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Red [文学 日本 島本理生]


Red (中公文庫)

Red (中公文庫)

  • 作者: 島本理生
  • 出版社/メーカー: 中央公論新社
  • 発売日: 2017/10/27
  • メディア: Kindle版



正直あまり興味のある作家ではなかったのだが、最近読んだ辻村深月の本の解説で言及されていたので、とりあえず読んでみた。

色々な紹介文などで、「著者初の官能小説」などとよく書かれている。小川洋子の『ホテル・アイリス』などもそうした紹介がされるのだが、ただ単に性交の描写が若干生々しいというだけで、それはものがたりの一部に過ぎない。これらが官能小説なら、村上春樹の小説はほぼ全て官能小説だろう。こうした性的描写も、女性作家が書いていることが自分のあたまにあるからなのか、女性作家が書いているからなのかわからないが、村上春樹などにありがちな、嫌な感じのいやらしさは全くない。

ストーリーは、傍目から見ると幸せで安定した生活をしている子持ちで主婦の女性が、過去の様々なトラウマ(?)、自分では気がつかなかった小さい頃から我慢してきたものが、日々のちょっとした不満と過去の男性との偶然の出会い、不倫などをきっかけに、徐々に自覚されるようになっていき、自分の人生を省みながら未来の自分を考えていく、というもの。

正直純粋で純真そうな女性が、男達に惹かれ不倫していく様が、読んでいてかなりきつく、フランスの自然主義文学を読んでいるようだった。

読んでいる途中はかなり苦しく嫌な感じだったが、エピローグが少し平和な感じでよかった。

あまり人にオススメしたい作品ではないが、映画にもなっているようだし、興味のある人は読んで損はない作品だと思う。

ちなみに本筋とは全く関係ないが心に残った一節。

p.231
「そもそも企業利益の差を生むのは、発想力とは無関係の、地味でつまらない仕事まで丁寧にやるかどうかだから。前の会社のときは近所のゴミ拾いからトイレ掃除まで俺が率先してやってたし」

本当にそうだと思う。これは教育にも言える。なんか新しくて楽しそうでクリエイティブっぽく見えることは長期的に見れば対して身にならない。むかしから行われている一見地味でつまらないものがのちのち大きな花を咲かせるのだ。
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