ふしぎ古書店③ さらわれた天使 [文学 日本 にかいどう青]
今回も非常に良い話だった。いろいろな人の、時間がたっても自分の中で昇華しきれない問題を、主人公東堂ひびきが優しい心で解決していく。とにかく、この物語の素晴らしいと所は、何でもない普通の女の子、というよりいじめられた経験があり自分に自信がない女の子が、様々な問題を解決していくというところだ。しかも、福の神の弟子とはいえ、彼女自身にはほぼ何の力もない。周りの人の助けを若干借りているとはいえ、基本的には彼女の優しい心と行動力で問題を解決していくのだ。
そして常に最後は主人公の心の問題を扱い、彼女が成長したことを実感させてくれる。本当に良い話だ。今回も電車内で読んでいて思わず泣きそうになってしまった。
今回の一押しフレーズ。福の神レイジさんが、東堂ひびきにあてた手紙より
p.238
『ひとには、見たくないものを見ないようにする機能があります。それが心を守ってくれることもあります。だから、なくてもよい機能だとは思いません。でも、いまのひびきさんは、見たくないものにも、少しずつ対処ができるようになりましたね。なにも感じないように、考えないようにしていた、これまでのひびきさんとはちがいます。どうか、いっぱい笑い、ときには泣いてください。そういう気持ちを手ばなさないように。』
すごく、すごく良い言葉だと思うのだ。
人間誰しも誰かと軋轢を生じさせたくない。特に心が敏感な人は、相手の感情を痛いほど感じ取ってしまうので、さらに距離を置くことを望む。しかし、やはりそれだけでは、本当に意味で楽しく生きるということにはつながらない。様々な感情を表に出すことによって人間は成長できるし、社会の中に入っていける。
本当にこういった常に様々なものに意識が向きすぎてしまって、息苦しさを感じている人にスポットを当てた小説は大好きだ。
こういった人の内面というのは、自分自身がそういった人間でないと決して描くことは出来ない。
何度も書くが本当に素晴らしい著者だと思う。
2020-03-19 07:20
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