手のひらの京 [文学 日本 綿矢りさ]
私は谷崎潤一郎の『細雪』が大好きだ。かなり長い作品だが、全く長さを感じさせず、さらに4姉妹が非常に個性豊かに描かれており、谷崎特有の性的な描写も少なく、安心して谷崎の美しい文体とストーリーを楽しめる。
この綿矢りさの『手のひらの京』は綿矢版『細雪』と呼ばれているらしい。ネット情報によると、実際『細雪』と川端の『古都』に触発されて書いたものらしい。
京都で育った三姉妹の恋愛模様を書いた作品だが、細雪同様それぞれが恋愛に対して様々な観点をもっており、実際の恋愛の仕方もいろいろでとても楽しめた。特に次女の羽依の美人だが若干ハチャメチャな感じの恋愛遍歴、それでいて様々なことを敏感に感じ取る感性が絶妙なバランスで描かれておりとても良かった。
綿矢りさの素晴らしいところは、集団で動く女性たちの背後にある心の動きや、その行動を取らせる動機みたいな部分を細かく描くところだ。すごく女性ならではの視点でとても面白い。
結婚適齢期を若干すぎ、恋に若干臆病な感じの大和撫子的な長女綾香も良いが、やはり恋愛にほぼ興味がなく研究に勤しみ、自然の持つ力みたいなものを敏感に感じ取る三女凛がとても魅力的だ。
とても面白かった。図書館で借りて読んだが、所有していても良いと思わせる作品だった。そして川端康成の『古都』もぜひ読んでみたいと思った。
2021-08-04 18:00
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