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エチカ 上 [哲学書]


エチカ―倫理学 (上) (岩波文庫)

エチカ―倫理学 (上) (岩波文庫)

  • 作者: スピノザ
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1951/09/05
  • メディア: 文庫



スピノザの『エチカ』を読み終わった。
パスカル『パンセ』モンテーニュ『エセー』ニーチェの箴言集と同じような本をイメージしており、延々と日記の延長のような書きなぐりノートのようなものをイメージしていたので、全く読む気がしなかった本だが、これまた仕事の関係で読まざるを得なくなり読むことになった。

私がイメージしていたものとは全く印象の違ったものだった。
カントの『純粋理性批判』と同じように、まず様々なものを定義し、自分の証明したいものを論理を重ねて詳細に証明していく本であった。非常に硬く、分かりづらい本ではあるが、ゆっくりよめば、現代の哲学者の本とは違い理解することはできる。

全部で五部に分かれており、この上巻は三部まで。
第一部:神について
第二部:精神について
第三部:感情について

第一部の神については、神の存在証明を様々な論理を重ねて行っているのだが、正直、論がぐるぐる回っているだけな気がする。
第二部の精神については、それなりに面白く、間違った認識はどのように起こるのか、といった問題も取り上げ、プラトンの説などを取り上げながら論じている。
第三部は人間の様々な感情はどのようなものなのかということを論じていて、基本的には外部から与えられた刺激を、個人の内部がどのように受け取るか、ということを基本とした論で、説得力があり面白いが、正直あまり現代に適用できるようなものではない気がする。

以下印象に残った数節。
第一部より 
p108
「もし万物が神の再完全な本性の必然性から起こったとするなら自然におけるあれほど多くの不完全性はいったいどこから生じたのか。~中略~ 神には完全性の最高程度から最低程度にいたるまでのすべてのものを創造する資料が欠けていなかったからである。~中略~ある無限の知性によって概念されうるすべてのものを産出するに足るだけ包括的なものであったからである。」

この一文には感動した。人々は(一神教の)神を批判するとき、完全であるはずの神が何故不完全なものを創ったのか、というものがある。
わたしは今まで明確な答えが出せずにいた。しかし、この『エチカ』を読み、この一説に出会って明確な答えが出せるようになった。人間の考える完全性など所詮人間の考える完全性であり、神の考える完全性はまったくちがうものなのであると。つまり、不完全なものを含むものこそが神にとっては完全なものだということだ。

第三部より
p.290
「愛とは外部の原因の観念を伴った喜びである。~中略~愛とは愛する対象と結合しようとする愛するものの意志であるという定義は、愛の本質ではなく、その一特質を表現するに過ぎない。」

これもすばらしい。愛なんて所詮自己満足である。相手のことを思いやるべきではあるが、結局行き着くところは自己満足である。そうなったとき、所詮は相手からもたらせれるなんらかのものに内部のものが反応し、喜びの感情をもった状態、それこそが愛なのだ、というこの定義は完璧な気がする。

退屈な部分も多いが、はっとさせられる部分もある本だった。

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