天窓のある家 [文学 日本 安房直子 た行]
友人の別荘の山小屋風の建物に泊まったある男性の話。
その家には天窓がついていて、その天窓からは、多いなこぶしの木の枝がよく見える。
彼は悲しいことが重なり神経がまいっていて、それを見かねた友人がこの別荘を貸してくれた。
ぼんやり天窓から外を眺めていたところ、こぶしの木についていた花の影が布団の上で揺れた。その影を何とはなしに触ってみると、何と影が銀色に変化してしまう。さらにそれをつまみあげるとその花の影がつまめてしまった。あまりの驚きに「うわあ、お母さん、すごいよ。」と叫んでしまう。彼は3ヶ月ほど前に母を亡くしていた。
その後彼に不思議な声が聞こえるようになる。「かえして、かえして、影をかえして」という。見上げるとこぶしの木が天窓から見え、こぶしの木に「ねえ」と呼びかけてみる。すると、こぶしの木が言葉を話して答えてくれた。そして自分の影をかえしてくれ、と頼まれる。返すことを約束し会話は終わる。
しかし実際返すとなるともったいない気がしてしまい、結局それを持ったまま別荘から逃げ帰る。途中「かえして、かえして、影をかえして」という声にひたすら追われながら。
自分の家に戻り少し元気を取り戻し、お守りに花の影を首に下げてからはみるみる回復し仕事も順調に進み、結婚までし、子供にも恵まれ自分の家も持つ。
そんなある日、山小屋の持ち主に会い、こぶしの木が病気になってしまって、あの小屋を取り壊すことを耳にする。
こぶしの木が自分に生気を与えてくれてたことを知り、彼は申し訳ない気持ちでいっぱいになる・・・。
昔話的な、自然が人間に与えてくれる力を優しく物語で描いた作品。
2023-08-26 12:03
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