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密やかな結晶 [文学 日本 小川洋子]


密やかな結晶 (講談社文庫)

密やかな結晶 (講談社文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 1999/08/15
  • メディア: Kindle版



小川洋子作『密やかな結晶』を読み終わった。物語の最初から、「消え去ったもの」「消滅」といった言葉が出てきて、「何?」という思いをまず抱く。しかし、母親と娘が、古いたんすの引き出しから様々な小物を引っ張り出し、それにまつわる話をする。『銀の匙』と同じような平和な感覚がここでやってくる。この不安と平安の絶妙なバランスを保ったまま物語は進んでいく。

ナチス時代を意識しだであろう様々な息苦しくなるような設定は本当に素晴らしい。
昔から、「肉体と精神」というものは、文学や哲学のテーマとして扱われてきた。この物語もある意味、肉体と精神がテーマであるといえる。こういう結論で終わるか、という最後を迎える。結局人を支配しようとしても、精神は支配しきれない。そして支配しようとしたものが最終的には支配されてしまうのだ、ということなのだろうか。

思想性、物語性、叙情性、芸術性、全てが揃った傑作だと思う。『アンネの日記』と合わせて読んでもらいたい。
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