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若人よ蘇れ・黒蜥蜴 [文学 日本 Classic]


若人よ蘇れ・黒蜥蜴 他一篇 (岩波文庫)

若人よ蘇れ・黒蜥蜴 他一篇 (岩波文庫)

  • 作者: 三島 由紀夫
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2018/11/17
  • メディア: 文庫



妻は、美輪明宏の大ファンである。一時彼女の出演する「黒蜥蜴」にはまっていたので、去年の誕生日にこの本をプレゼントした。

三島由紀夫は自分にとってお気に入りの作家、というわけではないのだが、何となく気になる作家ではあった。『仮面の告白』『金閣寺』などは読んだが、すごくはまったという感じにもならず、色々読んでみようとも思わなかった。半藤一利の『日本のいちばん長い日』を読み、戦中・戦前の小説に少し興味を惹かれ、三島由紀夫の河出文庫から出ている『英霊の聲』を購入した。せっかく家にあるし、この岩波から出ている戯曲集も読んでみようと思った。

1.若人よ蘇れ
2.黒蜥蜴
3.喜びの琴

1は、終戦真近を描いた作品。病気などにより、特攻隊に取られることなく、海軍航空隊の研究員として働く、エリートの若者を描いたもの。
基本的に部隊が、大学学生寮に限られており、会話を通じて、登場人物たちの内面を描き出していく手法が取られており、終戦間際のエリート学生たちの心の葛藤、戦争=通常、平和=異例という反転した感じを持ってしまう感覚をリアルに描き出しており、嫌戦ムードも流れており、とても面白い戯曲だった。

2は、江戸川乱歩原作の、女性泥棒と明智小五郎の淡い恋を描いた作品。ミステリー自体があまり好きではなく、狂気的なものも好きではないので、この作品がこの本の白眉なのだろうが今一歩だった。

3は、安保闘争の後の、言論統制法を通すかと通さないかという、世間がざわざわしているなかの、公安警察の中を描いた作品。左翼と右翼の対立、スパイ、思想を大切に生きること、人を信じること、などさまざまなテーマが組み込まれた読み応え(見応え?)のある作品。

2はそれなりに舞台化されているようだが、1,3はほぼ舞台化されないらしい。しかしきな臭く戦争が出来る国家に邁進し、自分の気に食わない相手は徹底的につぶそうとするこの世の中において、こうした戯曲が演じられることに、とても意味があるのではないかと思うのだが・・・。

とにかく面白い作品集だった。

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