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アンジェリーナ 短編③ [文学 日本 小川洋子 短編]


アンジェリーナ 佐野元春と10の短編 (角川文庫)

アンジェリーナ 佐野元春と10の短編 (角川文庫)

  • 出版社/メーカー: KADOKAWA
  • 発売日: 1997/01/23
  • メディア: 文庫



佐野元春ファンの小川洋子さんが、佐野元春の歌に触発されて作った10の短編を収録した作品。

1.アンジェリーナ
踊れなくなってしまったバレリーナの女性と、男性の心の触れ合いの作品。何となくさみしげな雰囲気が心に残る。

2.バルセロナの夜
図書館を舞台にした、ある恋人たちの悲恋を、幻想的に描いた作品。こちらも余韻が残る。

3.彼女はデリケート
「レンタルファミリー」という仕事をする彼女を持つ男の話。実際そんな仕事はないのだろうが、本当にありそうな職業で、読んでいるうちにどんどん引き込まれる。女優や舞台に立つ女性などを恋人に持つ男性の心境も同じような感じなのだろうなあと思いながら読んだ。こちらも何となく切ない。

4.誰かが君のドアを叩いている
朝起きると自分の足が自分の足でないかのように無感覚になってしまい、ほかの感覚もどんどん失っていく話。後の『密やかな結晶』に近い世界観を持った作品。怖い話なのだが何故か美しい。

5.奇妙な日々
彼女と久しぶりに家でディナーを楽しもうと夕食の準備をしていたら、変なおばさんに家に入り込まれ勝手に電話に出られてしまい、彼女は結局家に現れず・・・。という作品。どこまでが現実でどこまでが幻想の世界なのか微妙な感じの作品。

6.ナポレオンフィッシュと泳ぐ日
水族館巡りが好きな主人公が、学生時代ホテルのバイトで出会った不思議な青年との出会いを切なく描いた作品。それなりに面白い。

7.また明日
小川洋子節満載の、声に偏愛してしまった男の話。最後は自分も声になってしまう。これもある意味『密やかな結晶』に近い感じ。

8.クリスマス・タイム・イン・ブルー
クリスマスの悲しい2つの思い出を綴った作品。これも悲しい作品なのだが何故か暗さがなくどこかしら爽快感が感じられるのは不思議。

9.ガラスのジェネレーション
女の子の、高校時代の辛い失恋を描いた作品。結構ストレートな作品と思って読んでいると、最後で大どんでん返しが待っている。最後のセリフがひねりが効いていてよい。

10.情けない終末
これも、ある女の子の、彼との誕生日にケーキをダメにしてしまった思い出を綴った作品。


全体的に、何かの出来ごとによって、過去の思い出が蘇るという感じの作品が多い。初期作品に特徴的な、人間の残酷性がそこまでなく、ひとつひとつも何となく暖かい雰囲気に包まれており、結構読みやすい作品集。

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