マリア・ストゥアルト [文学 ドイツ]
今年は、オペラの原作本を多く読んでいる。
ドニゼッティが、この『マリア・ストゥアルト』を原作としてオペラを作曲している。非常に美しいメロディ満載でいつかはこの本を読みたいと思っていた。
待てど暮らせど岩波は復刊してくれない。ということで、Amazon中古市場で購入。
元フランス王妃であり、スコットランド王であり、いまはイギリスの地で囚われの身になっているマリア・ストゥアルトと、現イギリス王、マリアを囚われの身としたエリーザベトの対決を描いている。マリアが死刑になるまでのたった3日間のドラマなのだが、非常に、二人の心理が細かく描かれており、純粋に女性を愛する男達・政治的に女性を用いようとする男達・自分の利害を第一に考える男達・使命に忠実な男達、さまざまな人物が登場し、彼らの一つ一つの行動が、エリーザベトの心の揺れ・意思決定に大きく影響していく様が非常に面白い。
とにかく自分の思いのままに生きるある意味ロマン主義的なマリアに対して、常に政治的な利害関係を意識して行動する官僚的なエリーザベトの対比が面白い。結局死んでしまうマリアの周りには最終的に多くの人間が集まるのに、これから権力を握って高みに上っていくはずのエリーザベトのもとには最終的には誰も残らない、というのも非常に面白い。
『ドン・カルロス』とは違った意味で、とても面白い。
有名な『群盗』『ヴィルヘルム・テル』よりもはるかにこの二つの方が面白いし、構成等もしっかりしており優れているように思われる。何故、この『ドン・カルロス』『マリア・ストゥアルト』がシラーの代表作としてもっと市場に出回り、人々の間で読まれていかないのか謎だ。
2019-08-22 07:07
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