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ドン・カルロス [文学 ドイツ]


ドン・カルロス―スペインの太子 (岩波文庫 赤 410-4)

ドン・カルロス―スペインの太子 (岩波文庫 赤 410-4)

  • 作者: シルレル
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1955/01/05
  • メディア: 文庫



シラー作『ドン・カルロス』を読み終わった。

今年はオペラやバレエの原作を多く読んでいる。
今年に読んだ様々なそうした原作本を読む前までは、「映画や舞台芸術でアレンジされた作品は、決して原作を越えることはない」と思っていたのだが、結構原作を超えている作品が多かった。原作の持つ冗長さなどが、なくなりとてもしまったものになっていたり、ストーリーを少し改変することで、より分かりやすくなるなどしている作品が多かった。

そして、シラー作品も色々とこれまでに読んできたが、有名なわりにはもう一歩という印象の作品が多かった。
『オルレアンの少女』などは、ジャンヌ・ダルクがそもそも持つ人間的素晴らしさを完全に消してしまっているし、『群盗』や『ウイリアム・テル』などにしても、悪くないが、流れが強引だったり、ストーリーがぎこちなかったりした。『たくみと恋』などは結構素晴らしかったが、そこまで感動的なストーリーとまでは行かなかった。『ワレンシュタイン』なども若干光る台詞などもなくはないが、全体としてみるともう一歩な感じだった。

ということで、この『ドン・カルロス』も対して期待をせずに読み始めた。岩波文庫の復刊にありがちな旧字体の本で、読みづらかったが、読んでいるうちにどんどん引き込まれた。王子と、父王の妃の恋愛、父と子の確執をメインに据えたストーリーなのかと思いきや、テーマは完全に、「人類愛」&「人間の心の美しさ」。

お互いがお互い疑心暗鬼になっており、皆が心理戦を繰り広げており、その辺の緊張感もたまらなくよかった。シェイクスピアの『ハムレット』『ロミオとジュリエット』『オテロ』を融合したかのような作品で、非常に面白かった。

白眉となる場所が第三幕第十場の王とポーサ侯爵の対話。
完全に世俗的な権力欲丸出しで、人を疑ってばかりの王に対して、ポーサ侯爵の世界人・自由人としての人間的素晴らしさを対比させた場面だ。本当に素晴らしい。長いので引用はしないが、138ページのポーサ侯爵の、「何故王である自分に、官職を求めに来ないのか」という問に対して答えた箇所が非常に美しく素晴らしい。あまりにもすばらしいので、やはり最初の一文だけ引用しておきたい。

p.138
「実はーーーわたくしは、王侯の奴僕(ぬぼく)には成り兼ねるのでございまする。」
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