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むかえびと [文学 日本 藤岡陽子]


むかえびと (実業之日本社文庫)

むかえびと (実業之日本社文庫)

  • 作者: 藤岡 陽子
  • 出版社/メーカー: 実業之日本社
  • 発売日: 2018/05/18
  • メディア: Kindle版



資本主義に犯された心のない院長の経営する産婦人科で働く、真摯で美しい心を持った助産師たちの物語。藤岡陽子さん特有の、善の心を持った人、悪の心を持った人、という感じの完全なる描き分けが深みがないという感じを持つ読者もいるのかもしれないが、彼女は善と悪を対比させることにより、まっすぐひたむきに生きる善の人の美しい心を描いているのでこれはこれで文学作品の形として素晴らしいものだと思う。

出産をする女性たちの様々な思い、命の重さ、出産前診断など様々なテーマを相変わらず描いており、彼女が得意の医療・法律という分野も上手く織り交ぜられ、今作品は若干ミステリー的要素もある。すごく感動して涙がボロボロという類の作品ではないが、結構ドキドキして速く先を知りたいと読書のスピードがあがってしまう作品だった。

p.127
「当たり前ですけど、命って平等じゃないですよね。」
 中略
「生まれてくる段階で、すでに選別されるじゃないですか。生まれるのを許される命と、許されない命があるじゃないですか。そういうこと平気で、人間はしますよね。」

p.137
「助産師をやってていつも思うんですよ。昔々のずっと昔から、女の人はこうやって女の人を労ってきたんだろうなと。昔は男が狩りでいない時なんか、女だけで過ごしますよね。子供を守って。だから女性は本来、痛みや苦しみを分かち合うのがうまいきがします」

p.148
「私はね、自分を必要としてくれる場所にいたいだけなの。私にとっては、それが生きるってことなのよね。だから必要とされるように努力してる。それだけ」

様々なことを真剣に考えさせられる良著だと思う。
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