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エッセイ 生きること・育てること [文学 日本 松谷みよ子 エッセイ]


松谷みよ子の本 (第10巻) エッセイ

松谷みよ子の本 (第10巻) エッセイ

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1996/05/29
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



この章は、彼女の生きてきた道を綴ったもの。彼女の少女時代、戦争時代について書いたはじめの方の作品がかなり印象的だった。

「灰色の街の花屋さん」
少女時代から自分が何故物書きになったかまでを綴った作品だが、前章にも言及されていた父親の言葉が印象的。

p.131
「お父様はね、政治より芸術の方が上だっていうのよ。だからものを創る人間になれ、って。ただし、一流の人間にだぞ、って。」


「軍国少女の敗戦」
この作品は、彼女の戦時中の様子が事細かに書かれており、平和教育の題材にもなりうる素晴らしいエッセイだ。

p147~148
「その後、「民話の手帖」という雑誌で「現代民話考」を連載。そのなかで「軍隊」を集めた。この仕事を通じ、私は私の知り得なかった加害者としての戦争や軍隊というものの一端をようやく知り得たように思う。」
日本の平和教育は、空襲や原爆など、被害の側面をことさら強調し、その悲惨さを訴えるが、加害の歴史にちゃんと光を当てなくては、本当の意味で平和な世界を築いていける人間は育たないであろう。


「ひとつひとつの葉っぱが光る」
これは戦後、自らで「勉強」の意義を見つけ出したことに関するエッセイ。その中の印象的な一節。

p.150
「自分が他を冒していることに気がつかない人は鈍感です。そんなことはいやだ。私はひっこんでいる、とそう思って、ひっこんでいても、それはそれなりにその存在は、自らの意識しないところで他を冒しているかもしれません。」

この気持ちを持てるか持てないかが人間として生きていく上で非常に重要だと思う。


前半は、かなりシリアスなエッセイが多く、読み応えがあった。
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