緑のハインリヒ(一) [文学 ドイツ]
昨年ケラーの『村のロメオとユリア』を読み、とても面白かった。
ちょうど読み終わった頃に近くで古本市をやっており、4巻セットでこの本が売っていて、品切れ重版未定作品だったので、これは購入するしかないと思い買っておいた。
これはケラーの自伝的作品らしい。私はあまり自伝的作品という類の小説があまり好きではない。なぜだかはわからないのだが、イマイチ入り込めないのだ。
実際読んでみてやはり面白くない・・・。
中勘助の『銀の匙』に非常に似た感じで、幼年時代から自分の身の回りで起きた出来事を事細かに描いてくれるのだが、これがつまらない。国語のテキストとして、そうした様々なことを細かく調べ、昔の情景などをイメージしながらゆっくり読み進めるというのであれば良いのかもしれないのだが、正直ストーリー重視の私には興ざめなのだ。結局自伝的作品は、ある程度自分のことを描いていけば良いので、様々な人物設定も杜撰になるのであろう。全くこの主人公の人となりが掴めない。
あと、三巻。これから恋愛模様も描かれるっぽいので少し面白くなるのかもしれないが・・・。
最後に、主人公がある事件の首謀者とされ、学校を退学となってしまう場面で主人公が考えたことが少し興味深かったので、紹介して終わりたい。
p.177
「死刑が正しいか否かについて絶えず深刻な論争が繰り返されるものならば、凶暴でない限りひとりの少年あるいは青年を、国家がその教育機関から締め出すことの可否も、また当然同時に論ぜられるべき筋合いのものであろう。」
この時代(1880年頃)から死刑の是非が深刻に論じられていたというのも面白かったし、公の教育機関において問題のある子供を、他の子供との関係上、どのように扱うべきなのか、というのも確かに真剣に考えられるべき問題である。
この部分だけは唯一面白かった。
2020-03-13 05:59
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