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ポリティコス [哲学 プラトン]


プラトン全集〈3〉ソピステス・ポリティコス(政治家)

プラトン全集〈3〉ソピステス・ポリティコス(政治家)

  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2005/03/25
  • メディア: 単行本



ようやく『ポリティコス』を読み終わった。
ソフィストを定義付けようとした『ソピステス』に引き続き、エレアからの客人が対話を主導する。今回の対話相手は若いソクラテス。あのソクラテスとは基本的に関係ないらしい。あのソクラテスも初めに登場する。

『ソピステス』同様、初めに「政治家」とは何か、を対話を通して細かく定義付けようとする。この前半部は詳細な分類をするのが面白くはあるが、ストーリーとしてはつまらない。

後半、いよいよ話は盛り上がって行き、政治上の支配形態の話になっていく。
1.単独 支配政体
2.少数者支配形態
3.多数者支配形態
の3つに分類され、これがさらに二つに分けられていく。

1-1 君主支配政体
1-2 僭主独裁政体
2-1 上流者支配政体
2-2 少数者専制政体
3-1 民主政体
3-2 民主政体(ポピュリズムみたいな?)

ある程度法に従い、人民に対して善政を敷く場合と、自分勝手に悪政を行う場合だ。
普通であれば、多数支配形態の善政を敷く「民主制」が一番素晴らしいという結論になるのであろうが、『国歌』同様、プラトンは、頭の良い真に物事を見分けることができる人が支配する、単独支配政体が一番素晴らしいという結論に達する。

さらに言えば、本当の政治家とは、法をある程度は守るが、法にかたくなにこだわるのではなく、時と場合に応じて、最善の選択をし、決断が出来る人だと言う。このへんはかなり賛同してしまう。多くのトップに立つ人間はこれができない。結局法律やルールにこだわり、冒険しようとしない。失敗を恐るからであろう。そう思うと、ディズニーランドを運営するオリエンタルランドは、現場の人々の場合に応じた臨機応変の対応を認めて尊重しているという点で素晴らしい組織なのだろう。

p.314
「種々の政体についても、それらのうちでかくべつに正当であるとともにその名に値すべき唯一の政体とは、その政体のもとにある国家に支配者たちがたんに評判のうえにおいてではなくて真実の意味で知識をそなえている者であること、このことがしかるべき人の眼前に明示されるにいたりうるような政体のことだ。」

p.316
「法律の能力には、限界があるからだ。つまり、すべての人間にとって最善の理想になるとともにもっとも適切でもあるようなこと、これを厳密に網羅したうえで、最善の方策をひとときに全員に命令として与えるということ、このようなことは法律がぜったいに実行しえないところなのだ。
~中略~
 いかなる問題にのぞんでも、単純不変の公式のたぐいをありとあらゆる時においてあらゆる事例に適用されうるものとして確定的に示すことは、総じていかなる技術にも許されていないのだ。

p.317
「だから考えてみれば、法律はどこかの強情で愚鈍な人間にそっくりなのだ。つまり、自分が布告した命令に反することは、なにひとつだれにもおこなうことを許そうとしない人間にそっくりなのだ。」

pp.325~326
「ほんとうはむしろ、統治者が、国民を説得しても説得しなくても、富裕であっても貧乏であっても、成文法に従っていても成文法を無視していても、ともかく有益なことをなしとげさえすれば、まさにこのことがあるいはこの種のことに近いことが、国家の正当な管理というもののなによりも真正な標準をなすべきなのでって、知恵を持った有能な人物がその配下の被支配者にかかわる諸問題を処理するにあたって準拠とされるものは、ひとえにこの標準にほかならないのだ。」

これは「哲人政治」を言っているのであろう。さらに対話を重視したソクラテスープラトンならではの、主張だと思う。

p.339
「およそ多数者というものはけっして技術というものを、その種のいかんにかかわらず、習得することができないのだ。」
これも人間を金銀銅に分けたプラトンらしい主張だ。

p.348
「この民主政体というものは、いまここで問題にされているすべての政体が法律遵法的であるばあいには、それら全部のうちでもっとも劣悪な政体なのだ。ところが、これら全部の政体が法律軽視的であるばあいには、そのうちでは民主政体がもっとも優秀であるのだ。」

つまり、多数者は真なる知恵を獲得できない。だから、法律が守られている場合は、多数者が支配する民主政体が最悪となる。だが、法律が守られていない、つまり道徳的に見てひどい支配者が統治する場合は、なるべく多くの人が支配者になる民主政体が一番良くなる。つまり現在の世の中は、人々が法律をあまり守らないことを前提に最善の政体を選んでいるということになる。

後半、『国歌』を彷彿とさせる議論が展開されかなり面白くなるが、全体的にはやや冗長な印象。
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