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ふしぎ古書店⑤ 青い鳥が逃げ出した [文学 日本 にかいどう青]


ふしぎ古書店5 青い鳥が逃げだした! (講談社青い鳥文庫)

ふしぎ古書店5 青い鳥が逃げだした! (講談社青い鳥文庫)

  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2017/05/12
  • メディア: 文庫



主人公、東堂ひびきが自分の内面としっかり向き合えるようになった後の第4巻はそこまで面白いものではなく、単なるミステリーっぽくなってしまっており、ちょっと残念な感じで、このまま最後までいってしまうのかな、と思っていたのだが、この第5巻は再び面白さを少し取り戻した。

メーテルリンクの『青い鳥』をテーマにした第一話も一般的に言われている『青い鳥』の解釈を一歩深めた感じで、とてもよかったし、第二話も「いじめ」をテーマにしたもので、こちらも重いテーマなのだが、いじめられている子が、爽やかな正義感に満ちた子で、とても前向きな感じのストーリーになっているとともに、いつもどおりとても温かさに満ちておりすごく読後感が良かった。

とにかく、すべての登場人物が、前向きで正義感に溢れ、曲がったことに対し積極的に関わっていき、そして少しでも物事を良くしようと努力しようとしており、すごく読む人々に、強く生きる勇気を与えてくれる作品だ。しかし強く生きることを上から無理やり押し付ける感じでもなく、逃げてもいいし、失敗しても良い。悩んでもいいし、泣いてもいい。そういうことを積み重ねることで人間というものは成長していくのだということを、暖かい登場人物たちを通して教えてくれる。何度も書くが、本当に素晴らしい作品だとおもう。

最後にいつものように心に残った一節を。

いじめられている子を助けようとしたために、いじめられことになってしまった男の子に対して主人公藤堂ひびきが発した一言。

p181
「ひとりでいることを知らない子って、やっぱり流されやすいんだよね。空気ばかり読んでいると、じぶんの気持ちがわからなくなっちゃう。・・・って、こんな言い方すると、えらそうだけど。じっさいのわたしは、えらくもなんともないし。」
中略
「わたしが言いたいことは、広瀬くんが集団のなかで、きちんと自分の意見を言えたことは、すごいってこと。そして広瀬くんのしんせつは、ちゃんと味方をつくっているということ。」

一人で考える時間を持てない人間は、本当に意味で人に優しくできないと思う。自分と真剣に向き合うことが出来る人間こそが、本当の意味で他者と向き合うことができるのだ。

第六巻も楽しみだ。
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