青空と逃げる [文学 日本 辻村深月]
図書館にCDを返しに行ったら偶然見つけた作品。2018年発表ということでそれなりに最近の作品。
夫のせいで、ある組織から逃げなければならなくなった、妻の早苗と息子の力(ちから)の物語。様々な地域に逃げ、そこでの様々な人々との出会いを通して人間的に成長していく二人を描いた作品。
早苗視点、力視点が順々に出てくるので、物語が重層的に語られていくのも面白い。何より、どの地方に行っても人々が暖かく彼らを援助していく様子が、読んでいてとても心地よい。
『島はぼくらと」に登場したヨシノも出てきて面白い。彼女との絡みの中で出てくる描写で印象的な一節を。
p.384
「ヨシノに何かを言いたいと思ったけれど、何を言えばいいかわからなかった。被災して今も仮設住宅で暮らしている人がいる、ということを、頭では知っていても、実感したのは初めてだ。何を話しても軽はずみな言葉になってしまいそうに思えて、言葉が何も出てこない。ーそうやって反応できないこともなんだか悔しく、誰にともなく申し訳ないような気持ちがする。」
わたしもしょっちゅう上記のような感情を色々な人との関わり、会話の中で感じてきた。辻村深月というひとは本当に人の心に敏感なんだな、と感じさせる一節だった。
暖かくて良著だった。
2024-03-03 17:04
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