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アンデルセン童話集 3 [文学 その他]


完訳アンデルセン童話集 3 (岩波文庫 赤 740-3)

完訳アンデルセン童話集 3 (岩波文庫 赤 740-3)

  • 作者: ハンス・クリスチャン・アンデルセン
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 1984/05/16
  • メディア: 文庫



『アンデルセン童話集』の三巻を読み終わった。あまり有名な作品は収録されておらず、どれも短めの作品が多かった。基本的には身近にある物が命を持って、頑張って動こうとするが、最終的には壊れたり流されたりして死んでしまうという系統の作品が多い。キリスト教思想を色濃く反映したものも多かった。

全体的にそんなに面白くはなかったが、何点か気になった作品を紹介したい。

「影法師」
自分の影法師にとなりの家の様子を探りに行かせたところ、いつの間にかお金持ちになって帰ってきて、最終的には、人間のほうが、自分の影法師の影法師になってしまい、最終的には一国の王様になった影法師に人間のほうが処刑されてしまうという話。この間読んだシモーヌ・ヴェイユの『自由と社会的抑圧』にも言及されていた作品で、人間が道具の道具にされてしまうという現代を先取りしていたような作品で若干恐ろしい。

「柳の木の下で」「イブと小さいクリスティーネ」
この二つはどちらも幼友達の男の子と女の子が婚約するが、時代の流れ、様々な事情により、離れ離れになり、女の子の方はお金持ちと結婚するが、男の子の方は職人になり、女の子への愛を心に抱いたまま生きていくというもの。
「柳の~」の方は、女の子は金持ちと結婚しそのまま幸せに、男の子はその様子をみて失意のどん底に陥り、生まれ故郷で幸せな夢を見ながら死んでいくというもの。
一方
「イブと~」の方は、女の子は金持ちと結婚するが、その後すぐに没落していき、惨めな死に方をしていくというもの。やはり私は純愛を好むとともに、純愛を貫く人を好むので、後者の物語の方が心落ち着く。

もう一つ非常に心に残った一節
「最後の日に」p.167
自分では神に忠実に何も悪いことをしてこなかったので、死んでから天国へ行けると思っていた男が様々な現実を天使に突きつけられ、改心する物語なのだが、次の一節が私がいつも思っていることと一致していて面白かった。
とがった石に足を傷められた男が何でこんなところに尖った石があるのかを天使に問うた時に言われた言葉。
「それはおまえが落とした不用意な言葉の一つひとつなのだ。それらの言葉は、今これらの石がおまえの足を傷つけたよりもはるかに深く、おまえの隣人の心を傷つけたのだ。」
我々が発する言葉は尖った包丁のようなものであり、常に人の心を傷つける可能性があるものなのだ、ということを常に意識して生活したいと思う。そして常に意識しているにもかかわらず、毎日のように誰かの心を傷つけてしまい、反省する毎日だ。

やはり生きることは苦悩の連続だ、とこの本を本で改めて思った。

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