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小川洋子対話集 エッセイ④ [文学 日本 小川洋子 エッセイ]


小川洋子対話集 (幻冬舎文庫)

小川洋子対話集 (幻冬舎文庫)

  • 作者: 小川 洋子
  • 出版社/メーカー: 幻冬舎
  • 発売日: 2010/08/05
  • メディア: 文庫



1. 田辺聖子
2. 岸本佐和子
3. 李 昂 + 藤井省三
4. ジャックリーヌ・ファン・マールセン
5. レベッカ・ブラウン + 柴田元幸
6. 佐野元春
7. 江夏豊
8. 清水哲夫
9. 五木寛之

再読

1.田辺聖子さんの作品は浪人時代かなりお世話になった。「落窪物語」「枕草子」「源氏物語」など古典の名作を分かりやすい形で現代語訳で出してくれていたからだ。しかし彼女の小説時代はあまり興味がなく今まで一度も読んだことがない。小川洋子さんとの対談を読んでちょっと興味がそそられるかとも思ったが、初めて読んだとき同様、ほとんど興味がわかなかった。何故だろう・・・。瀬戸内寂聴同様、有名で古典文学も訳したりしているのだが、何故か読む気がしない・・・。

p.41
小川「結局、小説というのは、ストーリーとか役に立つ教えとか、論理とかじゃなくて、ほんとうに些細な、小さなことの積み重ねで支えられているものだなというふうに思います。」


2. この本の白眉。小川洋子さんと、岸本佐和子さんの控えめながら芯のある生き方が二人の対談から伝わってきて、二人とも自分とかなり近い性質を持っているのがわかりとても楽しく読めた。

p.69
小川「小学校六年生くらいからかな? 極端な心配性に陥っちゃって、それは今でも続いているんです。ですからね、岸本さんの本の中で「私はつねに何かを心配している」っていう一言が、「あ、自分と同じ」だって思えてうれしかった。たとえば、明日、岸本佐和子さんと対談するとなったら、そこに怒り得る最悪の事態を想像するの、全部。」

p.71
岸本「私もそうですが、私の一大イベントって、郵便局に行くとかなんですけど。」
小川「私もそうですよ!あ~今日は銀行で家賃を振り込んだ!うーん、やれやれみたいな感じですよ。」

「私もそうですよ!」と読みながら心の中で叫んでしまった。こういう感覚って元気に生きている人には通用しないんだろうなと思う。

P.78
小川「「私、これ書きたい!」っていうような図々しさはなくて、「いや、私、ちょっと書けないんですけど・・・・・・」って。そこが岸本さんの味わい深さ。」

彼女のエッセイを読んでみたくなった。


3は、台湾文学作家とその翻訳家との対談。台湾人が否応なく感じなければならない政治性みたいなものが分かった。

4は、アンネ・フランクの友人との対話。普通だった。

5は、かなり面白かった。レベッカ・ブラウンも小川洋子もお互いの作品に敬意を表しており、二人とも日常生活の中の若干の違和感のようなものにスポットを当てているあたりがとても良かった。

6は、前回読んだときはあまり興味深くなかったのだが、『アンジェリーナ』という佐野元春の曲を元にした短編集を読み、さらに彼の曲はある程度聴いてから読むとそれなりに楽しめた。結構色々なことにこだわって音楽を制作し、生きている人なんだなあと思った。

7は、非常に面白かった。江夏ってもっと偉そうな感じなのかと思っていたけれど、人柄の良さ、温かさ、柔らかさが対談で伝わってきた。そして当然だが、かなりクレバーな人であり、人情を大切にする心の温かい人なの分かった。

8は、江夏との対談の後に読むと面白い。うまい構成をしているなあ、と思う。『博士の愛した数式』を軸に、色々な話をしている。

9は若干異質。乾いた現代社会のなかで自殺が多いことの危惧から始まり、宗教性の乏しさなど、様々な話が展開される。この対談集の中では一番読みごたえがあった。

p.237
五木「自分の命が軽いということは、取りも直さず、まわりの人たちの命も軽く感じられるということなんじゃないかと。」
小川「ええ、だから他人の命を簡単に奪うような犯罪も増えているのですね。そういう犯罪の報道を見ていますと、想像力を働かせる心の潤いが決定的に欠如しているように思われます。いま自分がここでこういうことをしたら、次にどうなって、その次はどうなる―という。」
五木「そう、物語性が完全に失われてしまっている。」
小川「そうなんです。ものごとの表面だけにとらわれて、深いところにある心理にまでたどり着けないんですね。言い換えれば、言葉の届かない、自己の深層世界と対話するだけの精神的しなやかさがないんです。そのとき、目に見えるものだけにしか視点が定まっていない。」

15年以上前の対談なのだろうが、この状況は一層ひどくなっていると思う。物語性や深さといったものが尊重される世の中になって欲しいとこの対談を読み思った。

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