死の国からのバトン [文学 日本 松谷みよ子 直樹とゆう子]
直樹とゆう子シリーズの第二巻。
今回は、直樹が主役。
お父さんの実家である日本海側にある阿陀野(あだの)へ、母とゆう子と遊びに行った直樹。
一面雪景色の中で、かつてそこに住んでいて今は死んでいる自分の先祖直七と会い、自分の先祖たちやその土地で生きていた人と交流する。
いっぽう現実の世界では、ネコがくるって暴れまわった末死んでしまったり、防腐剤を使用した豆腐を食べ過ぎて死んでしまった人が出たり、工場の垂れ流すものを餌にしていた魚を食べて死んでしまった人々などが続出する。
その二つの世界を行ったり来たりしながら様々なことを考える直樹。
松谷みよ子らしい、民話風の話もたくさん織り込まれるとともに、社会に対する批判もしっかりと組み込まれている。しかし、物語が若干入り組んでおり、筋を追いにくい。
死んだお父さんが、直樹に伝えた言葉が美しい。
p.328
「お父さんもお母さんも、二度と戦争をくりかえすまいということでは、同じ気持ちだった。そのためには、理不尽なものへしっかりと目を向けてたたかうことだと、そこでもおなじだった。そして、さまざまの運動にもくわわり、営々とはたらきつづけてきたつもりだった。」
p.329
「直樹、さあ、おまえにバトンタッチしたよ。しっかり走ってくれよ。お父さんができなかったことをしてくれよな。」
理不尽なことに対して声を上げ続けることの大切さをうったえかけるこの本。難しくはあるが、ぜひ多くの若い人に読んでもらいたい。
2023-08-05 11:48
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