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ファウスト 第一部 [文学 ドイツ]


ファウスト 第一部 新訳決定版 (集英社文庫)

ファウスト 第一部 新訳決定版 (集英社文庫)

  • 作者: ゲーテ
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2004/05/20
  • メディア: 文庫



10年ほど前、ブックオフで、集英社から出ている新訳『ファウスト』全2巻のハードカバー・バージョンが500円で売られており、この作品に昔から興味があり、かつ読みやすそうだったので購入して読んでみた。が、正直全く意味が分からなかった。話の筋すらよく分からなかった。これは『若きウェルテルの悩み』を読んだときにも感じたもので、ゲーテは自分に合わないのであろうと思い、そのまま放っておいた。

が、やはり様々なところでゲーテの『ファウスト』は引用されたり取り上げたりしており、もう一度ちゃんと読まなくてはと思っていた。
そんな中、一年位前、本屋をぶらぶらしていると、あの『ファウスト』が文庫本になっているのを知り、購入しておいた。

そして、今回は多少時間がかかっても良いからじっくり読んでみようと思い、丁寧に読んでみた。それでもやはり、メフィストフェレスとファウストの会話以外は良くわからない部分が多かったが、後に付された解説も参考にしながら読み進めたところ結構よくわかり、楽しむことが出来た。

主人公のファウストは、多分医者。お父さんは町の人々にとても慕われていた医者でその後を継いでいるっぽい。さらにファウストは様々な学問も修めており、神学などにも精通している。まさに道徳的にも出来た知識人といった感じの、「教養人」の典型のような人物。

そこに、悪魔メフィストフェレスが登場する。「ファウストを誘惑できるか」という賭けを神としたのだ。

ファウストはメフィストが現れる前から、若干様々なものに懐疑的になっており、この世でなにかを極めても、神の視点から観ればたいしたことではない、とまさに信心深い人・知識人ならではの自己嫌悪に陥り自殺を考える。復活祭の騒ぎのおかげで自殺は思いとどまったものの、その心の隙間をメフィストに襲われ、地上での快楽と引き換えに魂を売る血の契約をしてしまう。

そのあと、若返りの薬を飲んだファウストは、町の敬虔で無垢なグレートフェンに恋をし、近づき、肉体関係を持ち、子どもを孕ます。グレートフェンとファウストの逢引のために、グレートフェンの母親と兄は死んでしまう。子供ができたことを知らないファウストはメフィストに誘われるまま遊びに明け暮れる。
一方のグレートフェンは‘婚前交渉=悪’という考え方の元、町の人々に冷たい目で見られ、子供を殺してしまう。その罪に問われ、彼女は牢屋に入れられる。グレートフェンが牢屋に入っていることを知ったファウストは彼女を助け出そうとするが、グレートフェンはかたくなに拒み、最後は魂の救済を得て天に召される。

とても素晴らしい様々な要素が入った作品だ。道徳人・知識人の苦悩。ヨブの苦難を彷彿とさせるような聖書のテーマ。個人と共同体。感情と理性。扱っているテーマは今にも通じるところであり、ファウスト、グレートフェンの持つ苦悩は、現代の男女でも同じように持つであろうものである。

結局ゲーテがこの作品を通して何を伝えたかったのかはわからないが、人間の心の弱さを描きたかったのであろうとは思う。本当に面白い作品だった。

第二部も少し読み始め、第一部とは全く違う雰囲気とテーマを持った作品っぽいが、人間の心の弱さを描いていることでは同じようである。こちらの第二部は前回読んだとき第一部以上に意味不明だったのでじっくり読みたい。
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