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二十四の瞳 [文学 日本 Classic]


二十四の瞳 (岩波文庫)

二十四の瞳 (岩波文庫)

  • 作者: 壺井 栄
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2018/05/17
  • メディア: 文庫



ずっと前からその存在は知っており、読みたいとは思いながらも、あまりに映画として有名なこの作品をずっと敬遠してきた。

昨年の5月に岩波文庫初登場になったとき、「これはいい機会だ」と思い購入しようと思ったのだが、うちにあるたくさんの本を思い浮かべ、これ以上買わないほうが良いかな、と考え買うのを思いとどまった。
が、今年のお正月、ブックオフに足を運んだところ、この本が売られているのを目にし、もうすぐ期限切れになってしまう割引券があったこともあり、購入した。

物語はよく知られているように、教員と子ども達の心の交流を描いた、反戦思想の色濃く出た作品。
幸せな学校空間、戦争による悲劇、最後は涙で締めくくる、という確かにありきたりの小説なのだが、読んでいるうちに、当時と今とでは何が違うのだろうと感じながら読んでいた。

学校生活にも支障をきたしてしまうような貧困、権力者の目を気にしながら出ないと行えない教育活動、少し目立ったことをするとそれを排除しようとする小さな地域共同体、不条理な女性蔑視、本当にこの国は100年前から、その根本精神を大きく変えることなくここまできてしまったことを実感する。

私は、心は変えられると思っている。共同体のあり方は変えられると思っている。社会は変えられると思っている。国家は変えられると思っている。世界は変えられると思っている。しかし、それは簡単なことではない。不条理なこと・不合理なこと・不公正なこと・不公平なことに対して目を背けることなく、絶えず批判的にそこに目をむけ、正しいやり方でそれを変革するための努力を重ね、自分の内面を常に磨いていくために不断の努力をしていくことが必要なのだろう。

最近、世の中は「あきらめ」ムードが漂っている。見せ掛けの美しさ・華々しさに心を向けさせようとする権力者の考えがあらゆるところに行き渡っている。

本当に大切なものは何なのか、本当に残していかなければならないものは何なのか、本当に作っていかなければならない社会はどのようなものなのか、真剣に考えなければならない時期がきているのではないだろうか。

この本の中で描かれているような悲劇が二度と起こらないことを心から祈る。
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