小さいやさしい右手 [文学 日本 安房直子 た行]
ある森にまものの子どもが住んでいた。おまじないをして右手をひらくと、ほしいものが何でも手の中に入ってくるというまほうを覚えたばかりだった。
この森の入口に母親とふたりの娘が住んでいた。母親は娘ふたりに「ウサギにたべさせる草を刈っておいで。でも草が、かごいっぱいになるまでは、かえってきちゃいけないよ。」といって毎日森に出していた。上のむすめには白パンとよく切れる鎌を、下のむすめには黒パンとさびた鎌を。なぜなら妹は継子だったから。
二人の娘は毎朝そろって出かけるが、鎌がさびている妹はいつも遅くなってから帰ることに・・・。
これを見かねたまもののこどもは、妹むすめにお菓子をあげて、素晴らしい鎌を毎日貸してあげることに。
こうして毎日早く帰れるようになり機嫌よく過ごしていた妹むすめの様子を怪訝に思った母親が姉むすめに聞くと、まものが彼女を助けていることを知る。次の日母親は出かけて言って、むすめに似た声でまものの手を出させ、その右手を切り落としてしまう。
妹むすめに切られてしまったと思い込んだまものは復讐を近い20年間過ごす。
ようやく復讐しに森を抜けていったところ、成長してしまった妹むすめは見つけられない。疲れきっていたところ、お菓子の良い匂い。その匂いに誘われて入っていった家で、まものの子どもはおいしいお菓子をもらう。しかしくれた女性は、妹むすめ。彼女から真実を聞かされどうしようもない気持ちになるが、「ゆるす」ということを知る。涙を流し、ゆるす、ということを知ったまものは、人間にその姿を見られてしまったこともあり、一人前のまものになれない。
何年かたち、森からひとりの白い若者が出てくる・・・。
昔話をアレンジし、非常に感動的なストーリーに仕立て上げた作品。残酷さの中に、優しさが散りばめられている。
2023-07-21 12:44
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