誰も知らない時間 [文学 日本 安房直子 た行]
200年も生きるカメ、自分のありあまる時間に飽き飽きし「まったく、やりきれないよ」と嘆いている。そこに「まったく、やりきれないよ」という人間が通る。漁師の良太というものだった。彼は貧乏すぎて時間が足りないという。そこでカメは自分の時間を分けてあげることにする。夜中の12時のあとの1時間、お酒いっぱいと引き換えに、良太は1時間もらう。
はじめの一日は、網の修繕を行い、次の日から夏祭りに向けて太鼓の練習をする。この1時間はどんなに大きな音を出しても周りの人間の時が止まっているので問題ない。こうして毎日太鼓の練習をし、どんどん腕を上げていく。
お祭りの一週間前、周りの時は止まっているはずなのに、一人の少女がたずねてくる。彼女もカメからもらった時間で、病気の母親がいる島の病院まで海を超えて行っていたのだが、約束の時間に戻ってこられず海へと沈んでしまい、カメの夢の中に閉じ込めらてしまう。
良太は、自分が海の底へ沈んで、カメの夢の中に入ってもいいから少女を助けて欲しいとカメに頼む。カメは何とかするといって夏祭りまで待つよう伝える。
いつもの12時がやってきて良太が太鼓を叩き始めると、村中のみんながやってくる。カメが自分の時間をみんなに与えたことがわかる。そして、カメの夢のなかん閉じ込められていたさちこという少女も姿を現す。
カメの元へ行ってみると、カメは死んでいた。
自己犠牲を描いた幻想的な美しい作品。
2023-06-16 08:25
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