ピエタ [文学 日本 Modern]
国語の先生と夏休み中、話をしていたとき、この本が話題になった。
彼が夏期講習で扱ったテキストの中に、この本の抜粋が出てきたらしく、そんな短い文章でもかなり良かったので読んでみようと思う、と言っていた。
「赤毛の司祭」ヴィヴァルディの話らしく、「じゃあ、私も図書館で借りてみようかな」と言うと、「家の周りにある図書館はどこも40~100の予約待ちだ」ということだった。自分の家のそばの図書館で調べたところ、1件の予約しか入っていなかったのですぐに廻ってきた。
ヴィヴァルディが働いていたピエタ孤児院を舞台とした作品で、そこに捨てられそこで音楽を習ったものの、そこまでの才能がなかったために、途中から音楽家ではなく事務員としてピエタで働くことになった主人公のエミーリア、ヴァイオリンの才能がありヴィヴァルディからも認められ現在の合奏・合唱副長を務めるアンナ・マリーア、孤児院の娘ではないのだが、彼女たちと小さい頃一緒に音楽をやっていたヴェロニカ、音楽の才能はなかったが、薬の知識を身に付け薬屋と結婚して店を大きくしたジーナ、ヴィヴァルディが生前心を通わせていたコルティジャーナ(高級娼婦)のクラウディア、様々な女性が登場するが、皆どこかに心の痛みを抱えながら、誠実に生きる女性たちばかりで、読んでいて気持ちが良い。
何度かホロリとする場面もあり、明るい結末ではないのだが、ほのかに希望が持てるもので読後感はすこぶる良い。上質なフランス文学を読んでいるようで本当に素晴らしかった。どこかしらフィリップ・クローデルに、静謐な感じが似ている気がした。
2023-09-21 10:05
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