく流れさせることができる。」
これはプラトン思想であろう。
6章6節
「もっともよい復讐の方法は自分まで同じような行為をしないことだ。」
これもキリスト思想であろう。
8章16節
「自分の意見を変え、自分の誤りを是正してくれる人に従うことも一つの自由行動である。」
多くの権力者に聞かせたい。
とにかく素晴らしい言葉がちりばめられている。
第1章を読むと、彼の祖父、父、家庭教師等が、彼に素晴らしい影響を与えたことがわかる。上に、5章からの引用が多いと思うのだが、5章は特に素晴らしい。同じことの繰り返しも多い作品ではあるので、とにかく触れてみたいという人は、第1章と第5章だけを読むことをお勧めする。
2017-09-06 07:32
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