かしわばやしの夜 [文学 日本 宮沢賢治 か行]
清作という(恐らく農夫)が、仕事を終え帰りの準備をしていると、どこからか調子っぱずれの歌声が聞こえてくる。そこには西洋風の格好をした絵かき男が立っていた。清作は彼の前まで行くと、わけのわからない感じで絡まれたので、彼もわけのわからない言葉を大声で発すると、二人は少し打ち解ける。
その絵かきは、柏の木大王から誘われている、と言い、林の中までついてくるよう言う。
柏の木のところまで行くと、柏の木たちは清作をからかうような歌を歌う。それに対して、精作も大きい声で歌い返す。
柏の木大王のところまで行くと
「その人はよしなされ。前科者じゃぞ。前科九十八犯じゃぞ」と言われる。
精作は
「おら正直だぞ」と返すと
「貴さまの悪い斧のあとのついた九十八の足さきがいまでもこの林の中にちゃんと残っているじゃ」と言われる。
そこで精作は
「おれはちゃんと、山主の藤助に酒を二升買ってあるんだ」というと
「そんならおれにはなぜ酒を買わんか」と返される。
結局柏の木たちの歌合戦になり、最後はふくろうも加わり終わる。
わけのわからない楽しげな雰囲気の作品だが、人間が自然を、人間の論理で所有することと、自然の側からの論理をうまく対比させたシリアスな側面も持っている。音楽をつけた舞台にしたらそれなりに楽しい作品になりそうなものがたり。
2022-08-12 05:11
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