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Silas Marner [文学 イギリス]


Silas Marner (Penguin Classics)

Silas Marner (Penguin Classics)

  • 作者: George Eliot
  • 出版社/メーカー: Penguin Classics
  • 発売日: 2003/04/29
  • メディア: ペーパーバック



George Eliot作Silas Marnerを読み終わった。
Eliot作はMiddle Marchに続いて2作目。とはいえおそらくこれで彼女の作品を読むのは最後であろう。

Silas Marnerは岩波文庫でも出ていて(現在:品切れ重版未定状態)日本人にもそれなりに知られている作品らしい。Middle Marchは洋書で700ページを超える大作だが、Silas Marnerは150ページ強の短編(中篇?)。そうした気軽さもあるのかもしれないが、やはり内容が圧倒的に日本人好みといえる。

まあ、簡単に言ってしまえば、人生に絶望した社会から弧絶した中年男の前に、突然孤児の女の子が現れ、その女の子を育てることで、中年の男が社会に入って行き、人間性を取り戻すという日本人が大好きなお涙頂戴系の作品。

とここまで書くと、この作品をバカにしているように思われるかもしれないが、とても良い作品。全体の2/3ほどが、主人公Marnerの苦難の人生を描いており、後半1/3ほどで、孤児Eppieが登場する。ここに、Cass家とWinthrop家という二つの家族が絶妙に絡んでいく。ストーリーはMiddle March同様抜群に面白く、どんどん読み進められるが、やはり単語レベルは相当高い。

Middle Marchは大作であることももちろん関係していると思うが、非常に印象に残る言葉が多く、考えさせられることが多かったが、Silas Marnerは印象に残る言葉は少なくて、基本的にはストーリーを楽しむという感じが強い。まあその辺も日本で受ける理由なのであろう。

が、この作品には2点解せないところがある。
1点目:Eppieの母親はCass家の長男と結婚していたのだが、どのように結婚していたのか、そしてその結婚状態をどうやって周りの人間に隠していたのかが、詳しく論じられていない。
2点目:MarnerとEppieがどのように愛情をお互い育んでいったのか、もう少し様々なエピソードを交えながら描いて欲しかった。幼児期のお世話が大変な時期が少し描かれた後、章が変わり、Eppieは一気に結婚適齢期となってしまっている・・・。

恋愛と親子愛で違うのかもしれないが、話の感じとしては、同じイギリスの女流作家シャーロット・ブロンテが書いた『ジェイン・エア』に似ている。上記2点を小説の中でしっかりと描いていたら、『ジェイン・エア』並みの長さになったのかもしれない。とても面白く、良いお話なので少し残念に思った。

とはいえ、素晴らしい作品ではあるので、是非岩波には復刻してもらい、いつでも手にとれる状態にしてもらいたい。

最後に一つだけ、印象に残った一節を。
Silasが成長したEppieを連れて行かれそうになったときに発した言葉。

It's me she's been calling her father ever since she could say the word.

生みの親より育ての親。この一節を読んだ時、若干涙がこぼれそうになってしまった。
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