新生 [文学 イタリア]
ダンテの『新生』を読み終わった。
そもそもは、『神曲』を読みたいと思ってどの出版社のがいいのか色々探していたところ、この本に出会い、『神曲』を知るためには重要な本と、色々な場所で目にしたので買ってみた。
とにかく素晴らしい本だった。解説にもあるように、自分の恋を物語、その時その時で出来た詩をその物語に付すという、『伊勢物語』に近い作品となっている。
基本は理想の女性ベアトリーチェへの片思いを綴った物語なのだが、まったくべたべたしておらず、基本的には、終始自分の心の中での対話を文字化しているだけなので、他人に対する批判めいたところなどもなく、非常に美しい作品となっている。
とはいえ、会話文もあまりなく、二人の関係を客観的に描写する文章などもないので、作者が書いていることから状況をイメージするしかなく、一連の物語としてよどみなく読んでいけるかというとそういう作品ではない。ある意味、ヴァージニア・ウルフなどの作品に近く、「意識の流れ」小説的な面もある気がする。
何にせよ、無駄な性描写などもなく、常にプラトニックな恋愛を描き、美しい詩がふんだんにちりばめられたこの作品。非常に日本の古典作品にも通じるところがあり、もっとこの日本で受容されてもよいのではないか、と思ってしまった。
2018-12-07 07:21
nice!(0)
コメント(0)
コメント 0