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言葉の力 ヴァイツゼッカー演説集 [学術書]


言葉の力 ヴァイツゼッカー演説集 (岩波現代文庫)

言葉の力 ヴァイツゼッカー演説集 (岩波現代文庫)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2009/11/13
  • メディア: 文庫



大学時代、ヴァイツゼッカー大統領の「荒野の40年」演説を岩波ブックレットで読み、その後数回読んで、そのたび毎に感動していた。最後に読んでから10数年読んでいなかったが、あるとき、岩波現代文庫から彼の演説を集めた本が出ていると知りずっと読んでみたいと思っていたものだった。

とにかく素晴らしかった。全部で11の演説が収められているのだが、あらゆることに対し真摯に向かい合い、弱者に対して、女性やマイノリティの人々に対して常に優しい視線を向け、そういった人々にまずは心を向けるべきであることを直接的にではなく、様々なことを通して聞いているものに語りかけている。過去との向き合い方も素晴らしく、常に反省的・批判的視点を持って過去を見つめ、常に自らが主体となってあらゆることに関わっていこうとする姿勢が見られる。

現在の日本の権力者、それはj国家・企業・団体どんなレベルにおいてもこれほど素晴らしい人格と思想を備えた人物はまずいないのではないだろうか。自分や自分の周りの人間たちの利益に汲々として全体を全く見渡せない人間ばかりだ。ヴァイツゼッカーの思想の根本にはキリスト教思想がある。彼の演説を読んでいると、やはりキリスト教思想というのは、素晴らしいと感じてしまう。翻って自分の周りにいる仏教に関わる人間たちを見ていると、本当に品がなく、お金のこと・自分の利益のあることにしか意識が向いていないな、と感じてしまう。
プラトンが言う、最も権力を望まない人間こそが権力を持つべきだ、という言葉を体現しているような人物だと言える。


最後に、ヒトラーに抗した「白バラ」ショル兄妹を記念した演説での言葉を引いて終わりにしたい。

pp.182~183
「ですが、自由は責任であります。これは自由を制限することではなく、またしても自由を危険にさらさないための前提です。責任をとろうとし、とることができるーこれこそ自由が政治的に生き延びていく上での条件です。
  しかし、仮に自由が快適なしてき生活のためだけに奉仕するようなら、
  仮に自由の活動の場が、不十分な道徳的・社会的条件の下で利益を求める努力を
  助長するモノとメディアの市場だけにあるのなら、
  仮に自由が参加しないことを容認するというだけにとどまるなら、
  仮に自由が他人の運命に無関心のままでいるようなら、
  つまり仮に自由が連帯へと通じていかないのなら、
  長い目で見て自由は生きる力をもちません。

どこかの国の人々並びに権力者たちに是非とも読んでもらいたい言葉である。

あまりにも素晴らしすぎる本だった。
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