シッダールタ [文学 ドイツ]
以前、『車輪の下』と同時に買っていたヘッセの『シッダールタ』を読み終えた。この本は、仏教の始祖仏陀の生涯を描いた作品なのかな、と思っていた。実際、読み始めて数十ページはそう思っていた。しかし、主人公のシッダールタとは別にゴータマ(仏陀)が出てきたので、シッダールタという名前を用いているだけで、仏教の始祖の仏陀とは関係ないことがわかった。
シッダールタはバラモンの子として生まれ、幼い頃から精神的にも優れており、友人のゴーヴィンダとともに仏陀の弟子になりそうになる。が、言葉では伝えきれないものこそが真理であるはず、という思いの元、仏陀の弟子にはならず、自分の力で心理を見出そうとする。
そんな折、遊女のカマーラと出会い、淫蕩・放蕩生活に陥り、金に溺れるようになる。
しかし、そんな自分に耐え切れなくなり、再び放浪生活に出る。
そして、かつて自分を運んでくれた渡し守のヴァズデーヴァに今までの話を打ち明けるうちに心が救われ、彼とともに生活するようになる。川から様々なことを教わるうちに、彼は真理を見出すことになる。
放蕩生活をしたことが彼を真理に近づけたというのが非常に面白いところだ。
これはキリスト教と仏教を融合させた、ヘッセなりの到達点なのだろうと思う。
知識は伝えられるが、知恵は言葉では伝えられない。まったくそのとおりだと思う。
短いが内容は濃く、様々なことを考えさせられる作品だ。
2016-07-21 10:29
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