メイド・イン・京都 [文学 日本 藤岡陽子]
題名にあまり惹かれず読まないでも良いかな、と思っていた作品だが、彼女の作品をほぼ全て読みすすめてきたので、せっかくなので読んでみようと思った本。かなりよかった。『おしょりん』含め藤岡洋子さんの作品は題名で買ってみようと思わせる本が少ない気がする。しかし読むとかなり面白く感動的だ。彼女の作品の真髄である内面を重視した作品作りということなのか・・・。
結婚を機に今まで勤めてきた会社を辞めて、京都に嫁ごうとしていた美大出身の主人公美咲。しかし色々なことが重なり、婚約者とうまくいかなくなり、一時冷却期間を置いてみようということに・・・。そんな中ふとしたことから、手縫いのT-Shirtsを売ることになり、紆余曲折があり最後は成功へ、というサクセスストーリー。そこに大学時代から美咲に片思いしていた陶芸家の佳太が絡んでくる。主人公級の人の真っ直ぐで真摯な姿勢がこの本でも貫かれており読んでいてとてもさわやかな気分になれる。
藤岡陽子さんの作品のうまさは、主人公の男女がくっつきそうでくっつかない微妙な関係を継続させ、最後くっつくかどうか、というところで終わらせるところだ。しかも二人共不器用ながらもとっても良い人なのでどうしても応援したくなってしまう。
この本を読んでsuper beaverの「正攻法」という曲を思った。
「正攻法でいい、まっすぐでいい、まっすぐがいい
斜めに構えるせいで、綺麗なもの、見逃してしまいたくないな
正攻法でいい、まっすぐでいい、まっすぐがいい
正直者はいつだって、馬鹿のその先を見ている」
この本の印象に残った言葉
p.92
「人の手の痕跡がある洋服を身に着けなさい。そうしたら美咲の人生を豊かなものにしてくれるからね」
p.257
「十川さん、運というものは、どこかから降ってきたりはしません。空が雨や雪を気まぐれに落とすようには、運は降ってきませんよ。運は、人が人に与えるものなのです。人が、人に運んでいくのです。」
中略
「運を良くしたいと思うならば、人に信用されることです。運は信用に値する人間のもとにしか訪れません。」
どちらもとても良い言葉だと思う。真摯に努力を続けるすべての人たちに送りたい言葉だ。
今回はボロボロ泣く、という感じのストーリーではなかったが、勇気づけられる作品だった。
2022-04-09 04:49
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