アスパンの恋文 [文学 アメリカ]
ヘンリー・ジェイムズを久しぶりに読んだ。
一時、彼にはまり、色々と読んだ時期があった。その当時から、この『アスパンの恋文』が、岩波文庫から出ているのは知っていたが、彼の作品の多くと同じように、あらすじを読んでもたいして面白そうではなく、私のあまり得意ではない、短中篇ということもあり、読まずにいた。しかし、最近、この本が「品切れ重版未定」状態にあると知り、思わず、ブックオフを探し回って購入してしまった。
内容は、アスパンというアメリカの偉大な詩人(当然架空の人物)を研究している「わたし」が、アスパンが送ったといわれる恋文の相手の家に、もぐりこみ、その恋文を手に入れようとするというもの。
本当にこれだけの内容であり、主要な登場人物は、
①わたし
②ミス・ボルドロー(アスパンの恋の相手)
③ミス・ティータ
以上である。他にも数名召使などが登場するが、ほとんど言葉などは発しない。しかも、空間としては、②の広いお屋敷だけ。これだけ、限られた空間、限られた人物しか出てこないのだが、とにかく面白い。ページをめくるごとに次に起こる出来事を知りたくなっていくのだ。
③のミス・ティータはハイミスということなのだが、対して容姿の描写もなく年齢等も明かされない。とても謙虚、素直、従順、控えめな女性で、一昔前の日本女性を彷彿とさせる。明治・大正時代の日本の自然主義小説に登場してもおかしくないようなキャラクターの女性だ。読んでいるうちに私は彼女に感情移入していってしまったので、最後の結論部分では少し悲しい気持ちになってしまった。
あらすじだけを読むと本当につまらなそうな作品なのだが、非常に面白い。出だしの数ページの読みづらい部分を乗り越えればあっというまに読みきれる作品だ。こうした作品がもっと日本中で出回っても良いのになあと思う。
2018-09-12 07:21
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