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ふしぎ古書店② おかしな友達募集中 [文学 日本 にかいどう青]


ふしぎ古書店2 おかしな友だち募集中 (講談社青い鳥文庫)

ふしぎ古書店2 おかしな友だち募集中 (講談社青い鳥文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2016/06/09
  • メディア: 文庫



今回もとてもいい話がそろっていた。テーマは「想いを伝える」ということなのだろう。
ある女の子が、公園で傷ついた猫に偶然出会い、手当をしてあげる。そしてその猫に自分の話を毎日聞いてもらう。そのことがずっと忘れられずその感謝の気持ちを伝えたい女性の話。
そして死神に恋してしまった貧乏神の話。そして主人公東堂ひびきの自分では触れないようにしていた心の傷、心の痛みに向き合う話。
どれもこれもが非常に繊細な話なのだが、登場人物たちのコミカルな設定によるシリアスさを全く感じない。しかしところどころで涙を誘い、こころを前向きにさせてくれる。とても不思議で温かい作品だ。

主人公東堂ひびきが、買い物中に、前の学校で一緒だった女の子たち4人組に出会う。彼女は昔いじめられていた。その場でも少しいじられ心が傷つく。そして次の日熱を出してしまう。いろいろな人と対話をすることにより、自分がいろいろな人から愛されていることに気が付き、心が前に向かう。その時に彼女の心の描写、セリフがとても良い。

p218
いままでのわたしなら、あの子たちになにを言われても、痛くもかゆくもなかった。
それは、ダイヤモンドの心を持っていたからじゃなくて、きっと、わたしが世界に参加していなかったからだ。
だから、あのころのわたしは、楽しいことも、いまより知らなかった。
いまのわたしは、あの子たちの言葉に、かんたんに傷つくようになってしまった。
だけど、~中略~みんながわたしを好きでいてくれて、すごくうれしいと思う。
じぶんのことも、前より好きになれそうな気がする。

愛されていることがわかることで、逆に心が痛みやすくなる。しかしその心の痛みを感じられるからこそ、自分にも他人にも優しくできるし、自分も、他人も愛することが出来る。
すごく難しい心の問題を、うまく物語化して嫌みのない形で提示するこの本。

にかいどう青という著者。どんなひとだかわからないが、いろいろな人生経験を積んできた人なんだろうなあと思う。

とてもとても良い本だった。
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